てんびん座のギリシア神話における由来とは?純潔の女神アストライアが星空に残した法と正義を象徴する星座の形
黄道十二星座の一つとして位置づけられている天秤座(てんびんざ)は、黄道十二宮における天秤宮(てんびんきゅう)の領域とも結びつけられることによって、
二十四節気のうちの秋分から霜降の頃までの時期にあたる 9月23日から10月23日までの31日間の期間を司る星座としても位置づけられることになるのですが、
こうしたてんびん座と呼ばれる星座は、ギリシア神話においては具体的にどのような由来を持つ星座であると考えられることになるのでしょうか?
純潔の女神アストライアとギリシア神話における地上の世界の没落の物語
そうすると、まず、
こうしたてんびん座と呼ばれる星座において夜空に描かれることになる左右の腕の長さが等しいさおの両端に二枚の皿がつるされた天秤の姿は、
ギリシア神話の物語においては、正義の女神ディケーとも同一視されている純潔の女神アストライアと、人間と神々をめぐる地上の世界の没落の物語のうちにその具体的な由来が求められていくことになると考えられることになります。
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冒頭でも述べたように、
ギリシア神話における女神アストライアは、ギリシア神話の主神ゼウスと法の女神テミスとの間に生まれた正義を司る女神であるディケーと同一視されることがあるのですが、
そのほかにも、こうしたアストライアと呼ばれる女神の姿は、
日没を司る星空の神であるアストライオスと、夜明けと風を司る暁の女神であるエオスとの間に生まれた翼を持つ女神の姿として描かれていくこともあります。
そして、
ギリシア神話の物語のなかで、こうしたアストライアと呼ばれる女神についての直接的な言及がなされている箇所は非常に少ないのですが、
この女神の名は、以下で述べるようなギリシア神話における地上の世界の没落の物語のなかで、しばしば言及されていくことになると考えられることになるのです。
黄金時代から鉄の時代までの世界の没落の物語と純真な心を持つアストライアが星空に残した法と正義を象徴する星座の形
ギリシア神話の物語においては、人間が生きてきた地上の世界は、
かつて太古の昔にゼウスの父であるクロノスが天空を支配していて、地上においても人間と神々が共に暮らしていた黄金時代から、
クロノスとゼウスの間で天空の支配権をめぐる神々の戦いが行われ、それによってクロノスが天界から追われて、ゼウスが天空を支配するようになった白銀の時代、
神々と人間が住む世界が互いに離れていくことによって、地上の世界に対する神々による支配が少しずつ弱まっていき、地上においても徐々に力による争いが増えていくようになっていった青銅の時代、
そして、戦争と罪悪が世の常となり、地上に悪徳がはびこるようになった現在の世界へと通じる鉄の時代へと続くについて、少しずつ堕落していき、没落の一途をたどっていくことになっていったと説明されていくことになります。
そして、
そうした地上の世界において、戦争と暴力、嘘と奸計といった悪徳があふれるようになった鉄の時代が訪れることになると、
ゼウスを筆頭とするオリンポスの神々は、そうした地上にはびこる人間たちの悪徳と醜悪さに嫌気がさして、天上の世界へと還っていってしまうことになるのですが、
そうしたなか、
純真な心を持つ女神であったアストライアだけは、ほかの神々がみな地上の人々を見捨てて天上の世界へと還ってしまった後も、ただ一人地上に残って、悪徳にふける人間たちに正義の心を取り戻すように最後まで訴え続けていくことになります。
しかし、
いくら誠意をもって人々に呼びかけても、人間の良心に訴える自分の声を聞こうとする者が誰もいなくなってしまったことを悟ったアストライアは、やがて一人さびしく天上の世界へと還っていくことになるのですが、
それでも、人間たちの心の奥底に眠っている正義の心の存在を決して疑うことがなかったアストライアは、自分がこの世界を去ってしまった後も、
後世に生きる人々が、いつかどこかの時代で自分の心の内に眠る良心の声に耳を傾けて、かつて地上の世界においても存在していた法と正義の支配に基づく秩序と平和に満ちた理想の世界を再び築き上げていくことを志した時に、その道しるべを見失うことがないように、
自分が持っていた物事の善悪を正しく見極めるための秤(はかり)を星空のうちへとかかげて、法と正義を象徴する星座の形として夜空のなかに残していったというのが、
こうしたギリシア神話におけるてんびん座と呼ばれる星座の具体的な由来であると考えられることになるのです。
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次回記事:さそり座のギリシア神話における由来とは?神の刺客となったサソリと巨人オリオンと月の女神アルテミスの恋の物語
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