心理カウンセリングと催眠療法と精神分析の違いとは?三つの心理学的な治療法における治療者側の主導的な関与のあり方の違い
うつ病などの精神疾患や、神経症や心身症といった疾患の治療などを含めた患者自身が自らの心の内に抱えている様々な精神的・心理的問題を解決していくために行われる心理学的な治療のあり方としては、
現代においては心理カウンセリングといった手法が最も一般的な治療手段として挙げられることになると考えられることになりますが、
その一方で、こうした治療者側と患者側との言語的なコミュニケーションを通じて行われる心理学的な治療のあり方としては、
心理カウンセリングのほかにも、催眠療法や精神分析といった手法なども挙げることができると考えられることになります。
それでは、こうした催眠療法と精神分析と心理カウンセリングという三つの心理学的な治療のあり方は、互いにどのような点において異なっていると考えられることになるのでしょうか?
催眠療法と精神分析と心理カウンセリングの具体的な特徴とは?
まず、三つの心理学的な治療法のうちのはじめに挙げた
催眠療法(hypnotherapy、ヒプノセラピー)とは、
治療者が催眠法や催眠術と呼ばれる特殊な心理学的技術を用いることによって、患者の意識状態を催眠(hypnosis、ヒプノーシス)と呼ばれる一種の変性意識状態へと導いていくことによって行われる心理学的な治療のあり方として定義されることになり、
こうした催眠療法においては、治療者がそうした一連の心理学的技術を駆使していくことによって、患者の意識を自分自身の心の奥底に存在する潜在意識の深い領域へと誘導していくことになり、
催眠療法士と呼ばれる治療者自身が、そうした患者の潜在意識の領域へと直接的に働きかけていくことによって、患者自身が抱える心理的な問題の解決が図られていくことになると考えられることになります。
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それに対して、その次に挙げた
精神分析(psychoanalysis、サイコアナリシス)とは、
19世紀末から20世紀前半のオーストリアの精神科医であったジークムント・フロイトによって創始された精神分析学と呼ばれる心理学理論に基づいて行われる心理学的な治療のあり方のことを意味する言葉であり、
そうした精神分析においては、前述した催眠療法の場合ほどには、患者自身の心の深い領域へと直接踏み込んでいくことはせずに、
精神分析家と呼ばれる治療者は、自由連想法や夢分析といった間接的な方法を取る形で、患者自身の自発的な発言の中に現れる無意識的に選ばれる言葉の特徴や、患者が見る夢の中に出てくる様々なイメージなどを心理学的に詳しく分析していくことになり、
そうした患者の潜在意識の領域に抑圧されている様々な記憶や感情、思念や葛藤のあり方を読み解いていくことを通じて、神経症やヒステリーといった心身における様々な症状や心理的な問題の解決が図られていくことになると考えられることになります。
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そして、最後に挙げた現代においては最も一般的な心理学的な治療の手法として位置づけられる
心理カウンセリング(psychological counseling、サイコロジカル・カウンセリング)においては、
そうしたカウンセリングを行う側の人物であるカウンセラー(counselor)は、患者に対して一方的に影響を及ぼす治療者というよりは、患者に寄り添う形で良き話し相手となっていく相談員として位置づけられていくことになり、
こうした心理カウンセリングにおいては、相談者は自らの心の内に抱えている様々な悩みや心配事などをカウンセラーに対して自発的に打ち明けていくことになり、
それに対して、カウンセラーは、そうした相談者が打ち明ける様々な話について受容的な態度を示し、場合によってはそれについて適切な助言などを示しながら円滑に話し合いを進めていくことによって、
相談者自身が自発的に自らの精神的・心理的な問題を解決していくことができるように援助していくという形でそうした心理的な問題の解決が図られていくことになると考えられることになるのです。
三つの心理学的な治療法における治療者側の主導的な関与のあり方の違い
そして、以上のようにことを踏まえると、
こうした催眠療法と精神分析と心理カウンセリングという三つの心理学的な治療のあり方の間には、一言でいうと、
患者側の心のあり方の変化に対する治療者側の主導的な関与の度合いという点において大きな違いがあると考えられることになります。
つまり、
催眠療法の場合には、治療者自身が患者の潜在意識の領域へと直接的に働きかけることによって多少強引な形で患者の心の状態の変化が引き起こされていくことになるのに対して、
精神分析の場合には、自由連想法や夢分析といった間接的な方法が用いられることによって、そうした患者の潜在意識の領域に対する心理学的な分析が進められていくことになり、
それに対して、
心理カウンセリングにおいては、カウンセラーの側は基本的にはそうした相談者の側の潜在意識の領域へと主体的に介入していくこと自体を試みずに
受容的な態度や適切な助言を交えたカウンセラーと相談者の間の真摯な話し合いを通じて、相談者自身が自らの考えによって自分自身の心理的な問題を解決していくための援助が行われていくことになるというように、
一般的に、
催眠療法>精神分析>心理カウンセリングという順で、患者側の心のあり方の変化に対する治療者側の主導的な関与の度合いが小さくなっていく一方で、比較的対等な立場から患者の心に寄り添っていく援助者や相談員としての役割の側面が強くなっていくといった点に、
こうした三つの心理学的な治療の間の主要な特徴の違いを見いだすことができると考えられることになるのです。
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