オーストラリアの国名の由来とは?ラテン語でテラ・アウストラリスと呼ばれる伝説上の南方の大陸と古代ギリシアの地球球体説
南太平洋に位置するオーストラリア大陸とタスマニア島などの多数の島々によって構成される国であるオーストラリア(Australia)は、
形式上はイギリス国王を元首とする立憲君主制の連邦国家として位置づけられることになるため、正式名称としてはオーストラリア連邦(Commonwealth of Australia、コモンウェルス・オブ・オーストラリア)と呼ばれることになります。
そして、
こうしたオーストラリアという国名の直接的な由来は、ラテン語において「南方の大陸」のことを意味するテラ・アウストラリス(Terra Australis)という言葉によって呼び表されることになる伝説上の大陸の存在に求められることになるのですが、
そうしたラテン語におけるオーストラリアの国名の起源については、古代ギリシアや古代ローマの時代にまでその大本の起源をさかのぼっていくことができると考えられることになります。
古代ギリシアと古代ローマにおける地球球体説とテラ・アウストラリスと呼ばれる伝説上の南方の大陸との関係
そうすると、まず、
こうしたラテン語におけるテラ・アウストラリスという言葉によって呼び表される伝説上の大陸の存在が想定されていくことになった背景には、
古代ギリシアにおいて成立したと考えらえる地球球体説と呼ばれる学説の存在が深く関係していくことになると考えられることになります。
地球球体説とは、一言でいうと、
人々の足元に存在している大地は平面ではなく球体の形状をしているとする学説、すなわち、地球は丸いと考える考え方として定義されることになりますが、
そうした地球球体説と呼ばれる学説は、古代ギリシアの文献においては紀元前6世紀の数学者にして哲学者でもあったピタゴラスにまでその起源をたどることができると考えられていて、
その後のパルメニデスやエンペドクレス、さらには、アリストテレスなどといった古代ギリシアの主要な哲学者たちの哲学思想のうちにもこうした地球球体説の考え方は広く受け入れられていくことになっていったと考えられることになります。
そして、その後、
紀元後2世紀ごろの古代ローマの時代になると、こうした古代ギリシアの哲学思想に大本の起源を持つ地球球体説の考え方に基づいて、
球体である地球の南側には、現在のヨーロッパ大陸やアジア大陸などといった北半球に位置する既知の大陸に対応する存在として、
それらの大陸と同じくらい大きい未知の大陸が存在するという考え方が提起されていくようになっていき、
そうした北半球の既知の大陸の対極に存在する南半球の未知の大陸のことを指す言葉として、ラテン語において、
「未知なる南方の大陸」といった意味を表すTerra Australis Incognita(テラ・アウストラリス・インコグニタ)、あるいは、
「いまだ知られざる南方の大陸」といった意味を表すTerra Australis Nondum Cognita(テラ・アウストラリス・ノンドゥム・コグニタ)といった言葉が用いられるようになっていったと考えられることになるのです。
ニューホランドからオーストラリアへと至る大陸の呼び名の変遷
そして、そこから時代がさらに進んでヨーロッパにおける大航海時代へと入っていくと、
前述したような古代ギリシアに起源をもつ地球球体説の考え方などに基づいて、テラ・アウストラリスなどと呼ばれる伝説上の南方の大陸についての探索も進められていくことになるのですが、
そうしたヨーロッパ人たちによる南方の海域の探索の際に、オランダの探検隊によって発見された現在のオーストラリアの西海岸にあたる地域が1644年に、
タスマニア島やニュージーランドへと到達した最初のヨーロッパ人として知られているオランダの探検家であったアベル・タスマンによって、
オランダの別名もあたる主要地域にあたるホラント州(Holland)という地名にちなんでラテン語でノヴァ・ホランディア(Nova Hollandia)、英語ではニュー・ホランド(New Holland)と名づけられることになります。
そして、その後の探索において、
こうした英語でニューホランドと呼ばれていた土地が実際には大陸と呼べるほどの大きな陸地の一部分であることが明らかになっていくと、
1814年に出版されたイギリスの航海者にしてこの大陸を実際に周回した人物にもあたるマシュー・フリンダースによって書かれた本のなかに出てくる彼の提言に基づいて、
この大陸のことが古代ローマの時代からその存在が語られてきた伝説上の南方の大陸のことを意味するラテン語におけるテラ・アウストラリス(Terra Australis)という言葉の英訳にあたるAustralia(オーストラリア)という言葉によって呼び表されていくことになっていったと考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
オーストラリアという国名の由来については、
古代ギリシアや古代ローマの時代にまでその大本の起源をさかのぼっていくことができるラテン語においてテラ・アウストラリスと呼ばれてきた伝説上の南方の大陸が、地球上における現実の大陸として位置づけ直されていくことによって、
こうした英語におけるオーストラリアという国名が定着していくことになっていったと考えられることになるのです。
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