心理学における「抑圧」の定義と「現状否認」や「隔離」と呼ばれる他の類似する防衛機制のあり方との関係とは?防衛機制とは何か?③

前回書いたように、人間社会において生じる様々なストレスに対処して現実の状況に適応するめに用いられる防衛機制と呼ばれる自我の無意識的な防御反応のあり方は、

精神分析学の祖として有名な心理学者であるフロイトの娘にあたるアンナ・フロイトによって、

抑圧・退行・反動形成・隔離・打ち消し・投影・取り入れ・自己自身への向け換え・逆転・昇華と置き換えという全部で十種類の防衛機制のあり方へと分類されていくことになるのですが、

こうした防衛機制と呼ばれる自我の様々な防衛反応のあり方のなかでも、精神分析学の祖であるフロイト自身が第一に挙げている最も代表的な防衛機制のあり方としては、

抑圧と呼ばれる心の働きが挙げられることになると考えられることになります。

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心理学における「抑圧」の定義と意識や無意識や自我といった人間の心の階層構造におけるそれぞれの心の領域との関係性

以前に「意識と前意識と無意識の三層構造における抑圧と検閲とリビドーの関係」などの記事において詳しく考察したように、

人間の心の内に存在する観念や記憶や情動といった様々な心的要素は、そのすべてが意識や自我によって自覚可能な心の表層領域へとのぼってくることができるわけではなく、

そうした意識や自我にとって受け入れがたい観念や記憶や情動の多くは、抑圧と呼ばれる心の働きによって、無意識の領域の内へと閉じ込められてしまうことになります。

そして、

こうした抑圧と呼ばれる心の働きは、意識や自我にとって有害な心的要素から自我自身を守る無意識的なプロセスにおいて進行していくことになるので、

それは、防衛機制(defence mechanismと呼ばれる自我の無意識的な防御反応の一つの種類として捉えられる心の働きとしても位置づけられることになると考えられることになります。

そして、前回も書いたように、

こうした防衛機制と呼ばれる自我の機能の一つとして捉えられた抑圧(Repressionと呼ばれる心の働きは、

不快な感情や記憶、実現困難な欲求などを無意識の領域の内に押し込めて意識しないようにすること意味する概念として捉えられることになるのですが、

そういった意味では、こうした心理学における「抑圧」と呼ばれる概念は、意識や無意識や自我といった人間の心の階層構造におけるそれぞれの領域との関係性においては、

現実の様々な社会状況のなかで自らの心の内に生じる自我にとって有害な観念や感情を無意識の領域の内へと押し戻してふたをしてしまうことによって、

直接的に意識の領域から排除してしまう働きを担う自我の機能のあり方として定義することができると考えられることになるのです。

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「抑圧」と「現状否認」や「隔離」と呼ばれる他の類似する防衛機制のあり方との関係とは?

そして、通常の場合、

こうした抑圧と呼ばれる心の働きにおいては、抑圧を通じて意識の領域から排除されることになる対象は、不快な過去の記憶や思念悪しき感情や衝動といった自らの心の内にすでに存在している心的要素であると考えられることになるのですが、

それ以外にも、例えば、

目の前で起きている悲惨な出来事などに耐え切れずに、そうした現在において実際に進行している状況自体を一切受け入れようとせずに心を閉ざしてしまうことによって、そうした現実の状況についての認識自体を意識の領域から排除してしまうような場合には、

それは、現状否認と呼ばれる一般的な抑圧とは少し異なった特徴を持つ心の働きとして捉えられることになります。

また、

自らの人格にとって受け入れがたい状況に直面した時や、そうした行動をとらざるを得ないような心理的ストレスがあまりに高い状況に置かれた場合などには、

人は、自らの認識と情動、あるいは、行動と感情といったものを互いに切り離し、そうした自分の心が耐えきれないような感情や情動といった心的要素の一部を隔離して意識の領域から排除することによって、自らの人格を守ろうとする心の働きが見られる場合がありますが、

こうした「現状否認」「隔離」といった心の働きも、自分自身の心を守ろうとする防衛機制と呼ばれる自我の無意識的な防御反応のあり方の一つとして位置づけられることになると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

「抑圧」と呼ばれる心の働きは、防衛機制と呼ばれる自我の様々な防衛反応のあり方のなかでも、精神分析学の祖であるフロイト自身が第一に挙げている最も代表的な防衛機制のあり方として位置づけられることになり、

こうした心理学における「抑圧」と呼ばれる防衛機制のあり方は、一言でいうと、

自らの心の内に生じる有害な観念や感情を無意識の領域の内へと押し戻してふたをしてしまうことによって、直接的に意識の領域から排除してしまう自我の防衛反応のあり方として定義することができると考えられることになります。

そして、

こうした「抑圧」と呼ばれる防衛機制のあり方は、

現実の状況についての認識自体を意識から排除してしまうことによって自らの心を守ろうとする「現状否認」と呼ばれる防衛機制の種類や、

自らの人格が耐えきれないような感情や情動といった心的要素の一部を分離して排除することによって自分の心を守ろうとする「隔離」と呼ばれる防衛機制の種類などとも深い関わりのある心の働きのあり方として位置づけられることになると考えられることになるのですが、

こうした「抑圧」やそれに類する心の働きをもってしても、自我にとって不都合な感情や衝動といった様々な心的要素を直接的に意識の領域から排除してしまうことが困難な場合や、

そうした不都合な心的要素をただ無意識の領域に押し込んでふたをしてしまうという単純な処理方法よりもより適切で有意義な対処方法がある場合には、

さらにそこから、退行反動形成投射昇華といったその他のより複雑な防衛機制の種類が派生していくことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:退行とは何か?心理学における病的退行と創造的退行との違いとは?防衛機制とは何か?④

前回記事:アンナ・フロイトによる防衛機制の十種類の分類とそれぞれの概念の具体的な定義とは?防衛機制とは何か?②

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