知性とは何か?③アナクサゴラスの哲学思想における宇宙全体の秩序を司る根源的な原理としてのヌース(知性)の位置づけ
前回の記事(で書いたように、古代ギリシア哲学において、ギリシア語におけるヌース(nous)としての知性の存在が哲学にける重要な原理として位置づけられるようになったのは、
紀元前6世紀の古代ギリシアの哲学者であるピタゴラスの哲学思想においてだったと考えられることになるのですが、
宇宙の内に存在するすべての存在を司る根源的な原理としてのヌースとしての知性の存在のあり方がより具体的な形で言及されていくことになるのは、
紀元前5世紀の古代ギリシアの哲学者であったアナクサゴラスの哲学思想のうちであると考えられることになります。
アナクサゴラスの哲学思想におけるスペルマタ(種子)とヌース(知性)の関係
アナクサゴラスの哲学思想においては、
この宇宙の内に存在するあらゆる事物は、スペルマタ(種子)と呼ばれる微粒子的な基本素材から構成されていると説明されていくことになるのですが、
「あらゆるものの内にあらゆるものの部分が含まれている」
というアナクサゴラス自身の言葉が示しているように、
そうした事物を形成する基本素材としてのスペルマタ(種子)は、種子の種子、さらに、その種子の種子の種子へとどこまでも無限分割していくことが可能な存在として捉えられたうえで、
それぞれのスペルマタ(種子)が自分自身の内にも別の種子の部分を有することによって、互いの内に互いの部分を有し合う存在としても捉えられていくことになります。
そして、
こうしたアナクサゴラスの哲学思想においては、
そうした多様な種類の種子(スペルマタ)によって構成されている宇宙全体の秩序を司る根源的な原理のあり方が、
ギリシア語におけるヌース(nous)、すなわち、知性と呼ばれる概念として捉えられていくことになるのです。
宇宙全体の秩序を司る根源的な原理としてのヌース(知性)の位置づけ
アナクサゴラスの哲学に基づく宇宙観においては、
宇宙の最初の状態は、互いの内に互いの部分を有し合う種子(スペルマタ)同士が渾然一体となった原初的な混合状態にあったと捉えられていくことになるのですが、
ヌースとしての知性の存在は、
そうした原初的な混合状態にあった宇宙に対して最初の運動を与え、宇宙全体の回転運動を支配することによって、宇宙の内に存在するすべての事物に適切な秩序と配置を与える根源的な原理として捉えられていくことになります。
そして、アナクサゴラスにおいては、
そうした宇宙全体の秩序を司る根源的な原理としてのヌース(知性)の存在のあり方は、
それ自体として自律的に単独で存在し、他のいかなる事物とも混じり合うことのない純粋で無限なる存在として定義されていくことになるのです。
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以上のように、
アナクサゴラスの哲学思想においては、
ヌースとしての知性の存在は、原初的な混合状態にあった宇宙に対して最初の運動を与え、宇宙全体の回転運動を支配することによって宇宙の内に存在するすべての事物に適切な秩序と配置をもたらすという働きを担う
宇宙全体の秩序を司る根源的な原理のことを意味する概念として位置づけられていると考えられることになるのです。
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次回記事:知性とは何か?④アリストテレス哲学における論証を超えた知のあり方としての能動知性の存在の位置づけ
前回記事:知性とは何か?②ピタゴラスにおける数学的な原理としてのヌースの存在の捉え方
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