珪藻とは何か?ケイ酸質の殻で覆われた単細胞性の藻類の種族、藻類とは何か?⑧
以前に「植物と動物や細菌との境界線上に位置する生物としての広義における藻類の概念」の記事で書いたように、
緑藻類や紅藻類や褐藻類といった狭義における藻類には、ワカメやコンブ、ノリや天草といった日常的な意味における海藻として認識されることが多い肉眼でもはっきりと見える大きさを持った多細胞性の藻類の種類が数多く含まれるの対して、
そうした狭義における藻類には分類されずに、広義の意味における藻類にのみ分類される生物には、一般的には植物プランクトンとして認識されることが多い単細胞性の微細な藻類の種族が分類されることになると考えられることになります。
そして、
こうした広義における藻類に含まれる生物の種族のなかには、このシリーズの前回の記事で取り上げた渦鞭毛藻やクリプト藻やラフィド藻といった鞭毛藻類に分類される生物の種族の他にも、
特徴的な生物体の構造を持った種族として、珪藻類や藍藻類といった生物の種族の名前も挙げられることになるのですが、
それでは、
こうした珪藻類や藍藻類と呼ばれる広義における藻類に含まれる生物の種族のうち、まずは、そのうちの前者にあたる珪藻類とは、具体的にどのような特徴を持った生物の種族であると考えられることになるのでしょうか?
珪藻類の生物としての具体的な特徴と、葉緑体の内に含まれる色素の種類によって決まる体色の違い
珪藻(けいそう)とは、一言でいうと、
海や湖沼などの水中で光合成を行うことによって生活を営んでいる単細胞性の藻類のなかで、ケイ酸質の硬い殻によって細胞が覆われている生物のグループのことを指す言葉であり、
珪藻は、以前に取り上げた鞭毛藻類や、次回以降取り上げる藍藻類などと共に、水中を浮遊する微細な生物のなかで光合成を行う微生物の総称である植物プランクトンの内の主要な種類を占める生物でもあると考えられることになります。
また、
珪藻類の葉緑体の内には、緑色の色素であるクロロフィル(葉緑素)の他に、褐藻類などと同様に、フコキサンチン(褐藻素)と呼ばれる赤褐色の色素も比較的多く含まれているので、
珪藻類の生物体としての色は、通常の場合、緑色よりも黄褐色に近い色をしている場合が多いと考えられることになります。
珪藻の殻の主成分となるケイ酸の性質と他の単細胞藻類との構造の違い
また、
珪藻の細胞体を覆っている殻の材質の主成分であるケイ酸(二酸化ケイ素)とは、岩石や土の主成分として知られるケイ素(珪素)の酸化物のことを意味する言葉ということになるのですが、
二酸化ケイ素(silicon dioxide)は、通称ではシリカ(silica)とも呼ばれている常温では無色透明の固体の物質であり、
融点は1600℃以上といった優れた耐熱性と断熱性を備えているほか、接着性や吸水性などにも優れた物質でもあるため、
人間の生活においても、建物の建材や断熱材、あるいは、シリカゲルなどの乾燥材や接着剤などとしても幅広く利用されている物質でもあります。
ちなみに、
広義における藻類に含まれる単細胞性の微細な藻類の種族において、こうした珪藻類に見られるような細胞体の耐久性を高めるような構造が形成されること自体は、決して珍しいことではなく、
例えば、
前回取り上げた鞭毛藻類やクリプト藻においても、細胞膜の内外に鎧板やペリプラストなどと呼ばれる硬い板状の構造が形成されるケースなども存在するのですが、
珪藻類においては、そうした他の単細胞性の藻類にも見られる細胞体の耐久性を高めるための仕組みがさらに強化されていくことによって、
耐久性と断熱性と接着性に優れたケイ酸質の硬殻によって細胞全体が覆われたより強固な構造が形成されていくことになったと考えられることになるのです。
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以上のように、
広義における藻類に含まれる生物の種族のなかでも特徴的な生物体の構造を持った種族の一つとして挙げられる珪藻類の生物としての具体的な特徴としては、
珪藻とは、水中で光合成を行うことによって生活を営んでいる単細胞性の藻類のなかで、ケイ酸質の硬い殻によって細胞が覆われている生物の一群であり、
葉緑体の内に緑色のクロロフィル(葉緑素)の他に、赤褐色のフコキサンチン(褐藻素)なども含まれているため、体色が黄褐色に近い色をしている場合が多いといった点が挙げられることになります。
そして、
こうした珪藻の細胞を覆っている硬い殻の主成分となっているケイ酸(二酸化ケイ素)とは、人間の生活においても建物の建材や断熱材または接着剤などとして利用されることもある耐久性や耐熱性などに優れた物質であり、
珪藻類は、他の単細胞性の藻類のなかの細胞膜や細胞壁の内外が強化されている種族と比べても、細胞外殻の耐久性と耐熱性という点において最も優れた細胞体の構造をしているという点に、生物体の構造における最も主要な特徴があると考えられることになるのです。
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次回記事:珪藻土の材質としての特徴と、珪藻土が原料となる日常的な生活用品の種類とは?
このシリーズの次回記事:藍藻(シアノバクテリア)とは何か?①青色の光合成色素を持つ原核生物に分類される単細胞性の微細な藻類、藻類とは何か?⑨
このシリーズの前回記事:渦鞭毛藻とクリプト藻とラフィド藻の違いとは?植物プランクトンとしての共通点と大きさ形や耐久性の違い、藻類とは何か?⑦
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