特殊相対性理論と一般相対性理論の違いとは?相対性理論における「特殊」と「一般」の意味
相対性理論(theory of relativity、セオリー・オブ・レラティヴィティ)とは、
20世紀前半のユダヤ系ドイツ人の理論物理学者であるアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein、1879年~1955年)によって発表された現代物理学の基礎理論となる一連の物理学理論の総称であり、
それは大きく分けて、1905年に発表された特殊相対性理論と、その10年後の1915年に発表された一般相対性理論という二つの理論に大別されて捉えられることになります。
それでは、こうした特殊相対性理論と一般相対性理論と呼ばれる二つの物理学理論には、互いにどのような内容の違いがあり、
それぞれの理論の名称には、どのような理由から「特殊」と「一般」という言葉が用いられていると考えられることになるのでしょうか?
特殊相対性理論の基盤となる二つの原理と「特殊」とされる意味とは?
1905年に26歳の若き日のアインシュタインが発表した物理学理論である特殊相対性理論においては、一言でいうと、
光の速度は光源の動きと関係なくすべての観察者にとって不変であるする光速度不変の原理と、すべての慣性系において物理学の法則は同等に働くとする相対性原理という二つの原理を基盤として理論全体が組み立てられていくことになります。
ここで言う「慣性系」とは、外から力の働かずに内部の運動状態が保たれている慣性状態にある座標系のことを指す言葉であり、
それは一言でいうと、、外力によって速度が変化していく加速度状態にない静止状態にあるか等速運動を行っている観測者のことを意味する概念として捉えることができると考えられることになります。
ちなみに、詳しくは次回以降また改めて考察していくように、
アインシュタインの相対性理論の中でも最も有名な式であるE=mc2という質量とエネルギーの等価性を表す式も、
こうした特殊相対性理論における光速度不変の原理とすべての慣性系における物理法則の相対性原理という二つの原理からもたらされる必然的な帰結として導き出されることになるのですが、
以上のように、
特殊相対性理論においては、この理論が「慣性系」と呼ばれる加速や減速運動を行っていない座標系、すなわち、静止または等速運動を行っている観測者同士のみで成立する理論であるという意味で「特殊」という言葉が用いられていると考えられることになるのです。
一般相対性理論の基盤となる二つの原理と「一般」とされる意味とは?
そして、こうした特殊相対性理論における物理学理論の理論構成に対して、
1915年に同じくアインシュタインの手によって発表された一般相対性理論においては、今度は、
運動加速度と重力加速度の等価性を意味する等価原理と、加速度系を含むいかなる座標系においても物理学の法則は同等に働くとする一般相対性原理という二つの原理を基盤として理論全体が組み立てられていくことになります。
例えば、列車の運行を例に挙げて考えてみた場合、
列車は駅を出発する前には静止状態という慣性系の状態にあり、そこから駅を発車して徐々に速度を増していく加速状態に入るとその列車は加速度系へと移行することになります。
そして、そこから加速をやめて一定の速度を維持して走る等速運動の状態になると再び外力による速度の変化のない慣性系へと移行することになり、
そこから次の駅が近づいて減速するというマイナスの加速状態に入ると加速度系へと移行し、次の駅に到着して完全に停車すると静止状態である慣性系へと戻るというように、
この宇宙におけるすべての存在者は慣性系か加速度系かのいずれか一方の座標系に位置していると考えられることになります。
このように、
一般相対性理論においては、この理論が「慣性系」だけではなく「加速度系」も含めたすべての座標系、あらゆる観測者において同等に成立する理論として成立しているという意味において「一般」という言葉が用いられていると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
アインシュタインによって提唱された物理学理論である特殊相対性理論と一般相対性理論と呼ばれる二つの理論内容の大きな違いとしては、
特殊相対性理論が、①光速度不変の原理と、②(すべての慣性系における)相対性原理という二つの原理を基盤として成り立っているのに対して、
一般相対性理論の方は、①(加速度と重力の等価性としての)等価原理と、②(すべての座標系における)一般相対性原理という二つの原理を基盤としてとして成り立っているという点にその理論内容の基本的な相違点がみられることになります。
そして、
特殊相対性理論においては、それが「慣性系」と呼ばれる静止状態にあるか等速運動を行っているという特殊な環境にある観測者のみを理論が扱う対象としているという意味において「特殊」という言葉が用いられているのに対して、
一般相対性理論においては、その理論が「加速度系」も含めたすべての座標系、あらゆる観測者において同等に成立する理論であるという意味において、「一般」という言葉が用いられていると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:特殊相対性理論における相対性原理の数学的な記述と球面の方程式との関係
「物理学」のカテゴリーへ