『風の谷のナウシカ』とアシモフの「銀河帝国興亡史」の関係とは?両者に共通する社会哲学的な思想の構図

前々回の記事で書いたように、漫画版の『風の谷のナウシカ』の最終巻にあたる第七巻の最終章にあたる場面においては、この物語の主人公であるナウシカが、

腐海の森と現在の世界を創り上げた創造主である墓所の主たちが示す現在の人類の自由を犠牲としたうえで未来において青き清浄の地を築き上げるという秩序と平和へと向かう光の道でもなく、

トルメキア王国土鬼帝国といった大国たちが自らの欲望のままに自由に振る舞うことによってもたらされる果てしなく続く闘争と破壊へと向かう闇の道でもない第三の道として、

そうした秩序に基づく平和自由に基づく闘争の両方の性質をあわせ持つ生命の道選び取り、その道を現在を生きる人々と共に歩んでいくという裁定を下す場面が描かれていくことになります。

そして、

こうした『風の谷のナウシカ』において示されているものと同様の思想的な構図が示されている文学作品としては、

『風の谷のナウシカ』とちょうど同時代に書かれたアメリカのSF小説であるアイザック・アシモフ「ファウンデーションシリーズ」(銀河帝国興亡史シリーズ)の集大成となる作品である『ファウンデーションの彼方へ』と題される小説の名を挙げることができると考えられることになります。

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『ファウンデーションの彼方へ』において描かれる第一ファウンデーションと第二ファウンデーションとガイアの間の三つ巴の抗争

アイザック・アシモフIsaac Asimov、1920~1992年)のSF小説である「ファウンデーションシリーズ」(銀河帝国興亡史シリーズ)三部作の続編にあたる1982年に発行された『ファウンデーションの彼方へ』(Foundation’s Edgeと題される小説においては、

アシモフの銀河帝国興亡史シリーズだけではなく、彼が書いたもう一つの代表的なSFシリーズであるロボット三原則に代表されるロボットシリーズへも通じるアシモフのSF作品全体の集大成となる思想が示されている考えられることになります。

そして、

そうした『ファウンデーションの彼方へ』という小説のなかでは、

人間の自由意志を最大限に重視したうえで、自分たちが持つ絶大な科学技術力と軍事力を自由に行使することによって、トランターを首都とするすでに滅び去った第一帝国に代わる第二帝国の版図を築き上げようとする第一ファウンデーション(the First Foundationと、

二つのファウンデーションの創始者であった偉大な心理歴史学者であるハリ・セルダンによって創り上げられた銀河帝国再生の計画に従って人類が進んで行く方向を統制することによって秩序ある平和な世界を築き上げようとする第二ファウンデーション(the Second Foundation

そして、

そうした個々の人間や国家同士の争いや、ある特定の人物のみが特権的に世界を指導していくといった既存の社会構造のあり方を超越し、

人間だけではなく、草木や動物たちも含めたその星に集うあらゆる生物たちが自らの意識を共有することによって得られる集合意識を育んでいくことによってもたらされる星全体が一つの意識と生命体を形成する新たな有機的な社会のあり方の実現を目指すガイア(Gaiaという三者の間で、

人類が進むべき道を決めるための三つ巴の抗争が繰り広げられていくことになるのです。

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『風の谷のナウシカ』と「銀河帝国興亡史」の両者に共通する社会哲学的な思想の構図

以上のように、

アシモフの銀河帝国興亡史シリーズの集大成となる作品である『ファウンデーションの彼方へ』という小説においては、

人間の自由意志を重視する第一ファウンデーションと、

秩序と平和を重視する第二ファウンデーション

そして、

そうした対立関係にある両者を超越する構造を集合意識を持つ新たな段階へと進んだ生命において見いだそうとするガイアという三者の間で、

人類が自らが歩むべき道の指針となる至上の価値として選び取るべき候補となる自由平和生命という三つの価値観をめぐる壮大な論争が繰り広げられていくことになると考えられることになります。

そして、冒頭でも述べたように、

『風の谷のナウシカ』においても、主人公であるナウシカは、

トルメキアや土鬼帝国が押し進める自由と闘争への道と、墓所の主たちが示す秩序と平和への道、そして、そうした両者が互いに調和した第三の道である生命の道という三つの道の正否をめぐる激しい問答を重ねたうえで、

最終的に、三番目の道である生命の道を選び取ることになるのですが、

このように、

『風の谷のナウシカ』アシモフの「銀河帝国興亡史」という二つの作品の間には、

こうした自由平和生命という三つの価値観をめぐる論争を通じて、人類が目指すべき理想の社会のあり方を追求していくという

互いに共通する社会哲学的な思想の構図を見いだすことができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:『ファウンデーションの彼方へ』で語られる自由と平和と生命という人類における三つの至上の価値をめぐる論争の結末とは?

前回記事:慈愛に満ちた女神と荒々しい破壊者としてのナウシカの二面性とは?両方の側面をあわせ持つ気高き裁定者としてのナウシカの姿

前々回の記事:ナウシカが語る人類が歩むべき第三の道としての生命の道とは?『風の谷のナウシカ』が示す人類が歩むべき三つの道②

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