基礎心理学と実験心理学と応用心理学の違いとは?三つの心理学の分類における学問分野を区分する際の基準と定義のまとめ
以前にも「実験心理学と応用心理学の違い」や「基礎心理学と応用心理学の違い」といった一連の記事で考察してきたように、
心理学におけるそれぞれの研究分野を分ける最も大きな学問分野の区分のあり方としては、
一般的には、基礎心理学と実験心理学そして応用心理学といった学問分野の区分のあり方が用いられることになると考えられるのですが、
今回の記事では、こうした心理学における三つの学問分野の区分のあり方の間には、互いにどのような関係が成立していると考えられるのか?
ということについて改めてまとめて考えていきたいと思います。
基礎心理学と実験心理学と応用心理学という学問分野の定義のまとめ
まず、はじめに挙げた
基礎心理学とは、認知心理学や知覚心理学などの心理学の分野に代表されるように、
人間の心のあり方の基礎となる普遍的な心理構造のあり方を探究する学問分野の区分のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになります。
・・・
それに対して、次に挙げた
実験心理学とは、「実験心理学の父」とも称されるドイツの生理学者であるブントが唱えた内観法と呼ばれる自己観察の手法に代表されるように、
人間や動物における様々な心理現象を、実験室などの人為的に一定の条件が整えられた研究施設などにおいて科学的で客観的な実験手法を用いることによって理論的に解明していく心理学の学問分野の区分のことを指す言葉として定義することができると考えられることになります。
・・・
そして、それに対して、最後に挙げた
応用心理学とは、臨床心理学や教育心理学あるいはスポーツ心理学などに代表されるように、
前述した基礎心理学や実験心理学といった心理学の分野において得られた心理学的な研究の成果を、臨床や教育あるいはスポーツの分野といった様々な実用的な分野へと応用していくことによって実践的に役立てていく心理学の学問分野の区分のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになるのです。
基礎心理学と実験心理学における学問分野を区分する際の基準の違いと、三つの心理学の区分のそれぞれに分類される具体的な心理学の分野の種類
それでは、
こうした基礎心理学と実験心理学と応用心理学というそれぞれの学問分野同士の間には具体的にどのような関係性が成立していると考えられるのか?ということについてですが、
まず、
基礎心理学と応用心理学という二つの区分のあり方については、
基礎心理学において得られた人間の心の普遍的な構造についての知見が、応用心理学における臨床や教育といった特定の分野における実践的な研究へとつなげられていくことになるという研究対象の違いといった観点から両者の間の学問分野の区分が行われているのに対して、
実験心理学と応用心理学という二つの区分のあり方については、
実験心理学における人為的に条件が整えられた実験下で行われた厳密な研究に基づく知見が、応用心理学における実際の社会の場などで観察される実践的な研究へとつなげられていくことになるという研究手法の違いといった観点から両者の間の学問分野の区分がなされていると考えられることになります。
そして、
こうした心理学における学問分野の区分のあり方においては、基礎心理学と実験心理学の両者は、どちらも応用心理学という学問分野の区分の対義語として位置づけられていくことになるので、
結果として、こうした基礎心理学と実験心理学の両者には、だいたい同じような心理学の分野が含まれることになると考えられるのですが、
その一方で、
こうした基礎心理学と実験心理学の両者の間には、前者が研究対象の違いに基づく区分のあり方であるのに対して、後者は研究手法の違いに基づく区分のあり方であるというように、学問分野を区分していく際の基準のあり方に大きな違いがあると考えられることになります。
したがって、より厳密に言うならば、
例えば、
基礎心理学の分野のうちには、認知心理学、知覚心理学、比較心理学、発達心理学、人格心理学、数理心理学、生理心理学、進化心理学、文化心理学、社会心理学、異常心理学、深層心理学といった心理学の学問分野の種類が含まれることになるのですが、
こうした基礎心理学に含まれる学問分野のうち、
文化心理学や社会心理学といった分野については、そうした研究を現実の社会や現地における文化についての詳細な観察を中心とすることなしに、人為的に条件の整えられた実験室の中でのみ行っていくことは不可能であると考えられるので、
こうした心理学の分野については、厳密な意味においては、それは人間の心の普遍的な構造を解き明かそうとする基礎心理学の内には含まれるものの、実験心理学の内には含まれることのない心理学の分野として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、それに対して、
こうした基礎心理学と実験心理学と呼ばれる学問分野の区分の両者の対義語にあたる応用心理学の分野のうちには、以前にも述べたように、
臨床心理学、教育心理学、学校心理学、産業心理学、医療心理学、環境心理学、政治心理学、宗教心理学、軍事心理学、犯罪心理学、スポーツ心理学、音楽心理学、災害心理学、動物心理学、家族心理学といった
そのほかの多種多様な心理学の学問分野が含まれることになると考えられることになるのです。
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