ペルシア暦において春分の日が元日とされる理由とは?ゾロアスター教とイラン暦やシリア暦などのイスラム圏の太陽暦との関係
前回の記事では、世界最古の太陽暦にあたるエジプト暦における具体的な暦法の仕組みのあり方について詳しく考察していきましたが、
こうした紀元前2000年ごろの時代に古代エジプトにおいて発明されたと考えられている太陽暦と呼ばれる暦法のあり方は、その後、シナイ半島とアラビア半島を経て、ペルシア帝国へと伝えられていくことになります。
そして、
現代においてもイランやイラク、アフガニスタンやシリアなどといったイスラム圏の国々においては、太陰暦にあたるイスラム暦(ヒジュラ暦)と共に、
こうした古代ペルシア帝国に起源を持つ太陽暦にあたるペルシア暦に大本の起源を持つ暦法のあり方であるイラン暦やシリア暦といった暦法が用いられていると考えられることになるのですが、
今回の記事では、
そうしたペルシア暦と呼ばれる現在のイランやイラク、アフガニスタンやシリアといったイスラム圏の国々で用いられている太陽暦の起源となった暦法のあり方の具体的な特徴について詳しく考察していきたいと思います。
古代エジプトにおける世界最古の太陽暦とナイル川の氾濫時期の把握
ペルシア暦とは、紀元前500年ごろの時代に古代エジプトから伝えられた暦法のあり方に基づいて制定されたと考えられる古代世界における太陽暦の一種であり、
そうした紀元前500年ごろの時代に、この地を支配していた王朝にあたるアケメネス朝ペルシアにおいては、冒頭で挙げたエジプト暦と同様に、
1年を365日としたうえで、1か月を30日とする12の月と、年末に加えられることになる5日の余日によって1年が構成されていく太陽暦が導入されていくことになったと考えられることになるのですが、
こうしたペルシア帝国において導入された太陽暦においては、エジプト暦の場合とは異なり、春分の日を元日とすることによって一年の暦のあり方を組み上げられていたという点に、大きな特徴の違いが見られることになると考えられ、。
春分とは、冬至を過ぎて北半球においては徐々に一日を占める昼の長さがしだいに長く春の季節のなか、昼と夜の長さがちょうど同じになる日のことを意味する言葉であり、
現代の日本においては、こうした春分の時期は、3月21日ごろにあたるとされることになります。
そして、
古代ペルシアにおいては、善神アフラ・マズダと悪神アンラ・マンユ(アーリマン)との闘争という善と悪、光と闇という善悪二元論に基づく古代宗教であり、
寺院のなかでは火が絶えることなく燃え続けていて、信者たちはその炎に向かって祈りを捧げていたことから、別名では拝火教とも呼ばれているゾロアスター教が広く信仰されていたのですが、
ゾロアスター教においては、こうした春分の日に祝われるノウルーズと呼ばれる祭典と、それに対応する秋分の日に祝われるミフラガーンと呼ばれる祭典が暦のうえでの二大祭典として位置づけられていて、
特に、前者の春分の日に祝われる祭典にあたるノウルーズ(Nowruz)は、ペルシア語において「新しい日」という意味を表す言葉でもあったため、
ペルシア暦においては、こうした古代宗教の一種であるゾロアスター教に大本の起源を持つと考えられるノウルーズと呼ばれる春分を祝う宗教的な祭典に基づいて、春分の日を元日とする太陽暦が用いられていくことになったと考えられることになるのです。
イラン暦やシリア暦といったイスラム圏における太陽暦との関係
そして、冒頭でも述べたように、
こうしたペルシア暦と呼ばれるエジプト暦とゾロアスター教に起源を持つと考えられる太陽暦のあり方は、現在のイランやイラク、アフガニスタンやシリアといったイスラム圏の国々で用いられている太陽暦のあり方へも受け継がれていくことになったと考えられることになるのですが、
そうしたペルシア暦に起源を持つと考えられるイスラム圏における太陽暦のあり方は、より正確には、
現代のイランにおいて用いられているイラン暦や、アフガニスタンにおいて用いられているアフガン暦、そして、現代のシリアやイラクにおいて用いられているシリア暦といった独自の太陽暦のあり方へと細分化されていくことになります。
そして、
前者のイラン暦やアフガン暦においては、ペルシア暦の場合と同様に、古代のゾロアスター教に由来する祭典であるノウルーズが祝われる春分の日が正月すなわち一年のはじまりの日とされるのに対して、
後者のシリア暦においては、これらの地域においては小麦などの主要な穀物の種まきの時期にあたる秋分の日の前後あたりの日が一年のはじまりの日とされるといった点に、具体的な特徴の違いが見られることになると考えられることになるのです。
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次回記事:ユリウス暦の具体的な仕組みと歴史的な経緯とは?カエサルのエジプト平定から太陽暦の制定までの一連の経緯と第七の月の改称
前回記事:世界最古の太陽暦であるエジプト暦における暦法の仕組みの具体的な特徴とは?恒星シリウスの観測とナイル川の氾濫時期の関係
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