ギリシア世界の盟主として君臨する英雄ヘラクレスのギリシア全土を巡る進軍の旅、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑪
前回書いたように、女神ヘラによって吹き込まれた狂気に駆られて、自分の友人であったイピトスのことを殺してしまった殺人の罪の償いをなすために、
リュディアの女王であったオムパレーに奴隷として売り渡されることになったヘラクレスは、その後この地において、善いことも悪いことも数多くのことを行っていくことになり、
ある時、のちにイカリア島と呼ばれることになるドリケー島の海岸に打ち上げられていたイカロスの遺体を目にしたヘラクレスが、彼の遺体を丁寧に葬ってこの地にイカロスの墓を建てることにしたため、
このことに深く感謝したイカロスの父であったダイダロスの手によって、この地にはヘラクレス像が建てられることになります。
自由の身となったヘラクレスのギリシア全土をめぐる進軍の旅
そして、
こうしてリュディアの女王オムパレーのもとに仕える三年間の奉公を終えて、ついに自由の身となったヘラクレスは、
これまでにミケーネの王エウリュステウスのもとに仕えた十二年間と、その後のリュディアの女王オムパレーに仕えた三年間の間に成し遂げてきた数多くの功業や偉業によって培われてきたゼウスの息子としての自らの力を試すために、広い世界へと乗り出していくことになります。
そして、その後、ヘラクレスは、
ギリシアの各地から武勇に優れた戦士たちを募って自らを将とする最強の軍団をつくり上げると、
そうしたヘラクレスの軍団を乗せて進んで行くことになるそれぞれに50の櫓(ろ)を持つ18艘の軍船からなる大船団を率いて、ギリシア全土をめぐる進軍の旅へと赴いていくことになるのです。
トロイアとエリスとピュロスを攻略したのちギリシア世界の盟主として君臨する英雄ヘラクレス
こうしてギリシア世界をめぐる進撃の船旅へと乗り出したヘラクレスは、まずは、当時、彼が滞在していたリュディアにほど近いイリオンの地、すなわち、トロイアへと進軍を開始していくことになります。
そして、
こうしたヘラクレスの船団が自分たちの都に迫っていることを伝え聞いて、予め戦いに備えていたトロイアの軍勢は、トロイアの王ラオメドンを将とする大船団をもってヘラクレスの船団に対して急襲を仕掛けていくことになり、
この海戦において、ヘラクレス軍団の側も、アルゴスの王の一人であった予言者メラムプースの家系を継ぐ勇者であったオイクレスが戦死するといった多大な損害を被ることになるのですが、
その後もひるむことなく進軍を続けていったヘラクレスの一行は、トロイアの都を包囲したのち、サラミスの王であったテラモーンが先陣を切って城壁を破ることになり、
その後、テラモーンと競うかのように城壁を破って市中へと入っていったヘラクレスによって、トロイアの攻略が成し遂げられることになります。
そして、その後、
トロイアの地を後にしてギリシア本土へと船団を進めていったヘラクレスの一行は、エーゲ海を渡って、かつてヘラクレスが仕えていたエウリュステウスが治めていたミケーネに近いアルカディアの地においてさらなる軍勢を募ったのち、
かつてヘラクレスのことを騙してこの地から追放してしまったアウゲイアス王が治めていたエリスへと進軍し、王とその息子たちをことごとく殺してこの都市を攻略することになり、
さらに、その後、
ピュロスやテゲアといったペロポネソス半島にあった有力な都市国家を次々に制圧していくことによって、
ついに、ヘラクレスは、エーゲ海の沿岸とペロポネソス半島を中心とするギリシア全土の大部分の領域を支配するギリシア世界の盟主として君臨していくことになるのです。
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前回記事:女王オムパレーの奴隷となるヘラクレスとダイダロスが建てたヘラクレス像、古代ギリシア神話の英雄ヘラクレスの物語⑩
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