毒キノコに含まれる自然毒の代表的な種類とは?②食中毒の原因となるケースが多い毒キノコに含まれる主要な毒成分の種類
前回の記事では、ドクツルタケ、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケ、ニガクリタケ、コレラタケ(ドクアジロガサ)、ドクササコ、ニセクロハツ、タマシロオニタケ、ツキヨタケ、ドクヤマドリ
という比較的毒性の高い毒キノコに含まれる主要な毒成分の種類について詳しく考察してきましたが、
今回の記事では、それに引き続き、
クサウラベニタケ、イッポンシメジ、カキシメジ、テングタケ、ベニテングタケ、ワライタケ、オオワライタケ、カエンタケ、シャグマアミガサタケ、スギヒラタケといった残りの十種類の毒キノコに含まれている主要な毒成分の種類についても詳しく考察していきたいと思います。
食中毒の原因となるケースが多い毒キノコに含まれる主要な毒成分の種類
⑨ムスカリン
まず、今回の記事ではじめに挙げたクサウラベニタケやイッポンシメジといった毒キノコの種類に含まれている主要な毒成分としては、ムスカリン(Muscarine)と呼ばれるアルカロイド系の毒素の種類が挙げられることになり、
こうしたムスカリンを原因とする食中毒においては、初期症状として涙や汗や唾液といった成分の体外への分泌量の増加がみられたのち、腹痛や吐き気や下痢といった消化器系の症状や、瞳孔の縮小や呼吸困難といった中毒症状が引き起こされることになると考えられることになります。
⑩ウスタル酸
また、その次に挙げたカキシメジに含まれている主要な毒成分としては、ウスタル酸(Ustalic acid)と呼ばれる毒素の種類が挙げられることになり、
こうしたウスタル酸を原因とする食中毒においては、下痢や嘔吐や腹痛といった消化器系を中心とする中毒症状が引き起こされることになるほか、頭痛などの症状が現れることもあると考えられることになります。
⑪イボテン酸
そして、その次に挙げたテングタケやベニテングタケといったテングタケ科に属する毒キノコには、前述したクサウラベニタケやイッポンシメジといった毒キノコの種類にも含まれているムスカリンといった毒素も含まれているものの、
これらのテングタケ科に属する毒キノコに含まれている主要な毒成分としては、イボテン酸(Ibotenic acid)と呼ばれる毒素の種類が挙げられることになります。
こうしたイボテン酸と呼ばれる成分は、アミノ酸の一種としても位置づけられていて、昆布のうま味成分でもある同じくアミノ酸の一種にあたるグルタミン酸の10倍ほどの強いうま味を人間の味覚に対して引き起こす成分としても知られているのですが、
それと同時に、こうしたイボテン酸と呼ばれるアミノ酸は、下痢や嘔吐や腹痛といった消化器系の症状のほか、精神錯乱やけいれん発作、昏睡といった神経症状を引き起こす毒素としても位置づけられることになるのです。
⑪シロシビン
そして、その次のワライタケやオオワライタケといった毒キノコの種類に含まれている主要な毒成分としては、シロシビン(Psilocybin)と呼ばれる毒素の種類が挙げられることになるのですが、
こうしたシロシビンと呼ばれる成分は、ワライタケやオオワライタケといったキノコの俗称でもあるマジックマッシュルームと呼ばれるキノコから抽出される幻覚剤にも分類される成分としても位置づけられることになります。
そして、こうしたシロシビンと呼ばれる成分は、人体に対して神経毒として作用することによって、幻覚や幻聴、手足のしびれや脱力感といった中毒症状を引き起こすことになると考えられることになるのです。
⑫トリコテセン
また、その次に挙げたカエンタケに含まれている主要な毒成分としては、カビ毒の一種としても有名なトリコテセン(Trichothecenes)と呼ばれる毒素の種類が挙げられることになり、
こうしたトリコテセンを原因とする食中毒においては、腹痛や下痢、嘔吐といった消化器系を中心とする中毒症状や発熱といった症状が引き起こされることになると考えられることになります。
⑬ギロミトリン
そして、その次のシャグマアミガサタケに含まれている主要な毒成分としては、ギロミトリン(Gyromitrin)と呼ばれる毒素の種類が挙げられることになり、
こうしたギロミトリンと呼ばれる毒素は、皮膚や粘膜に対する腐食作用をもつほか、食中毒の症状としては、嘔吐や下痢や腹痛といった消化器系の症状や、肝臓や腎臓などにおける臓器不全、さらには、発熱やめまい、意識障害や昏睡といった神経系の症状といった多彩な中毒症状を引き起こされることになるのです。
現代の生物学でも未解明な毒キノコに含まれる毒素の存在についての未知の領域
また、その一方で、
最後に挙げたスギヒラタケについては、2004年までは食用キノコとして東北や北陸地方などを中心に広く食べられていたものの、その後、摂食後に急性脳症を起こした事例が多数報告されたことから、現在では毒キノコとして位置づけられているのですが、
こうしたスギヒラタケによって引き起こされる中毒症状の原因となる毒成分の分析については、現代の生物学においてもいまだ統一的な見解は得られていないと考えられることになります。
このように、
前回の記事で取り上げたドクササコや今回の記事で取り上げたスギヒラタケのように、そのキノコを摂食することによって何らかの中毒症状が引き起こされることは分かっていても、そうした中毒症状の原因となる毒素の存在や仕組みについていまだ十分には分かっていない部分が存在するというように、
現代の生物学においても、こうした毒キノコといった菌類含まれる自然毒の成分の研究といった分野においては、いまだに新たに解明するべき未知の領域、すなわち、フロンティアが残されていると考えられることになるのです。
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次回記事:自然毒食中毒の原因となる代表的な動植物と菌類の種類のまとめ、植物性と動物性の自然毒と菌類(毒キノコ)の毒素の分類
前回記事:毒キノコに含まれる自然毒の代表的な種類とは?①比較的毒性の高い毒キノコに含まれる主要な毒成分の種類
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