ヘラクレスの五十人の庶子の行方とカリュドンを去りトラキスへと赴くヘラクレス、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑭

前回書いたように、ヘラクレスはギリシア各地をめぐる進軍の旅のなかで、ギリシア西部に位置するアイトリア地方にあった古代ギリシアの都市であったカリュドンを訪れた時、

この地を治めるオイネウス王の娘であった王女デイアネイラに求婚して、大河を司る神でもあったアケローオスとの格闘に勝って彼女と結婚することになり、

ヘラクレスと彼の再婚相手となったデイアネイラとの間には、彼の直系の後継ぎとなるヒュロスを筆頭に四人の息子と一人の娘が生まれていくことになります。

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ヘラクレスの五十人の庶子とヘラクレイダイと呼ばれる正妻の子供たち

デイアネイラを連れてカリュドンからトラキスへと向かうヘラクレス

そして、その後、ヘラクレスは、

彼の妻となったデイアネイラの父であったオイネウス王が治めるカリュドンの地に拠点を置いたうえで、この地からさらに北方へそして西方へと自らの版図を拡大していくことになるのですが、

その際、ヘラクレスは、

かつて若き日のヘラクレスキタイロンの獅子退治を依頼して、彼のことを自分が住む王宮へと招き、自分の娘たちを代わる代わるよこして五十日間にわたってヘラクレスのことを歓待したテーバイの隣国にあたるテスピアイを支配する王であった

テスピオス王五十人の娘との間に生まれた五十人の庶子たちを自分のもとへと呼び寄せると、

このうち、七人の子供自分のもとへと留め三人の子供は自分の生まれ故郷であったテーバイへと送り

残りの四十人の子供についてはギリシアを遠く離れた新天地に植民都市を築いていくために、イタリアのサルティニア島へと送ることになります。

そして、それに対して、

ヘラクレスと彼の正妻となったデイアネイラとの間に生まれた嫡子にあたるヒュロスを筆頭とする嫡流の子供たちは、ヘラクレスの後裔という意味でヘラクレイダイと呼ばれていくことになるのですが、

広い意味では、こうしたテスピオス王五十人の娘との間に生まれた五十人の庶子たちなども含むヘラクレスの血を引く数多くの子孫たちのことも含めて、同じくヘラクレイダイという呼び名が用いられていくことにもなるのです。

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デイアネイラを連れてカリュドンの地を去る英雄ヘラクレス

そして、その後、

カリュドンの地に滞在していたヘラクレスがオイネウス王の開く饗宴の場へと呼ばれた際、

酒に酔って気が大きくなったヘラクレスは、オイネウス王の近しい親族であったアルキテレスの息子であったエウノモスが彼の手を洗うために水を注ぎにやって来たことに気づかずに、

この子のことをたまたま大きく振り上げた手の指の節で小突いてしまうことになり、ヘラクレスの怪力によって軽々と弾き飛ばされたエウノモスは、そのまま打ちどころ悪く命を落としてしまうことになります。

そして、

子供の父親であったアルキテレスは、この事件がヘラクレスの故意によってなされたものではなかったことから、彼のことを許すことを申し出ることになるのですが、

かつて女神ヘラの狂気に駆られて我が子を自分の手で殺してしまった経験を持つヘラクレスは、意図せずとも自分が再び子供の命を奪ってしまったことに深く心を痛め、法の定めに従って、自分自身に対して追放の刑を下すことになります。

そして、その後、ヘラクレスは、

自分の妻であるデイアネイラを連れて、二人で寂しくカリュドンの地を去って行くことになり、彼らのことを迎え入れてくれたテッサリア地方の東部に位置するトラキスを治めていたケユクス王のもとへと赴いていくことになるのですが、

ギリシア全土を手中におさめようとする栄華の極みにまで至りつつあったヘラクレスの人生は、こうした子供を誤って殺してしまうという一つの悲劇を境として反転して下り坂へと向かっていくことになるのです。

・・・

次回記事:デイアネイラを襲うケンタウロスの心臓を射抜くヘラクレスの矢とネッソスの媚薬、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑮

前回記事:ヘラクレスの再婚とカリュドンの王女デイアネイラとの間に生まれた嫡男ヒュロス、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑬

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