宇宙が「等方的」であるとは具体的にどういう意味か?ビッグバン理論に基づく宇宙の等方性の説明

前回の記事で書いたように、現代の宇宙物理学における基本原理の一つである宇宙原理においては、

大局的な観点においては宇宙空間はいたるところで一様的かつ等方的であり、宇宙におけるあらゆる場所は同じ物理法則によって支配されているという原理が示されていると考えられることになるのですが、

今回の記事では、こうした「一様的」「等方的」二つの概念のうちの後者にあたる宇宙における「等方性」という概念の具体的な意味について詳しく考えていきたいと思います。

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物理学における「等方性」の意味と、宇宙が「等方的」であることの意味

まず、

物理学においては、一般的に、「等方性」という概念は、物体や空間における性質方向によって異ならないことを意味する概念として捉えられていくことになります。

したがって、

宇宙における「等方性」という概念についても、それは、宇宙空間の性質や宇宙全体の大局的な構造が観測する地点や方向の違いによって異なることがなく

観測可能な宇宙のうちのどの地点からどの方向を見ても互いにほぼ同じような性質と関係を保った宇宙の姿を観測することができるということを意味する概念として捉えることができると考えられることになります。

そして、さらに言うならば、

こうした宇宙が「等方的」であるという考え方からは、観測可能な宇宙の内部においては、特別な位置や方向といったものはどこにも存在しない

すなわち、宇宙そのものには中心とか端とか区別はなく、どの地点においても互いに同じような位置関係にある宇宙空間が広がっているという主張が導かれていくことになると考えられることになるのです。

赤方偏移における地球と宇宙全体のすべての天体との等方的な関係

そして、

こうした「等方的」な構造を持った宇宙の姿というものは、宇宙物理学における実際の観測データからも見いだしていくことができると考えられ、

例えば、

地球上から太陽系から遠く離れた場所に位置する天体や銀河系の姿を観測すると、それらの天体は、どの方向に位置する天体においても、

地球との距離の遠さに比例する形ですべて一様に赤方偏移(せきほうへんい)していく形で観測されることになります。

赤方偏移とは、ドップラー効果などにおいて有名なように、観測者から遠ざかっていく物体から発せられる光の波長が長くなることによって、

その天体が発している光が本来の光の波長よりも長波長側すなわち赤い色の方にずれた光として観測されるが現象のことを意味する言葉ですが、

このように、

地球上からの全方位に向けた観測において、地球から遠い距離にあるすべての天体が一様に赤方偏移して観測されるということは、

観測可能な宇宙のうちに存在するすべての天体は、地球から一様な関係において遠ざかっているというように、地球と宇宙全体のほかのすべての天体との間には等方的な関係が成立していると捉えることができると考えられることになるのです。

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ビッグバン理論に基づく膨張宇宙論による宇宙の等方性の説明

そして、

こうした地球から観測されるすべての天体がその観測される方向に関わらず等方的に一様に遠ざかっていくように観測されるという現象は、

現代物理学においては、宇宙の誕生138憶年ほど前の大爆発によって引き起こされたとするビッグバン理論に基づく膨張宇宙論によって説明することができると考えられることになります。

例えば、通常の爆発においては、

大きな円形の広場の中心で誰かが何らかの爆発物などを起爆させた場合、その犯人のすぐ近くにいた人物は、爆風の直撃を受けることによって広場の中央にいる爆弾を起爆させた犯人からは急速に遠ざかっていくことになりますが、

それに対して、

その人のすぐ横に別の人物がいた場合、その人物との距離も爆風によって吹き飛ばされる角度が少しは違うため多少は離れていくことにはなりますが、二人ともだいたい同じような方向に吹き飛ばされていくことになるので、

はじめの人物とその横にいた人物との距離は、最初に彼らと同距離に位置していた犯人との距離と比べて、爆発後もだいぶ近い距離にとどまり続けることになると考えられることになります。

このように、

通常の爆発などにおいては、天体同士の距離が観測される方向に関わらず一様に等方的に遠ざかっていくということは、その天体が文字通り宇宙誕生の爆発源となった天体でもない限りおよそあり得ない現象であると考えられることになるのですが、

それに対して、

ビッグバン理論においては、宇宙誕生の大爆発後の宇宙の拡大は、宇宙空間自体が膨張していくということによって説明されていくことになります。

そして、

こうしたビッグバン理論に基づく膨張宇宙論によって宇宙の拡大のあり方を説明していく場合、

宇宙誕生の大爆発の後も、それぞれの天体同士の間に存在する空間一様に膨張していくことによって、

すべての天体は互いの位置関係を同じような状態に保ったまま、一様に等方的に遠ざかっていくということが可能になると考えられることになります。

つまり、そういった意味においては、

こうしたビッグバン理論に基づく宇宙空間の一様な膨張という宇宙の拡大のあり方からは、そうしたすべての天体が互いに対して一様に遠ざかっていくという等方的な関係が示されていくことを通じて、

さらには、

観測可能な宇宙の内部においては、特別な位置や方向といったものはどこにも存在せず、宇宙のうちのどの地点のどの方向を見ても互いにほぼ同じような性質と関係を保った宇宙の姿を観測することができるという

宇宙における「等方性」の仕組みまでもが説明されていくことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:宇宙に中心が存在しない理由とは?①ビックバンの開始地点としての宇宙の中心の定義と特定の場所としての宇宙の中心の不在

前回記事:宇宙が「一様的」であるとは具体的にどういう意味か?宇宙全体の規模におけるエネルギーと物質の分布の均一性と同質性

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