植物と動物や細菌との境界線上に位置する生物としての広義における藻類の概念、藻類とは何か?⑥
前々回の記事で書いたように、狭義における藻類には、ワカメやコンブ、ノリや天草といった日常的な意味における海藻が分類されることになる緑藻類と紅藻類と褐藻類という三種類の植物の種族のみが含まれることになるのに対して、
広義における藻類には、上記の三種族の藻類の他に、珪藻類と藍藻類、渦鞭毛藻や、クリプト藻、ラフィド藻、灰色藻、ユーグレナ植物、クロララクニオン植物といったより多様な生物の種族が含まれることになります。
今回は、こうした広義における藻類に含まれる個々の藻類の種族の具体的な特徴について考えていく前に、
まずは、狭義における藻類には含まれずに、広義の意味における藻類にのみ分類される生物すべてに共通する特徴について、改めてまとめて整理しておく形で書いておきたいと思います。
広義の意味においてのみ藻類に分類される生物すべてに共通する特徴とは?単細胞と多細胞の違いと鞭毛の有無
まず、
冒頭で挙げた広義の意味においてのみ藻類に分類される生物の種族たちすべてに共通する特徴としては、
これらの生物の種族においては、緑藻類や紅藻類や褐藻類といった狭義における藻類において見られるような肉眼ではっきりと見えるような多細胞の生物体が形成されるケースはほとんどなく、
基本的には、すべての種族が単細胞性の微細な藻類に分類されることになるという点が挙げられることになります。
また、
こうした単細胞性の藻類は、多くの場合、鞭毛と呼ばれる運動性を持った小器官を持っていて、光合成を行いながら、自分自身の体をある程度自由に動かすことができるといった点にも、
日常的な意味における海藻のような多細胞の植物体を形成する種類が数多く含まれる緑藻類や紅藻類や褐藻類といった狭義における藻類との具体的な特徴の違いがみられると考えられることになります。
植物と動物や細菌との境界線上に位置する生物としての藻類の概念
以上のように、
狭義における藻類には含まれずに、広義の意味における藻類にのみ分類される生物すべてに共通する特徴としては、
そうした広義の意味においてのみ藻類に分類される生物たちは、緑藻類や紅藻類や褐藻類といった狭義における藻類や、種子植物やシダ植物、コケ植物といった一般的な陸上植物のように、
多細胞からなる植物体を形成することがほとんどなく、基本的には、すべての種族が単細胞生物として生活しているという点が挙げられることになります。
また、前述したように、
そうした単細胞性の藻類の多くは、鞭毛と呼ばれる運動性を持った小器官を形成することになるのですが、
そもそも、以前に「キノコは植物なのか?」の記事でも考察したように、
一般的に、生物学における植物の定義は、「運動性を持たない」、「細胞壁を持つ」、「光合成を行う」という三つの定義に集約することができると考えられるので、
そういう意味では、
こうした鞭毛と呼ばれる細胞小器官を持つ単細胞性の藻類の種族は、「光合成を行う」という三番目の定義は満たすものの、「運動性を持たない」という最初に挙げた植物の定義を厳密な意味では満たしていないと考えらえることになります。
つまり、
珪藻類と藍藻類、渦鞭毛藻や、クリプト藻、ラフィド藻、灰色藻、ユーグレナ植物、クロララクニオン植物といった広義の意味においてのみ藻類に分類される生物の種族たちは、
多細胞からなる生物体を形成することが多い狭義における藻類や一般的な陸上植物とはかなり異なる生物体の構造を持った単細胞生物であり、光合成を行うと同時に、ある程度の運動性も有するという点において、
運動性を主要な特徴の一つとする生物である動物や、単細胞生物の中の最も代表的な種族である細菌といった植物以外の生物の種族とも共通点を持つ生物であり、
それは、言わば、
藻類あるいは植物と、動物や細菌といったその他の生物の種族との間の境界線上に位置する生物の一群であると捉えることができると考えられることになるのです。
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次回記事:渦鞭毛藻とクリプト藻とラフィド藻の違いとは?植物プランクトンとしての共通点と大きさ形や耐久性の違い、藻類とは何か?⑦
前回記事:緑藻類・紅藻類・褐藻類の違いとは?光合成色素と水深などの生息域の違いと分類される代表的な藻類の種類、藻類とは何か?⑤
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