ヘラクレスの第五の功業とアウゲイアスの家畜小屋の掃除での川の水の力を利用した大胆な掃除方法、ヘラクレスの十二の功業⑤

前回書いたように、ミケーネの王であったエウリュステウスの命令によって、第四の功業にあたるエリュマントスの猪の生け捕りへと赴いていった英雄ヘラクレスは、

猪が住むエリュマントスの山へと向かう最中に、酒癖の悪さからケンタウロスの一族との争いを招いてしまうことになり、

その際に、意図せずに賢者ケイロンポロスという二人の良きケンタウロスの命までも奪ってしまうことになります。

そしてその後、ヘラクレスは、自らの至らなさによって無用な争いを招いてしまったことを深く恥じて、彼らのために墓を建てて手厚く弔ったのちに、

粛々として猪狩りへと出かけていき、まだ雪の深い山奥へと獲物を追い込み、予め仕掛けておいた罠にかけて捕らえることによってエリュマントスの猪の生け捕りの仕事を達成することになります。

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第五の功業であるアウゲイアス王の家畜小屋の掃除へと赴く英雄ヘラクレス

ヘラクレスの第五の功業とエリスのアウゲイアス王の家畜小屋の掃除

そして、その次に、

ミケーネの王であったエウリュステウスは、ヘラクレスに対して与える第五の難行として、アウゲイアスの家畜小屋の掃除という少し奇妙な仕事を命じることになります。

アウゲイアスは、ギリシア神話における太陽神ヘリオスの子であるとも海の神ポセイドンの子であるとも伝えられているペロポネソス半島の西部に位置するエリスの地を治めていた王であり、

エリスの豊かな土地を治めていたアウゲイアス王は、全部で3000にもおよぶ数多くの家畜を所有していたのですが、

そうした3000頭の家畜たちがひしめく巨大な家畜小屋のなかは、30年間にわたって一度も掃除がされずに荒れ放題になっていたため、

ヘラクレスのことを嫌っていたエウリュステウスは、彼に対する嫌がらせの意味も込めて、そうした家畜の汚物にまみれた不潔な家畜小屋の掃除をさせるという文字通りの意味での汚れ仕事ヘラクレスに命じることにしたとも考えられることになるのです。

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川を流れる水の力を利用したヘラクレスによる大胆な掃除方法

そして、その後、

エリスの地へと到着して、この土地の豊かな様子を目にしたヘラクレスは、家畜小屋の掃除という誰もやりたりがない汚れ仕事をやらされるからには、少なくともその仕事に見合うだけの賃金だけでも受け取っておかなければ割に合わないと考えて、

この地を治めるアウゲイアス王に対して、

自分ならばこの荒れ放題の家畜小屋たった一日できれいに掃除することができるが、その対価として王が所有する家畜の10分の1にあたる300頭の牛をもらい受けたいという交換条件を持ちかけることになります。

そして、

こうしたヘラクレスの申し出を聞いたアウゲイアス王は、どうせそんなことはできるはずがないと高をくくってヘラクレスの条件を受け入れて、彼に家畜小屋の掃除を命じることになるのですが、

王の予想に反して、ヘラクレスは、彼が持つ怪力を用いて、この家畜小屋の近くを流れるアルペイオスペーネイオスと呼ばれる二つの川の流れをねじ曲げてしまい、

川を流れる水の力を利用して、家畜小屋にたまっていた汚れを一気に洗い流してしまうことによって、この難題を見事に解決してしまうことになるのです。

エリスから追放されたのち仕事の成果まで取り消されるヘラクレス

しかし、その後、

約束通りにたった一日巨大な家畜小屋をきれいに掃除してしまったヘラクレスが、その対価として約束されていた報酬を王に要求すると、

ヘラクレスに対して報酬を支払うのが惜しくなったアウゲイアス王は、彼に対してそのような約束をした覚えはないと嘘をついて報酬の牛を引き渡すのを拒むと、そのままヘラクレスのことを自らの所領であるエリスの地から追放してしまうことになります。

そして、さらにその後、

エリスの地から戻ってきたヘラクレスに対して、はじめにこの仕事をヘラクレスに命じていたミケーネの王であるエウリュステウスは、

ヘラクレスがこの仕事を成す際に、家畜小屋の所有者であるアウゲイアスとの間で報酬をもらう約束を結んでいたことを問題とすることになり、

ヘラクレスが報酬をもらう契約を結んでいたということは、この仕事は、あくまでもアウゲイアスとの間の契約における報酬の対価として行われた仕事であって、

それはデルポイの神託の言葉に基づいてミケーネの王である自分の命令に従ってなされた功業としては認めることはできないと難癖をつけることによって、

今回のアウゲイアスの家畜小屋の掃除におけるヘラクレスの仕事の成果は、彼がデルポイの神託において成し遂げることが義務づけられている十の難行のうちからは除外されてしまうことになるのです。

・・・

次回記事:ヘラクレスの第六の功業とステュムパロスの鳥退治で用いられた巨人の眠りを覚ます青銅のガラガラ、ヘラクレスの十二の功業⑥

前回記事:ヘラクレスの第四の功業とエリュマントスの猪の生け捕りの際に起きたケンタウロス族との争い、ヘラクレスの十二の功業④

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