カントの批判哲学に基づく知と信の領域の包含関係と知識と認識の領域に対する信仰と道徳の領域の根源的な優越性

前回の記事で書いたように、カントの批判哲学においては、人間の心における知性的な心の働きのあり方は、

理論と認識を司る知性の働きである理論理性と、実践と道徳を司る知性の働きである実践理性という二つの理性の働きのあり方へと区別されたうえで、

両者の理性の働きの根本にある関心や意志といった実践的な心の働きのあり方に基づいて、実践理性の理論理性に対する優越性が示されていくことになるのですが、

こうしたカントの批判哲学における実践理性の理論理性に対する優越性の議論からは、それぞれの理性の働きの探求の対象となる信仰と知識、すなわち、信と知の領域の区分のあり方についても、

単に両者が互いに別々の分野として区分けされていくことになるということ以上のより深い洞察を得ることができると考えられることになります。

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実践理性の理論理性に対する優越性に基づく知と信の領域の間の包含関係

実践理性の理論理性に対する優越性に基づく知と信の領域の間の包含関係

前々回の記事で書いたように、

カントの批判哲学においては、理論理性と実践理性の領域の区分のあり方が画定されていくのに伴って、

それぞれの理性における探求の対象となる領域である信仰と知識、すなわち、信と知の領域についても、両者の間に明確な区分がもたらされていくことになると考えられることになるのですが、

冒頭で述べた実践理性の理論理性に対する優越性についての議論からは、それと同様に、それぞれの理性の探求領域である信と知の領域についても、知識に対する信仰の優越性を示す議論を展開していくことができると考えられることになります。

この場合における実践理性の理論理性に対する優越性とは、

具体的には、

両者の理性の働きの根本に共通する心の働きのあり方として、関心や意志といった実践的な心の働きのあり方が見いだされることによって、

根源的な意味においては、理論理性の働きも実践理性の働きによって基礎づけられていて、実践理性は理論理性の前提や基盤となるような存在として位置づけられることになるということを意味していると考えられることになります。

そして、そういった意味では、

そうした実践理性の対象となる信の領域についても、それは実践理性がその基盤を与えている理論理性の対象となる知の領域に対してより広い基礎的な領域を占めていると考えられ、

後者である知の領域は前者である信の領域の内に位置づけられていることによって基礎づけられる関係にあると捉えることができると考えられることになるのです。

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カントの批判哲学における知の領域に対する信の領域の根源的な優越性

以上のように、

こうしたカントの批判哲学における実践理性の理論理性に対する優越性を示す一連の議論からは、

根源的な意味においては、理論理性の働きが実践理性の働きによって基礎づけられていて、後者は前者の前提や基盤として働いているという意味において、

それぞれの理性における探求の対象として位置づけられることになる知識と信仰、あるいは、認識と道徳の領域についても、

実践理性の対象となる信仰と道徳の領域が、理論理性の対象となる知識と認識の領域を基礎づける基盤として位置づけられることによって、

後者である知識と認識の領域が前者である信仰と道徳の領域に包含されていくことになるという関係が成立していると考えられることになります。

そして、そういった意味では、

カントの主著の一つとして挙げられる1787年出版の『純粋理性批判』第二版の序文における

信仰を容れる場所を得るために、知識を除かねばならなかった。」
(カント『実践理性批判』篠田英雄訳、岩波文庫、43ページ)

というカント自身の言葉に象徴されるような理論理性と実践理性の領域の区分のあり方に基づく、信仰と知識、すなわち、信と知の領域についての明確な区分のあり方においては、

理論理性の対象となる知識の領域とは別に実践理性の対象となる信仰の領域が保持されていくことになるというように、両者が単に並列的な関係において区別されているということだけではなく、

そこでは、人間の生き方といった実践的な意味においては、理論理性の探求の対象となるあらゆる知識や認識のあり方の基盤には、信仰と道徳を探求する実践理性の存在が不可欠な存在として要請されるという

知の領域に対する信の領域の根源的な優越性へとつながる考え方が示されているとも解釈することができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:理論理性と実践理性の違いとは?カント哲学における二つの理性の働きのあり方の定義

前回記事:実践理性が理論理性に優越する理由とは?二つの理性の働きの根本にある関心や意志といった実践的な心の働き

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