飛沫と飛沫核の違いとは?粒子の大きさの区分とエアロゾルとの関係
呼吸器系のウイルスの主要な感染経路としては、飛沫感染と空気感染という二つの感染形態が挙げられることになりますが、
このうち、後者の空気感染と呼ばれる感染形態は、疫学用語としては別名では飛沫核感染とも呼ばれることになります。
それでは、こうした飛沫と飛沫核と呼ばれるウイルスなどの病原体を含む感染物質の形態のあり方には具体的にはどのような特徴の違いがあると考えられることになるのでしょうか?
飛沫と飛沫核の具体的な定義と粒子の大きさと飛距離の違い
そうすると、まず、
こうした飛沫と飛沫核の違いについて、一言でまとめると、
飛沫(ひまつ)とは、咳やくしゃみによって飛び散る直径5マイクロメートル以上の大きさを保った状態にある水分を含んだ体液の粒子のことを意味する言葉として、
飛沫核(ひまつかく)とは、飛沫から水分が蒸発して直径5マイクロメートル以下の大きさになった乾燥した軽い微粒子のことを意味する言葉として、
それぞれ定義されることになると考えられることになります。
そして、
水分を含んだ比較的重くて大きい粒子である飛沫は、あまり遠くまで移動していくことはできず、大部分の飛沫は2メートルほどの距離くらいまでしか飛ばずにすぐに地面に落ちてしまうのに対して、
乾燥した軽い微粒子にあたる飛沫核は、長時間にわたって空気中を浮遊することによって、風に乗ってかなり遠くまで飛んでいくケースがあることが分かっていて、
場合によっては数100メートルから数キロメートルにもおよぶ長距離を移動していくこともあると考えられることになるのです。
飛沫核とエアロゾルとの関係
ちなみに、物理学の分野においては、
空気中に分散して浮遊している微粒子のことを指してエアロゾルという言葉が用いられることになりますが、
こうしたエアロゾルと呼ばれる空気中に浮遊する微粒子たちは、それぞれの微粒子に含まれる水分などの液体成分の含有量の違いに応じて、
乾燥エアロゾルと湿性エアロゾルと呼ばれる二つのエアロゾルの種類のいずれかへと区分されることになります。
そして、こうした物理学的な意味においては
飛沫から水分が蒸発して直径5マイクロメートル以下の大きさになった乾燥した軽い微粒子にあたる飛沫核は、
物理学において水分を含まない状態にある固体の微粒子が空気中を浮遊している状態のことを意味する乾燥エアロゾルの一種として分類されることになると考えられることになります。
そして、それに対して、
直径5マイクロメートル以上の大きさの水分を含んだ比較的重い粒子である飛沫は、空気中に浮遊することはできずにすぐに地面へと落ちていってしまうことになるため、通常の場合はエアロゾルには分類されることはないと考えられ、
飛沫感染によって感染を広げていく感染症においては、咳やくしゃみによって飛び散った飛沫は、粒子が大きいものはすぐに地面に落ちてしまうのに対して、
粒子が小さいものについては、通常の場合は、すぐに水分が蒸発してしまうことによって乾燥エアロゾル、すなわち、飛沫核の状態となって感染性を失うことになると考えられることになるのです。
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次回記事:エアロゾル感染の物理学に基づく具体的な定義と飛沫感染や飛沫核感染との違い
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