アカイア人、イオニア人、アイオリス人、ドーリア人のギリシア神話における由来とは?
古代ギリシア人を構成していた主要な民族集団としては、アカイア人、イオニア人、アイオリス人、ドーリア人といった種族の名前が挙げられることになりますが、
こうしたアカイア人、イオニア人、アイオリス人、ドーリア人と呼ばれる古代ギリシア人を構成する四つの民族集団は、
古代ギリシア人たちの文化の中心にあったギリシア神話の物語のなかでは、具体的にどのような由来を持つ人々として位置づけられていると考えられることになるのでしょうか?
ギリシア神話におけるアカイア人・イオニア人・アイオリス人・ドーリア人の出自
そうすると、まず、
こうしたアカイア人、イオニア人、アイオリス人、ドーリア人と呼ばれる四つの民族集団に属する人々の出自についての話は、ギリシア神話の物語のなかでは、例えば、以下のような形で語られていくことになります。
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デウカリオンはピュラーによって先ずヘレーンを生んだ。彼はゼウスを父とすると言う人もある。…
ヘレーンとニンフのオルセーイスとの間に、ドーロス、クスートス、アイオロスが生まれた。
ヘレーンはギリシア人と呼ばれていた人々を自分の名をとってヘレーンと名づけ、子供たちにその地を分配した。
クスートスはペロポネソス半島を得、エレクテウスの娘クレウーサよりアカイオスとイオーンを生んだ。この二人からアカイア人とイオニア人はその名を得たのである。
ドーロスはペロポネソスの対岸の地を得て、自分の名をとってその住民をドーリス人と呼んだ。アイオロスはテッサリアを中心としてその周囲の地を得、住民にアイオリス人なる名を与え、…
(アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫、41~42ページ)
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ちなみに、
上記の記述においてアカイア人とイオニア人が得ることになったとされているペロポネソス半島とは、ギリシアの南部に位置するミケーネやティリンスといった古代ギリシアの都市国家が位置していた土地のことを指していて、
現実の歴史においては、アカイア人の一派であるともされているイオニア人は、その後、現在のトルコが位置するアナトリア半島南西部の沿岸地域に数多くの植民都市を築いていくことになったため、この地にはイオニア地方という名称が与えられることになります。
また、それに対して、
上記の記述においてドーリス人と呼ばれている人々は、ドーリア人の別名にあたり、かつてドーリア人たち多く居住していたとされる古代ギリシアの地名のことを指して、ドーリスあるいはドリスといった表記が用いられることもあります。
そして、
彼らが得ることになったペロポネソスの対岸の地というのは、ギリシアの南部に位置するペロポネソス半島からエーゲ海を越えた対岸に位置するアナトリア半島北西部の沿岸地域にあったと考えられるドーリア人の植民地のことを意味していると考えられることになるのです。
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そして、以上のように、
こうしたギリシア神話の物語のなかでは、
アカイア人、イオニア人、アイオリス人、ドーリア人と呼ばれる古代ギリシア人を構成する四つの主要な民族集団に属する人々は、
ヘレーンと呼ばれる人物を伝説上の始祖として、そこから分かれ出でていくことになったドーロスとアイオロス、そして、アカイオスとイオーンという名のギリシア神話における四人の登場人物の名をとってそれぞれの種族の名前がつけられていくことになったと説明されていると考えられることになるのです。
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