超心理学(パラサイコロジー)とは何か?ギリシア語における「パラ」の意味と日本語における「超」のニュアンスの違い
超心理学とは、現在の科学ではいまだ解明されていない超常的な心理現象や精神現象を探究する心理学の分野のことを意味する言葉であり、
一般的には、テレパシー、予知、透視、念力といった超自然的な能力の存在についての研究がこうした超心理学の研究対象として位置づけられるほか、
広義においては、臨死体験や幽体離脱、魂の生まれ変わりや心霊現象などといった超常現象についての研究などもこうした超心理学の分野の内に含まれることになります。
そして、こうした超心理学という言葉自体は、英語におけるparapsychology(パラサイコロジー)という単語の日本語訳にあたる言葉ということになるのですが、
本来、こうした英語のparapsychology(パラサイコロジー)という単語に用いられている接頭辞であるpara(パラ)という言葉は、
「超心理学」という日本語において用いられている「超」という言葉の一般的な意味とは、かなり異なったニュアンスを持つ言葉であると考えられることになります。
19世紀のドイツの心理学者デソワールによる新たな心理学の分野の命名
まず、
こうした日本語における「超心理学」、あるいは、英語におけるparapsychology(パラサイコロジー)という言葉によって示されるような概念がはじめて用いられたのは、
19世紀後半のドイツの心理学者であったマックス・デソワール(Max Dessoir、1867年~1947年)が自らの論文の中で、
通常の状態における一般的な人間の心のあり方を研究する通常心理学の領域にも、神経症や精神病患者などの病的な状態にある人間の心のあり方を研究する異常心理学の領域にも属さない第三の心理学の探究分野のあり方を示す言葉として、
ドイツ語において、parapsychologie(パラプスュヒョロギー)という新たな用語を用いたのがそのはじまりであったと考えられることになります。
そして、
こうしたドイツ語におけるparapsychologie、そして、その英訳にあたるparapsychologyという言葉に含まれているparaという単語は、もともとギリシア語に由来する言葉であり、
ギリシア語において、para(パラ)とは、「~そばに」「~に並行して」といった意味を表す言葉であったと考えられることになるのです。
ギリシア語における「パラ」の多義的な意味と、通常の心理学とは決して交わることのない並進的な研究分野のことを示す「超心理学」の意味
例えば、英語においても、
parallel world(パラレルワールド)といえば、それは現実における我々の世界とは異なる次元において並行して存在する別の世界のことを意味することになりますが、
こうしたギリシア語における「平行」や「隣接」を意味するpara(パラ)という言葉からはさらに派生して、「超過」や「錯誤」、「不正」や「疑似」といった様々な意味が生じていくことになります。
例えば、英語において、
paranoia(パラノイア)とは、日本語では偏執病(へんしゅうびょう)とも呼ばれる誇大妄想や被害妄想などを特徴とする精神疾患のことを意味することになりますが、
こうしたparanoiaという言葉は、ギリシア語において「心」のことを意味するnoos(ノース)とpara(パラ)とが結びついてできた言葉であり、
この場合のギリシア語におけるpara(パラ)とは、妄想に取りつかれることによって人間の心が異常をきたしてしまっている状態、すなわち、「狂気」や「錯誤」といった意味で、こうしたpara(パラ)という言葉が用いられていると考えられることになるのです。
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以上のように、
日本語における超心理学という言葉のもととなっている英語におけるparapsychology(パラサイコロジー)や、
さらにそのもととなった原語にあたるドイツ語におけるparapsychologie(パラプスュヒョロギー)という言葉におけるpara(パラ)という言葉は、
ギリシア語においては、「平行」や「隣接」さらには「超過」や「錯誤」、「不正」や「疑似」や「狂気」といった様々な意味を表す多義的な言葉であると考えられることになります。
そして、そういった意味においては、
こうした超心理学(パラサイコロジー)という言葉は、
その言葉自体のもともとの意味においては、単にそれが通常の心理学の領域を「超えた」新たな研究分野についての探究を行う学問のあり方を意味しているというだけではなく、
そこには、それが通常の心理学における探究の方向性とは決して交わることのない、そうした通常の意味における科学的で実証的な学問のあり方とは異なるそれとは並進的な別の領域についての探究を行う研究分野であるということや、
場合によっては、それが、学問の範疇を超えた疑似科学や、あるいはある種の錯誤や狂気へもとつながりうるような危険性をはらんだ微妙で不確かな研究領域についての探究のあり方を示す言葉であるということを暗に示しているとも捉えることができると考えられることになるのです。
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