アシモフの銀河帝国興亡史の根底ある永遠と無限をめぐる二重の計画とは?永遠人と心理歴史学者による人類の歴史への介入

前回までの一連の記事のシリーズで考察してきたように、アイザック・アシモフの代表作の一つである「ファウンデーションシリーズ」(銀河帝国興亡史シリーズ)のスピンオフ的な作品として位置づけられる『永遠の終わり』(The End of Eternityという題名のSF小説においては、

時間の流れに干渉することによって、現実世界における人類の歴史の流れを、あらゆる時代のすべての人々にとっての最大多数の最大幸福を満たすより優れた現実の形へと修正していこうとする使命を担った永遠人(エターナル)と呼ばれる人々の物語が語られていくことになります。

そして、それに対して、

こうした「ファウンデーションシリーズ」の本編となる作品である「銀河帝国興亡史」の三部作、そして、その続編となる作品である『ファウンデーションの彼方へ』Foundation’s Edgeと題されるSF小説においては、

天才数学者であるハリ・セルダンを中心とする心理歴史学者たちによって作り上げられたセルダン計画に基づいて、永遠人たちとは異なる新たな形での人類の歴史の流れの先導と修正が試みられていくことになります。

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永遠人と心理歴史学者による人類の歴史の流れへの介入のあり方の違い

それでは、

こうした『永遠の終わり』において示されている永遠人たちの手による人類の歴史の流れの修正のあり方と、

「銀河帝国興亡史」の三部作などにおいて示されている心理歴史学者たちの手によるセルダン計画に基づく人類の歴史の流れの導き方との間には、具体的にどのような相違点があるのか?ということについてですが、

それについては、

永遠人たちは、時間工学と呼ばれる革新的な科学技術を用いることによって、実際に現実世界における時間の流れ自体に干渉して、人類が進んで行くことになる歴史の道筋を直接的に修正していってしまうのに対して、

心理歴史学者たちは、統計学的な手法によって、集団としての人類が進んで行く確率の高い未来のあり方を予測し、

さらに、そうして予測された未来のあり方をより良い方向へと修正していくために必要な最小限の変化心理学的な手法によって導いていくことによって、人類が進んで行くことになる歴史の道筋により緩やかな形で修正を加えていくことになるといった点に主な相違点があると考えられることになります。

つまり、一言でいうと、

こうした永遠人たちと、心理歴史学者たちの手による人類の歴史の流れの修正のあり方の違いといては、

永遠人たちの手による歴史の流れの修正は、

時間工学と呼ばれる自然科学の分野における革新的な科学技術を用いることによって、現実世界における時間の流れ自体に直接的に干渉することでもたらされるのに対して、

心理歴史学者たちの手による歴史の流れの修正は、

心理歴史学と呼ばれる社会科学の分野における統計学と心理学の技術を用いることによって、より間接的で穏やかな形での干渉を行うことでもたらされていくことになるという点に、

両者のそれぞれの計画における人類の歴史の流れへの介入の仕方の大きな違いを見いだすことができると考えられることになるのです。

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銀河帝国興亡史の根底に存在する永遠と無限をめぐる二重の計画

詳しくは前回の記事で取り上げたように、『永遠の終わり』の終幕の場面は、

終わりが、<永遠(エターニティ)>の最終的な終末が到来した
――そして<無限(インフィニティ)>の始まりが。」

(アイザック・アシモフ著、深町真理子訳『永遠の終り』、ハヤカワ文庫、335~336ページ。)

という意味深な言葉によって締めくくられることになるのですが、

そういう意味では、こうしたアシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズ全体を貫く世界観においては、

「永遠(エターニティ)」の時代の人類を導くための計画は時間の流れに干渉する科学技術を持った永遠人たちの手によって打ち立てられていくのに対して、

「無限(インフィニティ)」の時代の人類をを導くための計画はハリ・セルダンを中心とする心理歴史学者たちの手によって打ち立てられていくことになるという

人類の歴史の流れをめぐる壮大な二重の計画に基づいて物語が展開していくことになると捉えることができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:心理歴史学とは何か?①アシモフの銀河帝国興亡史におけるハリ・セルダンについての記述と心理歴史学の定義

前回記事:永遠(エターニティ)の終りと無限(インフィニティ)の始まり、アシモフの『永遠の終り』における銀河帝国興亡史への布石

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