ヨハネの黙示録における赤い巨大な竜としてのサタンの姿と創世記におけるエデンの園の蛇の関係、サタン(悪魔)とは何か?⑦
前回までの一連の記事のなかでは、マタイによる福音書やルカによる福音書といった新約聖書のなかの四福音書におけるサタンの位置づけのあり方について詳しく考察してきましたが、
こうした新約聖書におけるサタンや悪魔と呼ばれる存在についての位置づけのあり方の全体像について、より詳細な形で把握していくためには、
さらにもう一つ、
新約聖書の最後の書として位置づけられているヨハネの黙示録におけるサタンについての記述についても詳しく考えていかなければならないと考えられることになります。
ヨハネの黙示録における炎のように燃える赤い巨大な竜としてのサタン
それでは、
ヨハネの黙示録においては、具体的にどのような形で、こうしたサタンと呼ばれる存在についての言及がなされているのか?ということについてですが、
それについては、世界の終末の時を告げる七人の天使が吹く七つのラッパの音の後に続いて地上に訪れるとされている大いなる災厄についての予言の言葉のなかに、そうしたサタンについての記述が現れていくことになります。
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また、もう一つのしるしが天に現れた。見よ、火のように赤い大きな竜である。これには七つの頭と十本の角があって、その頭に七つの冠をかぶっていた。 …
さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである。竜とその使いたちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らの居場所がなくなった。
この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた。
わたしは、天で大きな声が次のように言うのを、聞いた。「今や、我々の神の救いと力と支配が現れた。神のメシアの権威が現れた。我々の兄弟たちを告発する者、昼も夜も我々の神の御前で彼らを告発する者が、投げ落とされたからである。…」
(新約聖書「ヨハネの黙示録」12章3節~10節)
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このように、上記のヨハネの黙示録における記述においては、
まずは、サタンは炎のように燃える赤い大きな竜の姿をして現れたうえで、そうした竜としてのサタンは、天上の世界において大天使ミカエルが率いる天使の軍団に戦いを挑んだ末に敗れて、地上へと投げ落とされることになったと説明されていくことになります。
そして、ここでは、
そうした悪魔やサタンと呼ばれる存在に対しては、巨大な竜、年を経た蛇、人類を惑わす者といった呼び名が与えられたうえで、
さらに、こうしたサタンと呼ばれる存在は、神の権威に対して異を唱えることによって、神を信じる正しき人々を神の御前で告発する者、すなわち、神の前で偽りの告発をなす者としても位置づけられていると考えられることになるのです。
ヨハネの黙示録におけるサタンの五つの呼び名とエデンの園の蛇
以上のように、
ヨハネの黙示録において示されるサタンについての記述においては、サタンに対しては、「悪魔」「竜」「蛇」そして「誘惑する者」「偽りの告発を為す者」という五つの呼び名が与えられていくことになると考えられることになるのですが、
こうしたヨハネの黙示録におけるサタンについての記述からは、かつて、旧約聖書の最初の書にあたる創世記において、アダムとイヴを誘惑して神の定めた掟を破って善悪の知識の木の実を食べさせることによって、自らの楽園であるエデンの園から追放されるように仕向けた「蛇」と呼ばれる存在についても、
それがこうしたサタンや悪魔と呼ばれる存在の姿のうちの一つであったということが暗に示されているとも捉えることができると考えられることになります。
そして、詳しくはまた次回改めて考察していくように、
こうしたヨハネの黙示録において示されている竜としてのサタンの存在は、「666」という獣の数字の刻印を与えて人類を滅びへと導く者として有名な黙示録における獣の存在へも深く結びつけられていくことになるのです。
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次回記事:ヨハネの黙示録の獣とサタンとの関係とは?七つの頭に記された神を冒涜する名と竜の姿をしたサタンと第一の獣との関係
前回記事:新約聖書の四福音書におけるサタンの五つの呼び名とルカによる福音書における堕天使としてのサタンの位置づけ、サタン(悪魔)とは何か?⑥
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