ヘラクレスの第六の功業とステュムパロスの鳥退治で用いられた巨人の眠りを覚ます青銅のガラガラ、ヘラクレスの十二の功業⑥
前回書いたように、ミケーネの王であったエウリュステウスの命令によって、第五の功業にあたるアウゲイアスの家畜小屋の掃除へと赴いていった英雄ヘラクレスは、
川を流れる水の力を利用するという大胆な掃除方法を用いることによって、3000頭の家畜たちがひしめく巨大な家畜小屋をたった一日できれいに掃除してしまうことになるのですが、
その後、ヘラクレスは、報酬を支払うのが惜しくなったアウゲイアス王によって家畜小屋があったエリスの地から追放されてしまうことになったばかりか、
はじめにこの仕事を命じていたエウリュステウスからも難癖をつけられることによって、この仕事の成果そのものがデルポイの神託によってヘラクレスが成し遂げることを定められている十の難行のうちから除外されてしまうことになります。
第六の功業であるステュムパロスの鳥退治へと赴く英雄ヘラクレス
そして、その次に、
ミケーネの王であったエウリュステウスは、ヘラクレスに対して与える第六の難行として、今度はステュムパロスの鳥退治を命じることになります。
ペロポネソス半島の北部に位置するステュムパロスの地には、ステュムパリスと呼ばれる湖があって、この湖の周りは深い森によって覆われていたのですが、
やがて、ステュムパリスの湖の周りの森の中には、周りの平野を駆けるオオカミの群れから逃れるようにして数多くの見知らぬ鳥たちが棲みついていくことになります。
そして、
こうしたステュムパロスの地に棲む鳥たちのなかには、かつては狩りの女神であるアルテミスのもとに仕え、のちに戦の神アレスによって軍事用に育てられることになったともされている青銅の翼と嘴を持つ人食い鳥も一緒に混じっていて、
この湖の近くの町に住む人々は、こうしたステュムパロスの怪鳥が放つ青銅の羽によって傷つけられ、鳥たちが上空から落としていく毒性の排泄物によって田畑が毒されるといった被害に苦しめられていたため、
ヘラクレスは、エウリュステウス王の命令に従って、こうしたステュムパロスの地に棲む鳥退治へと乗り出していくことになるのです。
巨人の眠りを覚ます青銅のガラガラと毒矢によって射落とされる怪鳥
そして、その後、
怪鳥が棲むステュムパロスの地へとたどり着いたヘラクレスは、上空を飛び交っていく鳥たちを追って弓矢を射かけようとすることになるのですが、
鳥たちが棲む湖の周りの森の土地は水分を多く含んだ湿地帯となっていて、ぬかるんだ沼地に足を取られて自由に動き回ることができなかったため、
ヘラクレスは、どうすれば森の中から鳥たちを追い出すことができるのか分からずに、しばらくの間、途方に暮れてしまうことになります。
すると、
そうしたヘラクレスの窮状を目にした女神アテナは、鍛冶屋の神であるヘーパイストスが彼の工房に仕える一つ目の巨人であったキュクロプスたちを目覚めさせるために使っていたともされる青銅のガラガラを持ってきて彼に与えることになり、
ヘラクレスがそれを湖の近くの山の上へと持っていって打ち鳴らすと、その遠くまで響いていく大きな音響に耐えかねた鳥たちは、森の外へと飛び立っていくことになります。
そして、
ヘラクレスは、こうして森の外へと飛び出してきたステュムパロスの怪鳥をたちにヒュドラの猛毒を塗り込んだ毒矢を射かけて撃ち落としていくことになり、
地上へと落ちて動けなくなった鳥たちを次々に捕らえては絞め殺していくことによって、第六の功業にあたるステュムパロスの鳥退治の仕事を成し遂げることになるのです。
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次回記事:ヘラクレスの第七の功業におけるクレタの牡牛との格闘とマラトンの地へと流れ着く聖なる牡牛、ヘラクレスの十二の功業⑦
前回記事:ヘラクレスの第五の功業とアウゲイアスの家畜小屋の掃除での川の水の力を利用した大胆な掃除方法、ヘラクレスの十二の功業⑤
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