イタリアよりも感染者が少ない韓国にだけ日本が入国禁止措置をとる理由:二つの統計データに基づく合理的な説明
日本が韓国に対して行った新型コロナウイルスの感染拡大防止のための入国禁止措置について、
日本が入国禁止措置をとることを決定した3月5日の時点において韓国の感染者数は6284人であり、現在の3月11日の時点におけるイタリアの感染者数の12462人と比べてもかなり少ないにも関わらず、
日本がイタリアよりも感染者が少ない韓国に対してだけ入国禁止措置をとっていて、それ以上に感染者が多いイタリアに対して同様の措置をとらないことは不当な政治判断であるとする批判が国の内外において広く唱えられている。
しかし、
このように日本がイタリアよりも感染者が少ない韓国にだけ入国禁止措置をとっている理由については、以下で挙げるような二つの統計データから合理的に説明することができる。
韓国とイタリアからの日本国内への入国者数の差
まず、単純な話としては、
日本から遠く離れたヨーロッパの国であるイタリアと、日本の隣国である韓国とでは、当然ながら日本国内への来訪者の数に非常に大きな差がある。
ちょうど1年前の2019年の3月における日本国内への外国人の入国者数については、韓国が612,401人であるのに対して、イタリアは15,143人となっている。
(出典:法務省:出入国管理統計統計表:
http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_nyukan.html)
つまり、
日本国内への韓国からの入国者数は、イタリアからの入国者数と比べて40倍以上も多いと考えられるということである。(より正確には約40.44倍)
韓国とイタリアの人口の差に基づく1人当たりの感染率の違い
また、もう一つ考慮すべき点としては、
韓国とイタリアの両国における人口の違いという点も挙げられる。
2019年の時点における韓国の人口は51,225,320人であるのに対して、イタリアの人口は60,550,092人となっている。
つまり、
イタリアの人口は韓国の人口よりも1.18倍多いため、入国者1人当たりの感染率という観点においては、例えば、それぞれの国で同じ数の感染者が発生している場合、
韓国からの入国者における感染率の方をイタリアよりも1.18倍高く計算しなければならないということである。
ちなみに、
2019年の時点における日本の人口は126,860,299人となっているので、日本と韓国とを比べた場合には、
日本人の感染者数が韓国人の感染者数の約2.48倍に達した時点において、両国における国民1人当たりの感染率が同じになったと見なすことができる。
だから、今後の新型コロナウイルスの感染拡大の状況の推移において、感染者数という点において日本が韓国を上回る事態になったとしても、
その時点において、日本国内において韓国よりも深刻な感染拡大が進展していると早合点してはいけない。
あくまでも、日本国内の感染者数が韓国内の感染者数の2.48倍にまで達することがない限り、両国におけるウイルスの蔓延の度合いが同程度となることはないのである。
韓国の6000人の感染者はイタリアの30万人の感染者と等しい
それでは、具体的に、
イタリア国内においてどのくらいの感染者が発生した場合に、日本が入国禁止措置を課した当時の韓国と同程度の日本国内における感染拡大へのリスクが生じることになるのか?というと、
韓国とイタリアからの日本国内への入国者数の差と、人口の差に基づく1人当たりの感染率という上述した二つの統計データに基づいて具体的に計算していくと、
6284人×40.44×1.18=299867.4528
≒30万人
となり、
イタリア国内における感染者数が30万人を超えた時点においてはじめて、
日本が入国禁止措置を課した当時の韓国国内における6284人の感染者数と同程度の感染拡大のリスクが日本の側に生じるということになる。
つまり、逆に言えば、
韓国国内において急激な感染拡大が起こった当時のおよそ6000人という感染者数は、日本にとっては、イタリアにおける30万人の感染者に匹敵するほどの大きな脅威となる数字であったということである。
そして、そういった意味では、
日本にとってイタリアの感染拡大のリスクが当時の韓国と同程度のリスクにまで高まるのは、イタリア国内における感染者数が30万人を超えた時点であり、
現時点におけるイタリアの12462人という1万人を少し超えたばかりの感染者数は、日本国内における感染拡大のリスクとしては、まだ少し余裕のある数値とみなすことができるとも考えられるのである。
・・・
ただし、その一方で、
この1週間における韓国における新規感染者数の推移は、
3月5日:518人
3月6日:309人
3月7日:448人
3月8日:272人
3月9日:165人
3月10日:277人
3月11日:114人
となっていて減少傾向が見られるのに対して、
イタリアにおける新規感染者数の推移は、
3月5日:769人
3月6日:778人
3月7日:1247人
3月8日:1492人
3月9日:1797人
3月10日:977人
3月11日:2313人
となっていて引き続き増加傾向にあるうえに、
近隣のヨーロッパ諸国においても、感染者数の総計は、
フランスの2281人を筆頭に、スペインの2277人、ドイツの1966人というように、各国とも軒並み2000人を超える規模にまで増加してきているので、
(ちなみに、3月11日現在の日本国内におけるクルーズ船を除く新型コロナウイルスの感染者数は639人)
そういった意味では、
イタリアだけではなく、フランスやスペインやドイツなども含めたEU加盟国にあたるヨーロッパ全域に対して全面的な入国禁止に近い渡航制限措置を講じることが必要なタイミングが次第に迫りつつあるとも考えられる。
・・・
次回記事:2020年と2009年のWHOのパンデミック宣言の声明文の内容の比較:安全保障と防疫対策における拙速と巧遅
前回記事:致死率が高く感染力も強いウイルスほどその力の強大さゆえに地球上から早く消え去ってしまう理由とは?
「時事考察」のカテゴリーへ
「新型コロナウイルス」のカテゴリーへ