ソメイヨシノの学名にあたるプルヌス・エドエンシスの由来とは?ラテン語の意味と江戸や東京を代表する桜としての位置づけ
前回の記事で書いたように、ソメイヨシノ(染井吉野)と呼ばれる桜の品種のことを意味する日本語における名称の由来は、こうした新たな桜の品種の作り手となった植木職人たちが集住していた染井村と、日本を代表する桜の名所にあたる吉野山に由来して付けられた名前であると考えられることになるのですが、
こうしたソメイヨシノと呼ばれる桜の品種は、ラテン語に基づく正式な学名においては、Prunus × yedoensis ‘Somei-yoshino’(プルヌス・エドエンシス・ソメイヨシノ)と呼ばれることになります。
そこで、今回の記事では、
こうしたソメイヨシノ(染井吉野)という桜の品種の学名にあたるプルヌス・エドエンシスといった名前は、具体的にはどのような由来からこうした学名がつけられることになったのか?ということについて詳しく考えていきたいと思います。
ラテン語におけるプルヌスの意味とサクラとスモモとの関係
まず、
こうしたPrunus × yedoensis ‘Somei-yoshino’(プルヌス・エドエンシス・ソメイヨシノ)というラテン語における学名の最初の部分にあたる
Prunus (プルヌス)というラテン語の単語は、英語でいうところのplum(プラム)、すなわち、スモモの木のことを意味する単語であると考えられることになります。
英語圏を中心とする海外における一般的な植物の種類の分類のあり方においては、
サクラは、ウメやモモ、プラムやアーモンドなどといった果実や木の実などと同様に、広義におけるスモモ属に分類される植物の種類として位置づけられることになるため、
そうした広義におけるスモモ属やサクラ属に分類される植物の種類であるという意味で、こうしたPrunus (プルヌス)というラテン語に基づく学名がつけられていると考えられることになるのです。
エドエンシスという学名の由来と江戸や東京を代表する桜の種類
そして、それに対して、
その次に挙げられているyedoensis(エドエンシス)という学名の部分については、
例えば、
50万~20万年くらい前の東アジアに生息していた推定される中国の北京(ペキン)の森林地帯においてはじめて発見された化石人類の一種である北京原人が、ラテン語に基づく正式な学名においては、
かつては、Sinanthropus pekinensis(シナントロプス・ペキネンシス)と呼ばれていて、現在では主にHomo erectus pekinensis(ホモ・エレクトス・ペキネンシス)と呼ばれているように、
一般的に、動物や植物の種類における正式な学名においては、
そうした生物の種類がはじめて発見された地名に基づいて学名がつけられる場合が多いと考えられることになります。
そして、
こうしたソメイヨシノ(染井吉野)と呼ばれる桜の品種は、江戸時代の末期に、現在の東京、すなわち、当時の江戸の駒込のあたりに位置する染井村に住む植木職人たちの手によって新たにつくり出された品種であると考えられることになるため、
直接的には、そうしたソメイヨシノがはじめて生み出された場所にあたる当時の江戸という地名に基づいて、こうしたyedoensis(エドエンシス)と呼ばれる学名がつけられることになったと考えられることになります。
また、
こうしたプルヌス・エドエンシスという桜の品種のことを意味する名称は、ソメイヨシノだけではなく、三島桜や駿河桜などといったエドヒガンとオオシマザクラの交雑によって生まれたすべての桜の品種に対して用いられている名称でもあると考えられることになると考えられ、
そうしたソメイヨシノを含む様々な桜の品種を生み出す母体となったエドヒガンとオオシマザクラという二つの桜の種類は、
エドヒガン(江戸彼岸)はその名の通り江戸を中心とする関東地方において多く見られる桜の種類であり、オオシマザクラ(大島桜)も現在の東京都に位置づけられている伊豆大島などにおいて自生していた桜の種類であるというように、
両方とも、江戸や東京といった地域に深い縁を持つ桜の種類であると考えられることになります。
つまり、
こうしたソメイヨシノ(染井吉野)という桜の品種の学名に用いられているプルヌス・エドエンシスというラテン語に基づく言葉は、この学名が表す植物の種類が、江戸においてはじめて発見された桜の品種であるということを意味するだけではなく、
この桜の品種が江戸や東京といった地域に深い縁をもつエドヒガンとオオシマザクラという二つの桜の種類の交雑によって生み出された品種であるということも意味していると考えられることになります。
そして、そういった意味では、
こうした正式な学名においてもプルヌス・エドエンシスという江戸や東京のことを意味する言葉が用いられているソメイヨシノ(染井吉野)という桜の品種は、
まさに日本の政治的および文化的な中心地となってきた江戸や東京を代表する桜の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:ソメイヨシノは本当に繁殖力を持たない生命力が弱い植物の種族なのか?人為的な繁殖方法に頼る植物の種族における利点と欠点
前回記事:ソメイヨシノという名称の具体的な由来とは?桜の名所である吉野山との関係と吉野桜から染井吉野へと呼び名が変わった経緯
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