心理歴史学は自然科学と社会科学のどちらに分類されるべき学問分野なのか?心理歴史学とは何か?④

前々回前回の記事で書いてきたように、

アイザック・アシモフ「ファウンデーションシリーズ」(銀河帝国興亡史)において登場する心理歴史学(サイコ・ヒストリー)は、

物理学と社会学という二つの学問分野における概念の両者が取り入れられることによって創り上げられた新たな学問体系のあり方をしていると考えられることになるのですが、

それでは、こうした心理歴史学と呼ばれる学問は、より厳密な意味においては、物理学が属する学問の系統と、社会学が属する学問の系統、

すなわち、自然科学と社会科学のどちらに分類されるべき学問体系のあり方をしていると考えられることになるのでしょうか?

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「ファウンデーションシリーズ」の冒頭部分における自然科学的な色彩の強い学問としての心理歴史学の位置づけ

冒頭でも述べた通り、

心理歴史学は、それが物理学と社会学、すなわち、自然科学と社会科学という二つの学問分野にまたがる二つの原理を基礎として打ち立てられている学問体系であるとされている以上、

それは、そのまま単純に、自然科学と社会科学の両方が融合された学問体系であると規定することも可能であると考えられるのですが、

こうした心理歴史学と呼ばれる学問のあり方は、より厳密な意味においては、

物語全体の流れのなかにおいて、

自然科学的な学問のあり方から、より社会科学的な要素の強い学問のあり方へと、その位置づけのあり方が徐々にシフトしていっているとも解釈することができると考えられることになります。

まず、

「ファウンデーションシリーズ」の物語がはじまっていく当初の段階においては、こうした心理歴史学と呼ばれる学問体系を確立した学者であるハリ・セルダン数学者であるとされていて、

彼のもとで教えを受け、心理歴史学を後世へと伝えていく中心となる役割を担う人物となったハリ・セルダンの弟子にあたるガール・ドルニックも、数学者であると同時に、流星などの小天体の軌道予測の力学に関する論文で学位を取った物理学者でもあるとされているように、

心理歴史学と呼ばれる学問は、数学や物理学といった理数系の学問という、かなり自然科学的な色彩の強い要素を基盤とする学問体系として位置づけられていると考えられることになります。

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第二ファウンデーションの人々が語る社会科学者としてのハリ・セルダンと心理歴史学の姿

それに対して、

こうした「ファウンデーションシリーズ」の後半部分においては、物語の流れは、

第一ファウンデーションを中心とする自然科学者たちの集団と、第二ファウンデーションを中心とする社会科学者たちの集団との間でくり広げられる文明の覇権をめぐる争いへとその様相が大きく変化していくことになるのですが、

そうしたなかで、例えば、

「ファウンデーションシリーズ」三部作の最終巻にあたる『銀河帝国の興亡3(第二ファウンデーション、Second Foundationの終幕の場面においては、

自然科学者たちの世界である第二ファウンデーションの人々に対して隠されてきた第二ファウンデーションの真実の所在地の場所がついに明らかにされていくなかで、

以下のような形で、心理歴史学とその創始者であるハリ・セルダンという人物の自然科学と社会科学という二つの学問分野の間における明確な位置づけのあり方が示されていくことになります。

・・・

…しかし、それはとるに足らないものだ。偶然でお門違いの解決なのだ。もし、疑問をもった君が、ハリ・セルダンは社会科学者であって、物理学者ではなかったことを思い出し、それに応じて思考方法を調整すれば、すぐに解決に到達できたのだ。

社会科学者にとって「相反する両端」とは何を意味したはずであろうか?地図の上での相反する両端か?もちろん、ちがう、それは機械的な解釈にすぎない。

<第二ファウンデーション>は外縁星域にあったが、そこでは本来の<帝国>はもっとも弱く、文明の影響はもっとも少なく、富と文化はないも同然であった。

そして<銀河系>の社会的な反対の端はどこにあるだろうか?もちろん、本来の<帝国>がもっとも強力で、文明の影響がもっとも大きく、富と文化がもっとも強固に存在する場所であった。

ここだ!中央だ!トランター、すなわちセルダン時代の<帝国>の首都だ!

(アイザック・アシモフ著、厚木淳訳『銀河帝国の興亡3』、創元推理文庫、360ページ。)

・・・

つまり、

こうした「ファウンデーションシリーズ」三部作の最終巻にあたる作品のなかでは、ハリ・セルダンと彼が確立した学問である心理歴史学と呼ばれる学問体系の位置づけのあり方は、

ハリ・セルダンが築き上げた心理歴史学の流れを受け継いできた第二ファウンデーションの人々の視点から、社会科学に属する学問分野として明確に位置づけ直されていると考えられることになります。

そして、以上のように、

アシモフの「ファウンデーションシリーズ」における物語全体の流れにおいては、

こうした心理歴史学と呼ばれる学問のあり方は、数学や物理学といった自然科学的な色彩の強い学問のあり方から第二ファウンデーションを中心とする社会科学的な学問のあり方へと、徐々にその中心となる性質のあり方に変化が見られていくことになると考えられることになり、

そうした数学や物理学といった自然科学的な学問から、社会学や心理学といった社会科学的な学問への変遷の流れのなかで、

こうした自然科学と社会科学の両方が融合された新たな学問体系としての心理歴史学の存在を捉えていくことができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:心理歴史学と歴史心理学の違いとは?現実の歴史学における心性史との間の共通点と相違点、心理歴史学とは何か?⑤

前回記事:ハリ・セルダンの心理歴史学における第二原理と社会学における観測効果との関係とは?、心理歴史学とは何か?③

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