アシモフの銀河帝国興亡史において人類しか知的生命体が登場しない理由とは?②多元宇宙論に基づく無数の可能的な宇宙の存在

前回の記事で書いたように、アイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」において、人類以外の知的生命体が一切登場しないことの直接的な理由としては、

地球から銀河系全体へと植民活動が進められていった際に、たどり着いた先の生命が生存可能な惑星において人類が出会うことになったそれぞれの惑星に固有の土着の生物たちは、

そのすべてが人類のような知的生命体には遠く及ばない単純で貧弱な生物たちであったという点が挙げられることになります。

そして、

こうした「銀河帝国興亡史」における人類の発祥とその銀河系全体への展開の物語についての記述が出てくる作品である『ファウンデーションの彼方へ』(Foundation’s Edgeにおいては、さらにその物語の後半部分において、

それではなぜ、地球以外の他の惑星ではそうした単純で貧弱な生命しか誕生せず、広大な銀河系の内において人類しか知的生命体が存在しないという事態が生じるに至ることになったのか?という問いについて、

新たな観点から、そうした問いの核心に迫るより深い理由が改めて語り直されていくことになります。

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『ファウンデーションの彼方へ』の後半部分で語られる「無限に存在しうる多くの異なった宇宙」のあり方とは?

『ファウンデーションの彼方へ』Foundation’s Edge)の後半部分のなかの、さらに終盤に近い場面においては、

ガイアと呼ばれる惑星全体の集合意識において語り伝えられてきたとされる一つの寓話のなかで、こうした広大な銀河系の内で知的生命体が人類しか存在しない宇宙が成立した核心的な理由が、

共同体の長老のような立場にある老人であるドムの口を通じて、以下のような形で語られていくことになります。

・・・

「お客さまに<永遠>の話をしてあげようとしていたところだ。――それを理解するには、まず――事実上、無限に存在しうる――多くの異なった宇宙があることを理解しなくてはならない

それぞれの出来事は、起こりうるか起こりえないかどちらかだ。あるいは、このように起こりうるか、またはあのように起こりうるかだ。

そして、途方もない数の選択肢のおのおのが、未来の、少なくともある程度まで異なった出来事のコースを、結果として生み出す

(中略)

これらの選択肢のおのおのにおいて――あるいは、この一つの出来事についての非常に多くの選択肢のおのおのにおいて――宇宙はそれ以後、別のコースを取ったことだろう

そして、いかに微小であろうとも他のひとつひとつの出来事の、他のバリエーションのひとつひとつについて、同じようなことが起こっただろう。」

(アイザック・アシモフ著、岡部宏之訳『ファウンデーションの彼方へ(下)』、早川書房、236~237ページ。)

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無限に枝分かれしていく木のように分岐していく無数の可能的な宇宙のあり方としての多元宇宙論に基づく宇宙観

そして、

上述した場面における一連の話の流れについてまとめると、そこでは、以下のような多元論的な宇宙観が示されていると考えられることになります。

まず、

宇宙の内で、ある出来事が起こるか起こらないかという二つの選択肢が生じることなる出来事のコースの分岐が生じたとすると、

そうした出来事のコースの分岐に応じて、二つの選択肢のそれぞれの道をたどることになる二つの別々の宇宙のあり方が成立する可能性が生じることになりますが、

それは、ある意味では、そうした互いにわずかに異なる姿をした二つの別々の可能的な宇宙が新たに生成されるということを意味するとも捉えることができると考えられることになります。

そして、

そうした互いに分かれていった二つの可能的な宇宙の内では、その後も新たに無数の様々な出来事のコースの分岐が生じていくことになり、

そうした無数の出来事のコースの分岐に応じて、それぞれのコースをたどる別々の可能的な宇宙の姿も無数に生成されていくことになります。

つまり、

こうしたアシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズのなかの『ファウンデーションの彼方へ』の後半部分において示されているガイアにおいて語り継がれてきたとされる一連の寓話における話の流れのなかでは、

宇宙のうちで生じる出来事のコースの分岐に応じて、宇宙自体の側においても可能的な宇宙の分岐が次々に生じていき

そうした生じた別々の可能的な宇宙においても、その内で生じていくことになる微小な出来事の違いに応じて、さらに別々の可能的な宇宙の分岐が生じていくことになるというように、

こうした可能的な宇宙の分岐無限に枝分かれしていく木のようにどこまでも限りなく広がっていくことになるという多元宇宙論に基づく宇宙観がかなり明確な形で提示されていると考えられることになるのです。

そして、

ここから、さらに話の流れは、そうした多元宇宙論に基づいて無数に存在すると考えられる数多くの可能的な宇宙の姿の内から、

なぜ銀河系の内で人類だけが知的生命体として君臨する宇宙のあり方が選び取られるに至ったのか?という理由を解き明かすための考察へと進んでいくことになるのです。、

・・・

次回記事:アシモフの銀河帝国興亡史において人類しか知的生命体が登場しない理由とは?③ 「永遠人」の意志の力で選び取られた宇宙

前回記事:アシモフの銀河帝国興亡史において人類しか知的生命体が登場しない理由とは?①「人類の宇宙」として宇宙観

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