新型コロナウイルスの年齢・性別・持病の有無の違いに基づく致死率の概算
前回書いたように、2020年2月17日に発表されたCCDC(中国疾病対策予防センター)による新型コロナウイルス感染症の症例分析においては、
ウイルス感染者の年代別の致死率などといった様々な項目別の詳細な統計データが示されていますが、
そうした項目のなかには、これまでの記事で取り上げてきた年代別のデータのほかにも、男女の性別、あるいは、糖尿病や高血圧、心血管疾患や慢性呼吸器疾患などといった持病がある患者ごとの致死率についても参考となるデータが示されているので、
こうした各項目のデータをもとにすれば、
現代の日本国内において新型コロナウイルスに感染しているという診断を受けた場合の年齢・性別・持病などの属性や条件の違いに基づく一人一人の個人の致死率を推定することができると考えられることになります。
年齢・性別・持病の有無に基づく新型コロナウイルス致死率の統計データ
そうすると、まず、
前回までの一連の記事のなかでも繰り返し取り上げてきたCCDC(中国疾病対策予防センター)による2020年2月17日付けの報告書に示されている新型コロナウイルス感染症の症例の分析に基づくと、
全体としての平均的な致死率が2.3%とされたうえで、
・年代別の致死率については、
10歳未満の患者の致死率は0%(416人の感染者のうちで死亡者なし)
10代の患者の致死率は0.18%(549人の感染者のうち1人死亡)
20代の患者の致死率は0.19%(3619人の感染者のうち7人死亡)
30代の患者の致死率は0.24%(7600人の感染者のうち18人死亡)
40代の患者の致死率は0.44%(8571人の感染者のうち38人死亡)
50代の患者の致死率は1.3%(10008人の感染者のうち130人死亡)
60代の患者の致死率は3.6%(8583人の感染者のうち309人死亡)
70代の患者の致死率は8.0%(3918人の感染者のうち312人死亡)
80代以上の患者の致死率は14.8%(1408人の感染者のうち208人死亡)
・男女別の致死率については、
男性の患者の致死率は2.8%
女性の患者の致死率は1.7%
・持病の有無に基づく致死率については、
糖尿病を持病に持つ患者の致死率は7.3%
高血圧を持病に持つ患者の致死率は6.0%
心血管疾患を持病に持つ患者の致死率は10.5%
慢性呼吸器疾患を持病に持つ患者の致死率は6.3%
がん患者の致死率は5.6%
持病なしの場合の致死率は0.9%
という統計データが示されています。
(ちなみに、慢性呼吸器疾患の代表的な例としては、かつては肺気腫などとも呼ばれていたCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などが該当することになります。)
(出典: China CDC Weekly:http://weekly.chinacdc.cn/en/article/id/e53946e2-c6c4-41e9-9a9b-fea8db1a8f51)
年齢・性別・持病の違いに基づく新型コロナウイルスの致死率の概算
そして、以上のような一連の統計データから、年齢、性別、持病の有無といったそれぞれの属性や条件の違いに応じて新型コロナウイルスの致死率がどのくらい増減することになるのかを計算していくと、
・年代別の条件については、平均値と比べて、
10歳未満の患者の致死率は0倍
10代の患者の致死率は0.1倍
20代の患者の致死率は0.1倍
30代の患者の致死率は0.1倍
40代の患者の致死率は0.4倍
50代の患者の致死率は0.6倍
60代の患者の致死率は1.6倍
70代の患者の致死率は3.5倍
80代以上の患者の致死率は6.4倍
・男女別の条件については、平均値と比べて、
男性の患者の致死率は1.2倍
女性の患者の致死率は0.7倍
・持病の有無に関する条件については、平均値と比べて、
糖尿病を持病に持つ患者の致死率は3.2倍
高血圧を持病に持つ患者の致死率は2.6倍
心血管疾患を持病に持つ患者の致死率は4.6倍
慢性呼吸器疾患を持病に持つ患者の致死率は2.7倍
がん患者の致死率は2.4倍
持病なしの場合の致死率は0.4倍
という割合でそれぞれの属性や条件ごとに致死率が増減していくことになると考えられることになります。
そして、
現時点までのWHOの報告によれば、新型コロナウイルスの致死率については、全体としては2%程度であるという推定と、2月後半までの時点では武漢以外の地域では0.7%であるとする二つの推計値が示されているので、
こうした二つの推定値の間をとって、現在の日本における新型コロナウイルスの平均的な致死率を1.3%程度であると仮定すると、
上記の表に基づいて算出される新型コロナウイルスの致死率は、
例えば、
40代の糖尿病の男性であれば、
1.3%×0.4倍(40代)×1.2倍(男性)×3.2倍(糖尿病)≒2.0%
70代の持病なしの女性であれば、
1.3%×3.5倍(70代)×0.7倍(女性)×0.4倍(持病なし)≒1.3%
(つまり、40代でも糖尿病を患っている男性の場合は、70代の持病のない高齢女性よりも新型コロナウイルスの感染による死亡リスクが高いと評価することができると考えられることになります。)
といった形で、
現代の日本国内において新型コロナウイルスに感染しているという診断を受けた場合に、一人一人の個人がリスクとして負うことになる
年齢・性別・持病などの属性や条件の違いに基づく個人ごとの致死率を実際に推定することができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:新型コロナウイルスのウイルス検査数を過度に増やすと感染爆発を誘発する三つの理由
前回記事:新型コロナウイルスは高齢者にとってどのくらい危険なのか?10代から30代の若年層と比較した高齢層の致死率の高さの推定
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