パンクラスの由来とは?古代の総合格闘技パンクラチオンとギリシア世界における古代のオリンピックとの関係
総合格闘技の代表的な団体名としては、アメリカを中心とする世界最大規模の総合格闘技団体であるUFCなどのほかに、日本においては修斗やパンクラスといった団体名も有名ですが、
このうち、パンクラスと呼ばれる総合格闘技の団体名は、かつてギリシア世界において行われた古代の格闘技にあたるパンクラチオンと呼ばれる競技の名前に由来していると考えられることになります。
パンクラスと古代ギリシアの格闘技パンクラチオンとの関係
古代ギリシア語において、パンクラチオン(παγκράτιον)とは、
「すべての」「あらゆる」といった意味を表すパン(παν)という接頭辞と、「力」や「強さ」といった意味を表すクラトス(κράτος)という名詞が結びつくことによってできた言葉であると考えられることになります。
そして、
こうした古代ギリシアにおけるパンクラチオンと呼ばれる格闘競技は、その名の通り、急所への攻撃や噛みつき、相手の目を指で突くといった一部の禁じ手となる攻撃を除いて、
打撃攻撃から組み技や関節技まで、ほとんどすべての格闘技におけるあらゆる攻撃が競技における有効な攻撃として認められていたと考えられることになるのです。
古代のオリンピックにおける総合格闘技としてのパンクラスの位置づけ
また、
こうした古代ギリシアにおけるパンクラチオンと呼ばれる格闘競技は、オリンピアの祭典を中心とする古代のオリンピックにおいて正式種目の一つとしても位置づけられていた競技でもあり、
具体的には、古代ギリシアのオリンピックの歴史においては、まずは、
紀元前708年に開催された古代オリンピックの第18回大会において、現在のレスリング競技にあたるパレー(πάλη)と呼ばれる競技がオリンピックにおける最初の格闘競技の種目として採用されたうえで、
紀元前688年に開催された古代オリンピックの第23回大会において、現在のボクシング競技にあたるピグマキア(πυγμαχία)と呼ばれる競技が採用されることになります。
そして、さらにその後、
紀元前648年に開催された古代オリンピックの第33回大会において、パンクラチオンがオリンピックにおける正式種目として新たに採用されることによって、
古代オリンピックにおけるパレー(レスリング)とピグマキア(ボクシング)とパンクラチオンという三つの格闘競技のすべてが揃うことになったと考えられることになります。
そして、そういった意味では、
こうしたパンクラスと呼ばれる総合格闘技の団体名の大本の由来でもあるパンクラチオンと呼ばれる古代ギリシアの格闘技は、
レスリングとボクシングを融合させた古代のオリンピックにおける総合格闘技にあたる格闘競技として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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