夜光虫が発光する具体的な仕組みとラテン語における学名の意味とは?ヤコウチュウとは何か?②
前回書いたように、
ヤコウチュウ(夜光虫)は、夜になると海の波などの刺激を受けて青白い光を発する発光生物として知られる海洋性プランクトンの一種であり、
植物学においては鞭毛藻類に、動物学においては鞭毛虫類に分類されるという動物と植物の両者の性質をあわせ持った特異的な生物でもあると考えられることになります。
そして、
こうした日本語ではヤコウチュウ(夜光虫)と呼ばれる生物は、正式な学名ではラテン語でNoctiluca scintillans(ノクティルカ・スキンティランス)と呼ばれることになるのですが、
今回は、こうした夜光虫と呼ばれる生物のラテン語における正式な学名は、具体的にどのような意味を表している言葉であると考えられるのか?
また、ヤコウチュウ(夜光虫)は、具体的にどのような仕組みによって生物発光を行っていると考えられるのか?ということについて詳しく考えてみたいと思います。
ノクティルカ・スキンティランスという学名のラテン語における正式な意味とは?
はじめに、
ヤコウチュウ(夜光虫)と呼ばれる生物の正式な学名にあたるNoctiluca scintillans(ノクティルカ・スキンティランス)という言葉の具体的な意味についてですが、、
まず、この言葉の前半部分にあたるnoctiluca(ノクティルカ)という単語は、
ラテン語で「夜」を意味する名詞であるnox(ノクス)の属格にあたる「夜の」を意味するnoctis(ノクティス)という言葉に、
ラテン語で「光る」「輝く」を意味する動詞であるluceo(ルケオー)が結びつくことによってできた複合名詞であると考えられることになります。
したがって、
noctiluca(ノクティルカ)という言葉は、直接的には「夜に輝くもの」といった意味を表すことになると考えられることになるのですが、
この言葉自体は、ラテン語においては、昼ではなく夜に輝く存在、すなわち、「月」のことを意味する異名の一つとしても捉えられることになります。
それに対して、
後半のscintillans(スキンティランス)という単語は、ラテン語で「火花」や「スパーク」「発光体」のことを意味するscintilla(スキンティラ)から派生した動詞であるscintillo(スキンティロー)の現在分詞形にあたる言葉ということになるので、
こうしたラテン語の語源における意味と、この学名が海の中に浮遊する微生物に対して付けられた学名であるということを考え合わせると、
Noctiluca scintillans(ノクティルカ・スキンティランス)というラテン語の学名のもともと意味としては、
それは、「夜の海中で光る発光体」や「海の中で輝く月」といった意味を表す言葉であると考えられることになるのです。
夜光虫が発光する具体的な仕組みとシンチレーション検出器
それでは、
こうしたラテン語の学名ではノクティルカ・スキンティランス、日本語では夜光虫と呼ばれる海洋性の微生物は、具体的にどのような仕組みによって自らの体を光らせているのか?ということについてですが、
夜光虫の細胞内には、ホタル(蛍)などの他の生物発光を行う生物と同様に、ルシフェリン(luciferin)と呼ばれる発光物質が含まれていて、
こうしたルシフェリンと呼ばれる発光物質に対して、ルシフェラーゼ (luciferase)と呼ばれる発光酵素が触媒として働くことによって、夜光虫における生物発光の化学反応が進んでいくことになると考えられることになります。
具体的には、
ルシフェリンは、発光酵素であるルシフェラーゼの触媒反応によって酸化されることによって、より不安定な高エネルギーの状態へと移行することになり、
エネルギーレベルの高い不安定な過酸化物となったルシフェリンは、すぐに自然分解されて、元の低エネルギーの安定した状態へと戻ってしまうことになるのですが、
こうしたルシフェラーゼの働きによって酸化されたルシフェリンが元の低エネルギー状態へと戻る時に放出される余剰エネルギーが光エネルギーへと変換されることによって、夜光虫の体内における生物発光が進んでいくことになると考えられることになるのです。
ちなみに、
不安定な高エネルギー状態にある物質が安定した低エネルギーの状態へと移行する際に放出される電磁波あるいは光エネルギーのなかで、より有名で強力なものとしては放射性物質から放出される放射線などが挙げられることになりますが、
こうした放射線のエネルギーを感知する放射線測定器のなかでも、最も一般的なものとしては、シンチレーション検出器(scintillation detector)という機器の種類が挙げられることになります。
そして、
上述した放射線検出器に対して用いられているscintillation言葉は、英語において「火花を発すること」や「煌き(きらめき)」のことを意味する言葉であり、
こうした英語のscintillation(シンチレーション)という言葉も、そのもともとの語源となる意味にまで遠くさかのぼっていくと、最終的に、
前述した夜光虫の学名であるNoctiluca scintillans(ノクティルカ・スキンティランス)の後半部分にも含まれていた「火花」や「発光体」のことを意味するラテン語のscintilla(スキンティラ)という単語に行き着くことになると考えられることになるのです。
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以上のように、
ヤコウチュウ(夜光虫)と呼ばれる生物の正式な学名にあたるNoctiluca scintillans(ノクティルカ・スキンティランス)という言葉は、ラテン語において、
「夜に輝くもの」あるいは「月」のこと意味するnoctiluca(ノクティルカ)と、
「火花」や「発光体」のことを意味するscintilla(スキンティラ)という二つの単語に語源を持つ言葉でり、
言葉全体の意味としては、「夜の海中で光る発光体」や「海の中で輝く月」といった意味を表す言葉であると考えられることになります。
また、
こうした夜光虫が発光する具体的な仕組みにおいては、
ルシフェリンと呼ばれる発光物質と、ルシフェラーゼと呼ばれる発光酵素という二つの物質の働きが関わっていると考えられ、
一言でいうと、
ルシフェラーゼの働きによって酸化されて不安定な高エネルギー状態となったルシフェリンが元の安定した低エネルギー状態へと戻る際に放出される余剰エネルギーが光エネルギーへと変換されることによって、
夜光虫の体内における生物発光の反応が進められていくことになると考えられることになるのです。
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次回記事:夜光虫が光を発する二つの理由とは?ヤコウチュウとは何か?③
前回記事:ヤコウチュウ(夜光虫)は動物と植物のどちらに分類されるのか?ヤコウチュウとは何か?①
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