心気症(ヒポコンドリー)とは何か?古代ギリシア語における語源と「憂うつ」を意味するメランコリーとの関係

前回書いたように、心の病と体の病の境界領域に位置する疾患や症状のあり方としては、神経症心身症に分類される様々な疾患の種類が挙げられることになると考えられることになるのですが、

今回は、こうした二つの疾患や症状の分類のあり方のうちの前者である神経症の下位分類に位置づけられる心気症(ヒポコンドリー)と呼ばれる症状の分類あり方について、

それが具体的にどのような特徴を持った症状のあり方として定義されることになるのか?

そして、そもそも、そうした一連の症状のあり方のことを指して心気症、すなわち、ヒポコンドリー(hypochondriaという言葉が用いられるようになった大本の由来はどこにあるのか?といった観点から詳しく考えていきたいと思います。

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「心気症」の定義とその具体的な症状の特徴とは?

まず、冒頭でも述べたように、

心気症とは、心理的な原因によって引き起こされる心身の様々な機能障害のことを意味する概念である神経症の下位分類に位置する症状のあり方として捉えることができると考えられることになるのですが、

心気症(ヒポコンドリー、hypochondriaとは、そうした神経症のなかでも、

特に、客観的にはまったく身体的な異常が認められないにも関わらず、頭痛めまい身体的な痛み脱力感といった様々な主観的な身体的苦痛を強く感じるようになっている状態、

さらには、そうした自分自身の身体感覚の異常に強くとらわれることによって、医師の診察や精密検査などを繰り返し受けた後でも納得することができずに、自分が原因不明の重病にかかっているのではないか、などと深く思い悩んでしまう心理状態のことを指してこうした概念が用いられることになると考えられることになります。

つまり、一言でいうと、

心気症とは、物理的な病変や身体的な疾患を伴わない身体感覚の異常に強くとらわれて自分が重大な病気にかかっていると思い込むことによって陥る強い不安感や抑うつ状態のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになるのです。

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古代ギリシア語におけるヒポコンドリアの意味とメランコリーとの関係

それでは、次に、

こうした症状のあり方のことを指して、心気症と呼ばれる言葉が用いられるようになった具体的な由来についてですが、

上記の「心気症」という言葉の英訳にあたる英語のhypochondria(ヒポコンドリア)という単語は、

もともと、古代ギリシア語において胸骨の周囲にある軟骨部分の下の部位、すなわち、胸骨のすぐ下に位置するちょうどみぞおちあたりの上腹部のことを意味する言葉であったと考えられ、

古代ギリシア時代の医学においては、人間の心の内にふとした拍子にわき起こる憂うつの感情や不安感といったものは、身体的には胸の下のあたりから染み出すような形で広がっていくと考えられていたため、

そうしたことが大本の語源となって、医学用語としての心気症(ヒポコンドリー)という言葉が形づくられていったと考えられることになります。

ちなみに、

英語で「憂うつ」を意味するmelancholy(メランコリー)という言葉は、もともと、ギリシア語において「黒い」を意味するmelan(メラン)と、「胆汁」を意味するchole(コレ)が結びつくことによってできた言葉ということになるですが、

人間の体内において胆汁を分泌する器官である胆のうは、肝臓の下面、すなわち、ちょうどの右の胸の肋骨の下あたりの右上腹部に位置することになるので、

そういった意味でも、そうした「憂うつ」の感情の源となる何かがあると考えられていた「胸骨の下」の場所のことを意味するhypochondria(ヒポコンドリア)という言葉が、

自分が重大な病気にかかっているのではないかと思い込んで強い不安感や憂うつな心の状態を抱え込むことになる「心気症」のことを意味する医学用語として用いられるようになっていったと考えられることになるのです。

・・・

次回記事:心身症と心気症の違いとは?胃潰瘍や過敏性腸症候群は心身症と心気症のどちらに分類されることになるのか?

前回記事:神経症と心身症の違いとは?両者に分類される具体的な疾患の種類と心の病と体の病の中間に位置する症状の分類のあり方

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