スペイン風邪はなぜ終息したのか?世界最大のパンデミックを引き起こした強力なウイルスが地球上から姿を消した三つの理由

人類の歴史上における最大規模のパンデミックを引き起こすことになったスペイン風邪世界的な大流行においては、

19183月から19199という1年半ほどの期間にわたってヨーロッパとアジアを中心とする世界各地ウイルスが猛威を振るい続け、

当時の世界人口の4分の1にあたるおよそ5億人の感染者5000万人の死者を出したと推定されていますが、

逆に言えば、

こうしたスペイン風邪の病原体となった変異型のインフルエンザウイルスは、

世界の隅々にまで感染を拡大していって人々の命をかつてないほどに多く奪っていくほどに強力なウイルスだったのにもかかわらず、

なぜそのまま永続的に世界中の人々を苦しめ続けることなく、わずか1年半という期間で姿を消して終息してしまうことになったのでしょうか?

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弱毒性のウイルスへの変異と通常の季節性のインフルエンザへの融合

そうすると、まず、

スペイン風邪世界的な流行は、

大きく分けて、1918年の春にはじまる第一波1918年の秋にはじまる第二派1919年の春にはじまる第三派という三つの流行の波に分かれていく形で感染拡大が進行していったと考えられることになるのですが、

このうち、

最初の流行となった第一波の感染拡大の時期におけるスペイン風邪の致死率それほど高くなかったと考えられていて、

スペイン風邪による死者の多くは、ウイルスが強毒株へと変異した後の第二波第三波の感染拡大の時期に発生することになったと考えられています。

そして、このように、

スペイン風邪と呼ばれる同じ感染症の原因となったウイルスが数か月から半年という比較的短期間のうちに弱毒株から強毒株へと変異してしまうということは、

それとは逆に、

こうしたまだ人間の社会の内に定着しきっていない新型のウイルスにおいては、比較的短期間のうちに、強毒株から弱毒株への変異容易に起こり得るとも考えられることになります。

そして、ウイルスの側にとっては、

宿主となる人間のことを死へと至らしめてしまうような強毒性のウイルスは、本来、そのウイルスの種族の存続という面においては必ずしも有利ではなく

むしろ、宿主となる人間が死に至ることがない程度にできるだけ長く感染状態を持続させていき、その間に、次の感染相手へと乗り移っていくことができる弱毒性のウイルスの方人間の社会の内に定着して長く存続しやすいと考えられることになるのですが、

そういった意味では、

こうした強毒性のスペイン風邪のウイルスは、

当初は、人間の側が免疫を持っていないというウイルスにとって非常に有利な条件があったために、強力な感染力と致死率によって猛威を振るうことになったものの、

感染の拡大と共に、人間の側にも徐々に免疫を持った人々が増えていくことによって、当初の圧倒的な優位性次第に減少していくことになり、

その後、

新たに変異していくことになったと考えられる弱毒性のウイルスや、そうした弱毒性のウイルスと互いに混じり合っていくことになった通常の季節性のインフルエンザウイルスなどによって感染の場を奪われていくことで急速にその勢力を弱めていくことになっていったと考えられることになるのです。

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治癒者の増加による社会全体におけるウイルスに対する免疫力の向上

また、そもそも、

スペイン風邪世界的な流行においては、確かに、数多くの死者が発生してしまうことになったものの、それと同時に、それ以上に多くの治癒者も生み出されることになったと考えられることになります。

そして、

こうして短期間の内に生み出されることになったスペイン風邪に対して免疫を持つ数多くの治癒者は、その後のスペイン風邪の流行の期間においては、同じ病気への再感染のリスク非常に低くなっていたと考えられ、

このようにして新たに生み出されることになったスペイン風邪の治癒者たちが、人間の社会の内で、言わば、感染拡大を防ぐ防波堤のような役割を果たしていくことによって、

その後のスペイン風邪の流行の広がり徐々に抑えられていくことになっていったとも考えられることになるのです。

人類の側の防疫対策による社会活動の停滞

そして、さらに、もう一つの要因としては、

こうしたスペイン風邪の原因となった変異型のインフルエンザウイルスは、世界の人々社会生活を大きく歪めてしまうほどに強力なウイルスであったがゆえに、

かえって人間社会の内に長くとどまり続けることができなかったという見方もできると考えられることになります。

スペイン風邪のように感染力も致死率も高い強力な新型ウイルス世界的に流行してしまうことになると、

人類の側は自分たちの社会を守るために、必然的に、それぞれの国家や地域における防疫対策と医療体制の強化へと乗り出していくことになります。

例えば、1918年の時点における日本国内でのスペイン風邪の流行においては、

本土への海上輸送などを厳しく制限したことなどが一因となって国内における感染拡大と致死率比較的低く抑えられていたという記録も残されていますが、

こうした防疫対策などを通じて人間の社会における社会活動が停滞していくことにより、ウイルスが次第に効率的に感染を拡大する場を失っていくことによって、

スペイン風邪の流行徐々に終息へと向かっていくことになっていったとも考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

世界最大のパンデミックを引き起こした強力なウイルス感染症であるスペイン風邪1年半という比較的短い期間終息へと至ることになり、地球上からその姿を消してしまった具体的な理由としては、

①弱毒性のウイルスへの変異通常の季節性のインフルエンザへの融合

②治癒者の増加による社会全体におけるウイルスに対する免疫力の向上

③人類の側の防疫対策による社会活動の停滞

という三つの主要な理由を挙げることができると考えられることになるのです。

・・・

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