永遠(エターニティ)の終りと無限(インフィニティ)の始まり、アシモフの『永遠の終り』における銀河帝国興亡史への布石

前回書いたように、アイザック・アシモフ作のSF小説である『永遠の終り』The End of Eternity終幕の場面においては、

時間の流れをも支配する力を手に入れた永遠人(エターナル)と呼ばれる人々が、あらゆる時代に生きるすべての人類にとっての最大多数の最大幸福を限りなく実現していくために築き上げてきた永遠の秩序と統制のシステムによって、

かえって、人間にとっての自由と可能性の広がりの道が閉ざされ種族としての人類の滅亡を早めてしまうことにつながっていってしまうというジレンマが提示されていくことになります。

そして、

こうした永遠人たちの手によってもたらされる人類の終局をもたらす事態を回避するために、彼らの計画を止めようとしていた未来人の女性であるノイエスは、

永遠人のうちの一人であり、この物語の主人公でもあるハーラン自身の手によって、こうした「永遠(エターニティ)」と呼ばれる機関への幕引きがもたらされるように導くために、以下のような言葉によって、彼の説得を試みていくことになります。

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ノイエスが語る永遠人のいない多様な価値に満たされた自由な世界

・・・

もしも<永遠(エターニティ)>なるものが最初から設立されなかったとしたらどうでしょう?…

時間工学に費やされたエネルギーは、かわりに原子物理学にふりむけられることになります。<永遠(エターニティ)>は実現しなかったかもしれませんが、かわりに恒星間飛行が実現したでしょう

人類は、現在の<現実>におけるよりも、十万世紀以上も早く星々に到達していたでしょう。そのころなら星々にはまだ先住者がなく、人類は銀河系全域に根をおろすことができたでしょう。…

人間はたった一つの世界ではなく、百万もの、十億もの世界の王になれたはずなのです。わたしたちは無限の世界をこの手におさめられたはずなのです

そのひとつひとつが、それぞれ独自の<世紀>のひろがりを、独自の価値を、独自の環境のなかに独自の方法で幸福を追求するチャンスを、持てたことでしょう。

幸福には多くの種類があります、善には多くの種類があります。無障のバラエティが……。それが人類の<基本状態>なのです。」

(アイザック・アシモフ著、深町真理子訳『永遠の終り』、ハヤカワ文庫、327ページ。)

・・・

つまり、

『永遠の終わり』The End of Eternityにおける上記の場面において語られる、以上のようなノイエスが語る言葉においては、

こうした「永遠(エターニティ)」が築き上げた現状の価値観に基づく秩序を維持することのみに捕らわれた永遠の秩序と統制のシステムを放棄することによって、

人類はその代わりに、銀河系全域、そして、果てしなき宇宙全体へと広がる無限のフロンティアを獲得し、

そうした無限の世界の内で、無障のバラエティ、すなわち、いかなる妨げもない多様な価値に満たされた自由な世界を築き上げていくことができるという

その後のアシモフの「銀河帝国興亡史」の続編にあたる『ファウンデーションの彼方へ』Foundation’s Edgeにおける自由と秩序と生命の三つの価値をめぐる論争とつながっていくような新たな思想が示されていると考えられることになるのです。

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<永遠(エターニティ)>の終りと<無限(インフィニティ)>の始まり

そして、

こうしたノイエスによる力強い説得を受けたこの物語の主人公であるハーランは、最終的には、彼女の言葉にしたがって、

<永遠(エターニティ)>を保持するために必要な時間の円環を閉じる作業を行わずに、それが消滅していくのにまかせる道を選び取ることになるのですが、

そのようななか、この物語は、以下のような結びの言葉によって、その最後の結末を迎えることになります。

・・・

終わりが、<永遠(エターニティ)>の最終的な終末が到来した

――そして<無限(インフィニティ)>の始まりが

(アイザック・アシモフ『永遠の終り』、335~336ページ。)

・・・

そして、以上のように、

アイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズのスピンオフ的な作品として位置づけられるSF小説である『永遠の終わり』は、

永遠人と呼ばれる人々が築き上げてきた空虚な永遠の時間が放棄される代わりに、自由と可能性に満ちた無限の空間を手にすることによって、人類が銀河系全域と広がる無限のフロンティアを獲得していくことになるという

アシモフの「銀河帝国興亡史」の本編へとつながるような布石となる物語の展開のあり方が示されていくなかで、その終幕を迎えることになるのです。

・・・

次回記事アシモフの銀河帝国興亡史の根底ある永遠と無限をめぐる二重の計画とは?永遠人と心理歴史学者による人類の歴史への介入

前回記事:アシモフの『永遠の終り』における永遠人のジレンマ、最大多数の最大幸福の追求がもたらした種族としての人類の滅亡

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