古代オリンピックで最初にはじまった競技とは?英語のスタジアムの由来とオリンピック大会の象徴としてのスタディオン走
前回の記事で書いたように、歴史上の記録に基づく古代オリンピックの起源は、ギリシア南部のペロポネソス半島に位置するエリス地方における古代都市の一つであったオリンピアにおいて4年に1度の間隔で開催されていた古代ギリシアにおけるオリンピア祭にその直接的な起源を求めることができると考えられ、
歴史上の記録における第一回のオリンピア祭は、紀元前776年にはじまったとされているのですが、
それでは、
こうした紀元前776年の第一回のオリンピア祭において行われていた運動競技、すなわち、古代オリンピックで最初にはじまった競技とは、具体的にどのような競技であったと考えられることになるのでしょうか?
古代オリンピックにおける最初の競技としてのスタディオン走と1スタディオンの具体的な距離の長さ
そうすると、まず、
こうした第一回のオリンピア祭から行われていたとされる競技は、ただ一つ、スタディオン走と呼ばれる陸上競技であったとされていて、
古代ギリシア語におけるスタディオン(stadion)とは、言葉そのものの定義としては、太陽の上端が地平線に現れてから太陽の下端が地平線を離れるまでの間に人間が歩く距離、すなわち、
朝の日の出の時に太陽が完全に姿を現すまでの約2分ほどの間に普通の人間が歩くことができる距離を基準とした距離の単位のことを意味する言葉であったと考えられることになります。
それでは、
こうした古代ギリシアにおける1スタディオンと呼ばれる距離は、現在用いられている距離の単位で言うと、だいたいどれくらいの長さにあたることになるのか?というと、
それについては、ギリシア各地において、そうした距離の単位の実際の用いられ方には、かなり大きなばらつきがあったと考えられ、
例えば、ギリシア各地に点在する競技場の遺跡において検証されている1スタディオンと呼ばれる距離の実際の長さについては、
古代ギリシアの学問の中心地にあたるアテナイや、アポロン神殿があったデルポイでは約178 m、
アポロンの息子としても位置づけられているギリシア神話における医学の神として祀られているアスクレピオスの聖域があったエピダウロスでは約181 m、
古代ギリシアにおけるオリンピア祭が行われていた古代都市オリンピアでは約192 mの距離の長さが、こうした1スタディオンと呼ばれる距離として用いられていたと考えられることになります。
そして、以上のように、
こうした第一回のオリンピア祭から行われていたとされる競技、すなわち、古代オリンピックで最初にはじまった競技として位置づけられることになるスタディオン走と呼ばれる陸上競技においては、
その名の通り、1スタディオンの距離、オリンピア祭が行われていた古代都市オリンピアにおいて用いられていたと考えられる距離の長さを基準とする、現代で言えば、192mほどの距離を走っていく短距離走が行われていたと考えられることになるのです。
英語におけるスタジアムの由来とオリンピック大会そのものを象徴する競技としてのスタディオン走
ちなみに、
こうした古代ギリシア語におけるスタディオン(stadion)という言葉は、ラテン語においてはスタディウム(stadium)という言葉として用いられていくことになり、こうしたラテン語におけるスタディウムという言葉が直接的な語源となることによって、
英語においてオリンピックや野球、サッカーやラグビーなどといった競技などが実際に行われることになる観客席を備えた大規模な競技場のことを意味するスタジアム(stadium)という言葉が形づくられていくことになっていったと考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした古代ギリシアにおける最初の競技として位置づけられているスタディオン走と呼ばれる192mほどの短距離走にあたる陸上競技は、
現代のオリンピック大会においても聖火が灯されて多くの主要な競技が行われていくことになる中心地にあたるスタジアム、すなわち、オリンピックスタジアムという言葉の由来ともなった、
古代から現代へと続いていくオリンピック大会そのものを象徴する競技としても位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:スタディオン走とは何か?古代の短距離走の具体的な競技の手順と古代バビロニアとギリシア神話におけるスタディオンの由来
前回記事:古代オリンピックの由来とは?ギリシア神話における三つの起源となる物語
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