被子植物のなかで風媒花に分類される代表的な植物の種類とは?イネ科に代表される被子植物の虫媒花から風媒花への再進化
前回の記事で書いたように、一般的には風媒花に分類される植物が多い裸子植物のなかにも昆虫の媒介によって受粉を行う虫媒花に分類されるソテツやマオウやグネツムなどといった植物が挙げられることになるのですが、
それとは反対に、
一般的には虫媒花や鳥媒花に分類される植物が多い被子植物のなかにも、一般的な裸子植物と同様に風の力を利用して受粉を行う風媒花に分類される植物の種類もある程度存在していると考えられることなります。
ブナやヤナギなどの原始的な花の構造を持つ風媒花に分類される被子植物の種族
被子植物のなかで、風媒花に分類されることになる代表的な植物の種類としては、ブナ科やヤナギ科、クワ科やカバノキ科などに分類される樹木の種類や、
イネ科やイグサ科やカヤツリグサ科などに分類される被子植物の種類が挙げられることになるほか、キク科に分類されるヨモギやブタクサなどもそうした風媒花に分類される被子植物の種類として挙げられると考えられることになります。
そして、このうち、はじめに挙げた
ブナ科やヤナギ科、クワ科やカバノキ科などに分類される被子植物の樹木は、花びらを持たない単純な構造をした小さな花が密に集まって動物の尾のような形で垂れ下がっている尾状花序(びじょうかじょ)と呼ばれる特殊な形態をした花を咲かせることになるのですが、
こうした尾状花序と呼ばれる花の形態は、シダ植物や裸子植物の段階から被子植物の段階と植物が進化していくなかで、はじめに形成されていくことになった被子植物における原初的な状態に近い花の形態をしているとも考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした尾状花序と呼ばれる花の形態を持つ風媒花に分類されるブナやヤナギ、クワやカバノキといった被子植物の樹木は、
現代に至るまでこうした被子植物に分類される植物たちが虫媒花としての受粉形態を獲得する以前の比較的原始的な花の構造と受粉形態を保持し続けてきた被子植物の種族としても位置づけることができると考えられることになるのです。
イネ科に代表される被子植物の虫媒花から風媒花への再進化の流れ
そして、それに対して、後者の
イネ科やイグサ科やカヤツリグサ科については、同じ風媒花に分類される被子植物の種族であるとはいっても、前述したブナ科やヤナギ科などに分類される樹木の場合とは花の構造や進化のあり方には大きな違いが見られると考えられ、
こうしたイネ科に代表されるような被子植物は、かつては、ほかのサクラやアブラナといった虫媒花に分類される一般的な被子植物と同様に、花粉の運び手となる昆虫を引きつけるような比較的目立つ花を咲かせていたと考えられることになるのですが、
森林地帯以外の草原や乾燥地帯などといった昆虫があまり多く生息していない地域へも生息範囲を広げていくなかで、昆虫の存在に頼らない原初的な花粉の受粉形態にあたる風媒による受粉形態へと回帰していったと考えられることになります。
そして、
そうした虫媒から風媒への受粉形態の変化のなかで、昆虫を引きつけるために必要とされていた花びらなどが失われていくことによって、現在のイネ科の植物において見られるような籾殻のような小さな花をつけるようになっていった考えられることになるのですが、
そういった意味では、
こうしたイネ科に代表されるような風媒花に分類される被子植物たちは、はじめは他の一般的な被子植物と同様に、花びらをつけた目立つ花を咲かせて昆虫などの媒介によって花粉の受粉を行っていたこともあると考えられるものの、
そうした昆虫の存在に依存せずに新たな環境へと広く適応していくために、再び風媒花へと進化していくことになった被子植物の種族としても位置づけることができると考えられることになるのです。
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以上のように、
風媒花に分類される被子植物のなかには、
虫媒花へと進化していく前の段階の原始的な花の構造を保持しているため風媒花に分類されている植物と、
虫媒花へと進化した後の段階において、新たな環境へと適応していくために風媒花へと再び進化していくことになった植物という二通りのパターンが存在するとも捉えることができると考えられることになるのですが、
こうした風媒花に分類される被子植物の代表的な種類についてまとめると、
ブナ科に分類されるブナ、カシ、ナラ、クヌギ、
ヤナギ科に分類されるシダレヤナギ、ネコヤナギ、ポプラ、
クワ科に分類されるクワ、イチジク、コウゾ、パンノキ、
カバノキ科に分類されるシラカバ、ハンノキ、
イネ科に分類されるイネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、
イグサ科に分類されるイグサ、クサイ、スズメノヤリ、
カヤツリグサ科に分類されるカヤツリグサ、カミガヤツリ(パピルス)
その他には、
キク科に分類されるヨモギやブタクサ、あるいは、クルミやヤマモモ、ヤシやイラクサなどといった被子植物の種類の名が挙げられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:風媒花に分類される代表的な植物の種類とは?裸子植物と被子植物に分類される風媒花の代表的な種類
前回記事:裸子植物なのに風媒花ではなく虫媒花に分類される植物とは?ソテツにおける風媒と虫媒の両立と害虫であるゾウムシとの関係
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