エンベロープウイルスの大きさはどのくらいなのか?代表的な35種類のエンベロープウイルスウイルスの大きさの比較
前回までの一連の記事で書いてきたように、ウイルスと呼ばれる微小な病原体たちは、ウイルス粒子の構造や形状という観点からは、大きく分けて、
エンベロープウイルスとノンエンベロープウイルスと呼ばれる二つのグループに分類されることになるのですが、
それでは、このうちの前者にあたるエンベロープと呼ばれる膜構造を持つことを特徴とするエンベロープウイルスたちは、具体的にどのくらいの大きさをしていると考えられることになるのでしょうか?
インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどの球形のエンベロープウイルスの大きさの比較
そうすると、まず、
こうしたエンベロープウイルスに分類されるウイルスのなかでも、最も有名なウイルスであると考えられるインフルエンザウイルスやコロナウイルスといった呼吸系の感染症の原因となるウイルスたちは、それぞれ、
インフルエンザウイルスは直径80~120ナノメートル※、コロナウイルス※は直径80~220ナノメートルほどの大きさの球形の形状をしたエンベロープウイルスの種類として位置づけられることになります。
※1ナノメートル(1nm)=10億分の1メートル=0.000001 ミリメートル
※コロナウイルス科に属するウイルスには強毒株にあたるSARSコロナウイルスやMERSコロナウイルスや2019新型コロナウイルスなども含まれる。
そして、こうした球形の形状をしたエンベロープウイルスとしては他にも数多くのウイルス種類が挙げられることになり、例えば、
HIVウイルスは直径100ナノメートル、B型肝炎ウイルスやD型肝炎ウイルスは直径40ナノメートル、
口唇ヘルペスなどの原因となる単純ヘルペスウイルスや、水ぼうそうや帯状疱疹の原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスといったヘルペスウイルス科に属するウイルスは直径120~200ナノメートルほどの大きさの球形のエンベロープウイルス、
風疹の原因となる風疹ウイルスや、蚊が媒介するチクングニア熱の原因となるチクングニアウイルスといったトガウイルス科に属するウイルスは直径70 ナノメートルほどの大きさの球形のエンベロープウイルス、
C型肝炎ウイルスや日本脳炎ウイルス、蚊が媒介するデング熱の原因となるデングウイルスや、黄熱病の原因となる黄熱ウイルス、ウエストナイル熱の原因となる西ナイルウイルスや、ジカ熱の原因となるジカウイルスといったフラビウイルス科に属するウイルスは直径40~60ナノメートルほどの大きさの球形のエンベロープウイルスとしてそれぞれ位置づけられることになります。
また、その他にも、
多形性の形態をとることがあるものの、通常の状態では球形の形態をしていることが多いエンベロープウイルスの種類としては、
麻疹(はしか)の原因となる麻疹ウイルスや、おたふく風邪の原因となるムンプスウイルスいったパラミクソウイルス科に属する直径150~350ナノメートルほどの大きさのエンベロープウイルス、
クリミア・コンゴ出血熱の原因となるクリミア・コンゴ出血熱ウイルスや、腎症候性出血熱の原因となるハンタウイルス、リフトバレー熱の原因となるリフトバレー熱ウイルスや、重症熱性血小板減少症候群の原因となる重症熱性血小板減少症候群ウイルスといったブニヤウイルス科に属する直径100ナノメートルほどの大きさのエンベロープウイルス、
ラッサ熱の原因となるラッサウイルスや、アルゼンチン出血熱の原因となるフニンウイルス、ブラジル出血熱の原因となるサビアウイルス、ベネズエラ出血熱の原因となるガナリトウイルス、ボリビア出血熱の原因となるマチュポウイルス、チャパレ出血熱の原因となるチャパレウイルスといったアレナウイルス科に属する直径50~300ナノメートルほどの大きさのエンベロープウイルスの種類などが挙げられることになるのです。
天然痘ウイルスやエボラウイルスなどの卵型や円筒型やひも状の形をしたエンベロープウイルスの大きさの比較
そして、それに対して、
こうしたエンベロープウイルスに分類されるウイルスのなかでも、より大型のウイルスの種類としては、
天然痘ウイルスや牛痘ウイルスといったポックスウイルス科に属する全長が220~450ナノメートルにまでおよぶレンガ型あるいは卵形のエンベロープウイルスの種類などが挙げられることになります。
また、その他にも、より変わった形状をしたエンベロープウイルスの種類としては、
直径は75ナノメートル、長さは180ナノメートルほどの大きさをした円筒形のエンベロープウイルスである狂犬病ウイルスや、
エボラ出血熱の原因となるエボラウイルスや、マールブルグ熱の原因となるマールブルグウイルス といったフィロウイルス科に属する直径は80ナノメートルほどであるものの、長さは14,000ナノメートルほどにおよぶこともある多形性の細長いひも状の形態をしたエンベロープウイルスの種類なども挙げられることになるのです。
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そして、以上のように、
こうしたエンベロープウイルスに分類されるウイルスの大きさについては、ウイルスごとの形状の違いによって例外はあるものの、
上記の図において示したように、だいたい40~450ナノメートルくらいの大きさの範囲に位置づけることができると考えられ、
その中でも、特に、
インフルエンザウイルスやコロナウイルス、HIVウイルスやヘルペスウイルスなどといった球形の形状をした大部分のエンベロープウイルスは、
だいたい100~200ナノメートルくらいの大きさをしていると結論づけることができると考えられることになるのです。
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次回記事:ノンエンベロープウイルスの大きさはどのくらいなのか?代表的な15種類のノンエンベロープウイルスの大きさの比較
前回記事: エンベロープウイルスとノンエンベロープウイルスの違いと代表的なウイルスの種類のまとめ
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