心理学と超心理学の違いとは?探究の対象と探究の方法のあり方の違いに基づく人間の理性の越権行為の危険性についての示唆
前回の記事で書いたように、超心理学(パラサイコロジー)という言葉は、その言葉のもともとの由来となったギリシア語の意味においては、
それが単に、通常の心理学の領域を「超えた」新たな研究分野についての探究を行う学問のあり方のことを意味しているだけではなく、
そこには、それが通常の心理学における探究の方向性とは決して交わることのない、通常の実証的で科学的な学問のあり方とは並進的な関係にある探究のあり方のことを示す言葉であるということを示唆する表現が含まれると考えられることになるのですが、
それでは、一般的な意味における心理学と、こうした超心理学と呼ばれる学問探究のあり方の間には、より具体的にはどのような点において違いが存在すると考えられることになるのでしょうか?
心理学と超心理学における探究の対象と探究の方法のあり方の違い
まず、こうした心理学と超心理学の間に存在する具体的な学問探究のあり方の違いとしては、
通常の意味における心理学においては、認知科学における記憶と学習の関係の研究や、臨床心理学における精神障害や心身症の治療法の研究などのように、
基本的には、同一の条件下で繰り返し検証を行っていく実験や、実際の臨床の場における実証的な治療記録などの集積を通じて、反証可能性を十分に満たす形で学問探究が進められていくことになるのに対して、
超心理学においては、テレパシーや念力、あるいは、広義における超心理学の研究対象の内に含まれる魂の生まれ変わりや心霊現象などのように、
そうした研究対象についての探究においては、その成果が被験者が持つ超常的な能力の発現のあり方などに依存するため、被験者の心理状態や体調などによって実験結果が大きく変動していくことになり、安定した同一の条件下で繰り返し検証を行っていくことが難しいと考えられるほか、
そもそも、そうした探究の対象となる存在自体が不確かなところもあり、その実在性そのものにも懐疑的な批判を呈することができると考えられることになります。
このように、
通常の意味における心理学と超心理学との間には、そうした心理学的な探究における
探究の対象となる存在自体についての実在性の確かさと、学問探求の探究の方法における実証性と反証可能性の高さの違いという二つの点において、
大きな違いを見いだすことができると考えられることになるのです。
超心理学における人間の理性の越権行為の危険性についての示唆
以上のように、
こうした超心理学と呼ばれる新たな学問分野においては、それが、テレパシー、予知、透視、念力といった超自然的な能力や、広義においては、臨死体験や幽体離脱、魂の生まれ変わりや心霊現象などといった超常現象などといった、
人間の理性や科学的思考によって実証的な検証や反証可能性を十分に満たすような論証を行うことが極めて困難な対象へと学問的な研究分野を拡大していくことによって、
通常の心理学を含む実証的で科学的な学問分野における探究のあり方との間に大きな乖離が生じていくことになってしまったと考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした通常の意味における心理学と超心理学における具体的な学問探究のあり方の違いについて着目した場合、超心理学という言葉に含まれている「超」とは、
通常の心理学の領域を「超えた」新たな研究分野についての探究を行う学問のあり方のことを意味すると同時に、
それは、人間の知の探究のあり方が、その理性の光によって照らし出すことが可能な本来の領分を「超えて」どこまでも先に進み出していってしまうという
人間の理性における越権行為の危険性のことを示唆するといった超心理学における負の側面についても指し示している言葉として捉えることができると考えられることになるのです。
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次回記事:ユングの心理学と超心理学の関係とは?シンクロニシティとテレパシーとの関連性と深層心理学の学問探究のあり方との共通点
前回記事:超心理学(パラサイコロジー)とは何か?ギリシア語における「パラ」の意味と日本語における「超」のニュアンスの違い
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