アテナイの伝説上の建国の祖となった英雄テーセウスと四王国の統一、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語⑧

前回書いたように、牛頭人身の怪物であったミノタウロスを倒してクレタの迷宮を脱出したのち、最愛の恋人となったアリアドネを連れてアテナイへの帰還を目指す船旅へと赴いていくことになったテーセウスは、

その船旅の途上で立ち寄ることになったナクソス島において、酒の神であったディオニュソスによって彼女のことを連れ去られてしまうことになり、

こうしてアリアドネと別れることになってしまったテーセウスは、そのまま失意のうちに、アテナイへと向けて船を出港させることになります。

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テーセウスの帰還とアテナイの王アイゲウスの死

そして、その後、テーセウスは、

ミノタウロスへの生贄としてクレタ島へ送られていたアテナイの子供たちと共に、無事に、彼にとっての父祖の地にあたるアテナイへと帰還することになるのですが、

最愛の恋人であったアリアドネを失ってしまったことに心を打ちひしがれて深い悲しみに暮れていたテーセウスは、

アテナイの港に到着する時に、彼の父であったアイゲウス王との約束であった白い帆を掲げることとを忘れたまま、港へと入って行ってしまうことになります。

かつて、

テーセウスアテナイの人々を守るために、自ら進んでミノタウロスへの生贄の列に加わり、クレタ島へと向かう船に乗り込んだ際、

アイゲウス王は、船が帰還する時の目印として、テーセウスが生きて帰ってきた時には白い帆を張り、テーセウスが死んでしまった時には黒い帆のままで戻ってくるように申し付けていたのですが、

アリアドネを失った悲しみのために、このことをすっかり忘れていたテーセウスは、行きと同じく黒い帆を掲げたまま港へと入ってきてしまったため、

そうした黒い帆の印を見て、自分の最愛の息子にして、自らのアテナイの王位を受け継ぐ唯一の後継者であったテーセウスが死んだと思い込んでしまったアイゲウス王は、

その深い絶望のあまりに、海へと身を投げてしまうことによって、そのままこの世を去ってしまうことになるのです。

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アテナイの伝説上の建国の祖となったテーセウスと四王国の統一

そして、その後、

こうした自らの不手際のために、結果として自分の父であったアイゲウス王を死なせてしまったテーセウスは、そのことを深く悔いることになるのですが、

亡き父であるアイゲウス王のためにも、在りし日の父の望み通りに、自分がアテナイの王位を継いでこの国を豊かに治めることこそが父への最大の供養となると考えたテーセウスは、

亡き父の王位を継承してアテナイの王座へとついたうえで、この国をこれまでもより強く豊かな国へとするために国家を統一するための事業へと乗り出していくことになります。

それまでのアテナイの地は、

テーセウスの父であったアイゲウス王のほかにも、パラスニーソスリュコスという名の全部で四人の兄弟たちによって治められていたのですが、

テーセウスは、自らの手で、こうした四人の王によって治められていたアテナイの四つの領域一つに統一することによって、

アテナイの伝説上の建国の祖としても位置づけられていくことになっていったと考えられることになるのです。

・・・

次回記事:テーセウスの船のギリシア神話における由来とは?アテナイの英雄の祖国への帰還に用いられた30本の櫂を持つ木造船

前回記事:テーセウスとアリアドネの船旅と酒の神ディオニュソスの妻となったアリアドネ、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語⑦

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