新約聖書の四福音書におけるサタンの五つの呼び名とルカによる福音書における堕天使としてのサタンの位置づけ、サタン(悪魔)とは何か?⑥
前回の記事で書いたように、マタイによる福音書やルカによる福音書などといった新約聖書の四福音書におけるサタンや悪魔と呼ばれる存在についての記述のなかでは、そのうちの大部分の箇所においては、
人間が持つ悪しき心や弱き心の比喩や象徴、あるいは、そうした人間の心の片隅に入り込んで悪しき行いをなすように仕向けていくという実体を持たない何らかの霊的な存在のことを指して、こうしたサタンや悪魔といった言葉が用いられていると考えられることになります。
しかし、その一方で、
こうした新約聖書の四福音書のなかの記述においても、旧約聖書におけるサタンにつていの記述などと同様に、何らかの形で実体化された具体的な存在としてこうしたサタンや悪魔と呼ばれる存在についての言及がなされている箇所がないわけではなく、
そうした実体的な存在としてのサタンについての言及がなされている箇所としては、前々回の記事で取り上げた「荒野の誘惑」において登場する誘惑する者としてのサタンの姿のほかにも、
例えば、以下で示すようなルカによる福音書におけるサタンについての記述なども挙げられることになると考えられることになります。
ルカの福音書において示されている堕天使としてのサタンの位置づけ
「荒野の誘惑」におけるサタンの誘惑を退けて本格的な宣教活動へとその身を捧げていくことになったイエスは、その後、「山上の垂訓」や「パンと魚の奇跡」などの様々な教えと奇跡を世の人々へと示していったのち、
コラジンやベトサイダ、カファルナウムといったイスラエル各地の町へと宣教活動のために赴いていくことになるのですが、そうした厳しい宣教活動のさなか、
例えば、
ルカによる福音書のなかでは、具体的には以下のような形でサタンや悪魔と呼ばれる存在についての言及がなされている箇所を見いだしていくことができます。
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イエスは言われた。「わたしは、サタンが稲妻のように天から落ちるのを見ていた。 蛇やさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を、わたしはあなたがたに授けた。だから、あなたがたに害を加えるものは何一つない。
しかし、悪霊があなたがたに服従するからといって、喜んではならない。むしろ、あなたがたの名が天に書き記されていることを喜びなさい。」
(新約聖書「ルカによる福音書」10章18節~20節)
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そして、こうしたルカによる福音書におけるサタンについての記述においては、
サタンや悪魔と呼ばれる存在は、神の裁きによって「稲妻のように天から落とされる」ことになった堕天使とも呼べる存在として位置づけられたうえで、
そうしたサタンや悪魔と呼ばれる存在は、「蛇」や「さそり」、あるいは「悪霊」といった言葉によっても言い換えられていると考えられることになるのです。
新約聖書の四福音書において語られているサタンの五つの異名とは?
以上のように、
今回の記事で取り上げたルカによる福音書におけるサタンについての記述、あるいは、前々回の記事で取り上げたマタイによる福音書などにおいて語られている「荒野の誘惑」の場面の記述などに代表されるように、
新約聖書の主要な書にあたる四福音書においては、サタンや悪魔と呼ばれる存在は、神の裁きによって天界から地上へと落された堕天使のような存在として位置づけられたうえで、
そうしたサタンと呼ばれる存在に対しては、
「悪魔」「悪霊」「誘惑する者」そして「蛇」と「サソリ」といった全部で五つの異名が与えられていると解釈していくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:ヨハネの黙示録における赤い巨大な竜としてのサタンの姿と創世記におけるエデンの園の蛇の関係、サタン(悪魔)とは何か?⑦
前回記事:ユダの裏切りの場面で現れる霊的な存在としてのサタンと使徒ペテロへのイエスの教えの中で語られる比喩や象徴としてのサタン、サタン(悪魔)とは何か?⑤
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