無意識の領域の大きさが抑圧を受けることで増大する仕組みとは?人間の心における抑圧の強さと意識と無意識の領域の関係

前回書いたように、フロイトの精神分析学における前期の心理学理論においては、人間の心の構造が意識前意識無意識と呼ばれる三つの階層へと区分して捉えられたうえで、

こうした意識無意識と呼ばれる二つの心の領域は、両者の間の境界領域にあたる前意識の部分を介した抑圧と検閲と呼ばれる二つの心の働きによって、互いに深く結びつけられていくことになると考えられることになります。

そして、

こうした二つの心の働きの内の前者にあたる抑圧と呼ばれる心の働きは、個々の観念や情動が意識と無意識のどちらの領域に属することになるのかという心的要素の位置づけのあり方に関わるだけではなく、

それは、人間の心の内における意識や無意識といった心の領域自体の大きさのあり方とも深い関わりのある心の働きであるとも考えられることになるのです。

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海の上に浮かぶ一つの丸いビーチボールとしての心のイメージとその内部における意識・無意識・前意識の位置づけ

詳しくは前回の記事で書いたように、意識と無意識の境界に存在する心の番人としての役割を担うの前意識と呼ばれる心の領域においては、

意識にとって有害な観念や記憶、情動などを無意識の領域へと押しとどめる抑圧と呼ばれる心の働きと、

そうした抑圧の力によって押しとどめられた観念や情動の一部をよりマイルドな形へと変化させることによって意識の領域へと通過させてガス抜きを行う検閲と呼ばれる心の働きが機能していくことになると考えられることになるのですが、

こうした意識と前意識と無意識という三つの心の領域のあり方と、その全体において働くこうした抑圧と呼ばれる心の働きとの具体的な対応関係のあり方は、

以下のような図によって示されるような関係として捉えていくことができると考えられることになります。

人間の心における抑圧の強さと無意識の領域の大きさの関係

意識や無意識といった心の領域のあり方は、一般的には、海に浮かぶ一つの氷山のようなイメージとして示されていることが多いと考えられますが、

ここでは、より分かりやすい形での説明を試みるために、意識前意識無意識といった心の領域のすべてを合わせた人間の心全体一つの球やボールのようなものとして捉えたうえで、

そうした一つの球となった心がビーチボールのように海の上にプカプカと浮かんでいるような状態をイメージしていみることにします。

そうすると、

空から目視することができる海上に浮かんでいる部分が、人間が自分自身で自覚することができる心の領域、すなわち、意識の領域の部分であるのに対して、

空からは目視することができない水面下に沈んでいる部分は、自分自身では自覚することができない心の領域、すなわち、無意識の領域の部分に対応することになり、

それに対して、

そうした心のビーチボールが波に揺られて見え隠れしている海面の境界線の部分前意識の領域にあたる部分として捉えられることになります。

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人間の心における抑圧の強さと無意識の領域の大きさの関係

そして、

こうした心のビーチボールは、無意識の内に抱え込んでいる耐え難い記憶や悪しき情動などの負の要素が増大していくことによって、心全体に対して加わる抑圧の力が強くなっていくと、それに伴って、心全体が水面下へと押し下げられていく力が働いてしまうことになり、

ちょうど前掲した図における右側の部分において示したように、

上方から強い抑圧の力が加えられた心のビーチボールにおいては、ボール全体が水面下へと大きく押し下げられてしまったことに対応して、その波際の境界領域の部分にあたる前意識の部分が相対的に上方へと移動していってしまうことになり、

それによって、水面上に残された意識の部分が縮小し、それに対して、水面下の無意識の部分が大きく拡張していくという心の領域の大きさ自体の変化が生じていくことになると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

人間の心の内における抑圧と呼ばれる心の働きと、意識や無意識といった心の領域の大きさとの対応関係については、

無意識の領域に押し込められる観念や情動の量が増大していくことによって、心全体に対して加わる抑圧の力が強くなれば強くなるほど

個人の心の内部における無意識の領域がどんどん押し広げられていってしまうことになると考えられ、

さらには、それに伴って、

自らの意志によって統制することが可能な意識の領域がどんどん狭められていってしまうことによって、

精神状態の悪化神経症の発症といった人間の心にとって不都合な様々な現象が引き起こされるきっかけが生み出されていってしまうことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:自我と超自我とエスという人間の心の三つの部分の具体的な特徴と性質とは?フロイトの精神分析学③、深層心理学とは何か?⑤

前回記事:前意識とは何か?③意識と無意識の境界に存在する心の番人としての前意識の位置づけ

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