雌雄同株と雌雄同花、雌雄異株と雌雄異花の違いと関連性のまとめ、個体レベルと器官レベルにおける雌雄の分類のあり方
このシリーズの初回から前回までの記事で書いてきたように、種子植物やシダ植物、コケ植物といった人間が日常的に目にする一般的な植物における性別的な分類のあり方のことを示す言葉としては、主に、
雌雄同株と雌雄異株、そして、雌雄同花(両性花)と雌雄異花(単性花)という四つの言葉が用いられることになります。
そして、前回書いたように、そうした人間が日常的に目にするあらゆる植物は、その性別的な分類において、広義の意味における雌雄同株と雌雄異株のいずれかに分類することができると考えられることになるのですが、
今回は、そうした一般的な植物全般における性別的な区分のあり方について具体的に考察していく前に、
こうした雌雄同株と雌雄同花、雌雄異株と雌雄異花という四つの概念の違いのあり方について改めて詳しく考察していく形でまとめ直しておきたいと思います。
個体レベルと器官レベルにおける雌雄の分類のあり方の違い
雌雄同株と雌雄異株、そして、雌雄同花と雌雄異花という二組の対となる概念のあり方の違いについて、一言でまとめると、
雌雄同株と雌雄異株とは、一本の木や草といった植物の個体レベルにおける性別的な分類のあり方を示す概念であり、
雌雄同株が、雌と雄の性質が同じ株、すなわち、同一の個体の内に共に存在する植物のあり方のことを意味するのに対して、
雌雄異株は、雌と雄の性質が異なる株、すなわち、別々の個体に分かれて存在する植物のあり方のことを意味することになります。
それに対して、
雌雄同花と雌雄異花とは、木や草といった植物の個体において咲く花という一つの器官のレベルにおける性別的な分類のあり方を示す概念であり、
雌雄同花が、一つの花の内に、雄しべと雌しべの両方が形成される花のあり方を意味し、一つの花が雌雄両方の性質をあわせ持つという意味で両性花とも呼ばれるのに対して、
雌雄異花は、一つの花の内に、雄しべか雌しべかのいずれか一方だけが形成される花のあり方を意味し、一つの花が雌の性質だけを単独でもつ雌花か、雄の性質だけを単独もつ雄花のどちらかへと分けられることから単性花とも呼ばれることになります。
雌雄同株と雌雄同花の違いと両者の概念の関連性
そして、
雌雄同株と雌雄同花という二つの概念の関連性としては、
雌雄同花(両性花)に分類される花の場合、花のレベルにおいてすでに、一つの花という同一の器官における雌雄の性質の共存が成立していることから、
そうした雌雄の性質を共に備えた花が咲く個体のレベルにおいても、必然的に、雌雄の性質の共存が成立するということが挙げられることになると考えられることになります。
つまり、
雌雄同花に分類される植物においては、花における雌雄の性質の共存が、個体のレベルにおける雌雄の性質の共存へと直結することによって、
雌雄同花(両性花)に分類されるすべての植物は、同時に、雌雄同株の植物にも分類されると考えられることになるのです。
雌雄異株と雌雄異花の違いと両者の概念の関連性
それに対して、
雌雄異株と雌雄異花という二つの概念の関連性の方は、上記のような雌雄同株と雌雄同花の関連性とは少し条件が異なっていて、
雌雄異花(単性花)に分類される花の場合、花のレベルにおいて雌雄の性質が分かれて存在しているとはいえ、
そのことだけからは、個体のレベルにおいても雌雄の性質が分かれて存在するということは必ずしも帰結しないと考えられることになります。
つまり、
雌雄異花に分類される植物においては、花のレベルにおいては雌雄の性質が分かれて存在しているにしても、
個体のレベルにおける雌雄の性質のあり方は、そうした雌雄の性質が互いに別々の花へと分かれていくことによって形成された雌花と雄花の両者について、
雌花と雄花の両者が同一の個体において共存する形で咲くのか、それとも、同一の個体においては雌花と雄花のどちらか一方しか咲かないという別々の個体に分かれていく形で咲くのかによって互いに異なる分類がなされることになり、
雌雄異花(単性花)に分類される植物は、雌花と雄花が同一の個体の内に共存するのか、別々の個体に分かれて咲くのかによって、
雌雄同株と雌雄異株のどちらにも分類される可能性があると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
雌雄同株・雌雄異株・雌雄同花・雌雄異花という生物学における四つの概念のあり方の主要な意味の違いは、一言でいうと、
雌雄同株と雌雄異株が、一本の木や草といった植物の個体レベルにおける性別的な分類のあり方を示す概念であるのに対して、
雌雄同花と雌雄異花は、植物の個体において咲く花という器官のレベルにおける性別的な分類のあり方を示す概念であるという点に、そうした概念の分類のあり方の主要な意味の違いがあると考えられることになります。
そして、さらに、
雌雄同株と雌雄同花、そして、雌雄異株と雌雄異花というそれぞれの概念の意味の違いと関連性について、詳しく考えていくと、
雌雄同花(両性花)に分類されるすべての植物は、必然的に雌雄同株の植物としても分類されることになるのに対して、
雌雄異花(単性花)に分類される植物は、単性花である雌花と雄花が同一の個体に共存するのか、それとも別々の個体に分かれて咲くのかによって、雌雄同株と雌雄異株のどちらにも分類されうるという点に、
こうした二組の概念同士の関連性のあり方の違いが認められると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:一般的な植物の分類における性別的な区分のまとめ、種子植物・シダ植物・コケ植物・藻類における雌雄同株と雌雄異株の区分
前回記事:両性花は雌雄同株と雌雄異株のどちらに分類されるのか?両性花が広義の意味における雌雄同株に分類される理由とは?
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