オリンピックの五色とギリシア哲学における四元素説と陰陽五行説との関係
前回の記事で書いたように、オリンピックの五つの輪に描かれている青・赤・黄・緑・黒の五色、そして、その背景にある白を加えた六色は、
色彩や映像に関する科学的な観点からは、色の三原色や光の三原色を象徴する色として説明していくことができると考えられることになるのですが、
こうしたオリンピックの五色、または、それに背景の白を加えた六色が選ばれることになった背景となる理由については、
そのほかにも、
古代ギリシア哲学における四元素や、古代中国における陰陽五行説といった古代思想との関連からも説明していくことができると考えられることになります。
古代ギリシア哲学における四元素説とオリンピックにおける青・赤・黄という三つの色のイメージとの対応関係
そうすると、まず、
フランスの教育者にして歴史家でもあったピエール・ド・クーベルタン男爵によって創立された近代オリンピックの原型となったオリュンピアの祭典が行われていた古代ギリシアにおいては、
紀元前5世紀の古代ギリシアの哲学者であったエンペドクレスによって四元素説と呼ばれる自然哲学の思想が唱えられていくことになります。
そして、
こうした古代ギリシアの四元素説においては、世界を構成しているすべての事物は、水、空気、火、土という四つの元素によって形づくられているとされたうえで、
そうしたそれ自体としては不生不滅にして永遠不変である四元素が互いに混合と分離を繰り返していくことによって、この世界におけるあらゆる現象が生じることになると説明されていくことになるのですが、
こうした水・空気・火・土という四元素からは、水を象徴する色としては青のイメージが、火を象徴する色としては赤のイメージが連想されることになるほか、
土の元素からは泥の色である茶色または砂漠の砂のような黄色のイメージが連想されることになると考えられることになるのです。
古代中国における陰陽五行説とオリンピックにおける緑・黒・白という三つの色のイメージとの対応関係
そして、それに対して、
古代中国における陰陽五行説の思想においては、そうした万物の根源となる要素としては、木・火・土・金・水という五つの要素が挙げられていて、
こうした陰陽五行説における木の要素からは、一般的には、木々や草原などの緑のイメージが連想されることになると考えられることになります。
そして、その一方で、
こうした陰陽五行説における五要素と色彩との伝統的な解釈に基づく対応関係においては、
水の要素に対応する北方を守護する亀の姿をした水神である玄武(げんぶ)は、色彩においては玄(くろ)すなわち黒のイメージへと対応することになり、
金の要素に対応する西方を守護する虎の姿をした神獣である白虎(びゃっこ)は、色彩においては白のイメージへと対応づけられていくことになると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
こうした
古代ギリシア哲学における四元素や、古代中国における陰陽五行説といった古代思想においては、
水・空気・火・土という四元素説における四つの元素からは、
水を象徴する色である青と、火を象徴する色である赤、そして、土や砂を象徴する黄色のイメージが連想されていくことになるのに対して、
木・火・土・金・水という陰陽五行説における五つの要素のうちの木の要素からは木々や草原などの緑のイメージが連想されることになる一方で、
水の元素に対応する水神である玄武からは黒のイメージが、金の元素に対応する神獣である白虎からは白のイメージが連想されていくことになると考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした四元素説や陰陽五行説などといった万物の根源となる元素についての西洋と東洋における古代思想に基づく哲学的な観点からは、
古代ギリシアの四元素説における水・火・土という三つの元素から連想されることになる青・赤・黄という三つの色のイメージに加えて、
古代中国の陰陽五行説における木・金・水という三つの要素から連想されることになる緑・黒・白という三つの色のイメージが互いに補い合うような形で融合されていくことによって、
こうしたオリンピックの五つの輪とその背景に描かれている青・赤・黄・緑・黒・白というオリンピックにおける六つの色のイメージが形づくられていくことになっていったとも捉えていくことができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:オリンピックの五輪の紋章の古代ギリシア起源説の真偽とは?デルフォイの石碑に刻まれた謎の紋章とカール・ディームの石
前回記事:オリンピックの青・赤・黄・緑・黒・白の六色がすべての国々の国旗を象徴する理由とは?色と光の三原色との対応関係
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