アテナイへと向かうテーセウスの船旅と酒の神ディオニュソスの妻となったアリアドネ、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語⑦
前回書いたように、アテナイの人々を守るために、自ら進んでミノタウロスへの生贄の一人としてクレタ島へと向かう船に乗り込んだ英雄テーセウスは、
そうしたテーセウスの尊厳ある勇敢な姿に心を打たれたクレタの王女であったアリアドネから糸玉を渡されることになり、
その後、クレタの迷宮の最深部においてミノタウロスを倒したテーセウスは、アリアドネの糸をたどって迷宮の出口にまでたどり着くことによって、脱出不可能と言われていたクレタの迷宮からの脱出を果たすことになります。
クレタ島からアテナイへと向かうテーセウスとアリアドネの船旅
そして、
こうしてクレタの王女アリアドネの助けを借りることによってクレタの迷宮を脱出することに成功したテーセウスは、
彼のことを助けてくれた恩人であり、今や彼の最愛の恋人ともなったアリアドネを連れて、ミノタウロスへの生贄として連れて来られたアテナイの子供たちと共に、
のちにテーセウスの船と呼ばれることになる30本の櫂を持つ船に乗ってアテナイへの帰還を目指す船旅へと赴いていくことになります。
そして、その後、
迷宮から脱出されてしまったばかりか、自分の最愛の娘であったアリアドネまで奪われてしまったことに気づいて怒り狂うクレタのミノス王は、
娘を連れ去ったテーセウスのことを捕まえて、アリアドネをクレタへと連れ戻すため、彼らが乗る船を探しに次々に追っ手を繰り出していくことになるのですが、
こうしたミノス王の追っ手をかわしながらアテナイへと帰還する船旅の途上で、テーセウスの船は、クレタの北に位置するエーゲ海の島であったナクソス島へと立ち寄ることになるのです。
ナクソス島で捕らえられて酒の神ディオニュソスの妻となるアリアドネ
こうして、
ミノタウロスへの生贄として連れて来られていたアテナイの子供たちと共に、ナクソス島へとたどり着くことになったテーセウスとアリアドネは、この島でしばらく休息をとることにするのですが、
ミノス王の放った追っ手から逃れるために島の中を移動している間に、テーセウスは、自分の最愛の恋人であったアリアドネの手を放してしまい、彼女のことを見失ってしまうことになります。
ナクソス島は、もともと、祝祭と酒の神であったディオニュソスに捧げられた島でもあったのですが、
こうした二人の様子を島の物陰から覗いていた島の守護者であったディオニュソスは、テーセウスがアリアドネのもとから離れた隙を突いて、アリアドネのことを捕まえると、
そのまま彼女のことを自分の妻とするために、ナクソス島からさらに遠くエーゲ海を北へと進んだトロイアの対岸に位置するレムノス島へと連れ去ってしまうことになります。
そして、その後、
神の妻となったアリアドネのもとには、ディオニュソスとの間に、のちにレムノス島の王となるトアースを筆頭に、スタピュオス、オイノピオーン、ペパレートスという四人の子供たちが生まれていくことになるのですが、
こうした出来事を知ることさえできずに、ナクソスの地に一人残されることになったテーセウスは、
自分の妻となるはずの最愛の女性であったアリアドネのことを見つけ出すことができないまま、失意のうちに、アテナイへと向けて帰還する船を出港させることになるのです。
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次回記事:アテナイの伝説上の建国の祖となった英雄テーセウスと四王国の統一、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語⑧
前回記事:クレタの迷宮からのテーセウスの脱出とアリアドネの糸、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語⑥
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