十二支が12年で一周する年まわりのことを意味するようになった由来とは?天文学的な意味における十二支の起源
前回の記事で書いたように、子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥という十二の動物たちに象徴される十二支の起源は、
古代中国において用いられていた十二辰と呼ばれる天球上における十二の領域の区分のあり方にその大本の起源を求めていくことができると考えられることになるのですが、
それでは、
こうした古代中国における十二辰と呼ばれる天球上の十二の領域の区分のあり方からは、具体的にどのような形で現代における十二支のイメージが形づくられていくことになっていったと考えられることになるのでしょうか?
十二辰における天球上の十二の領域と木星の公転周期との関係
そうすると、まず、詳しくは前回の記事で書いたように、
十二辰と呼ばれる天球上の十二の領域の区分のあり方においては、天の北極が位置する方向にあたる北の方位に位置する天球上の領域が十二辰の1番目にあたる子(ね)が司る領域として位置づけられたうえで、
そこから東から西へと一周していく形で子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥という天球上における十二辰の領域が順番に割り当てられていくことになると考えられることになるのですが、
地球からの観測において、
太陽や惑星などといった太陽系内のすべての天体は、こうした十二辰と呼ばれる天球上の十二の領域のうちを順番に通っていく形で天球を一周する円軌道を描いていくことになると考えられることになります。
そして、そのなかでも、
太陽系の中で大きさと質量ともに最大の惑星にあたる木星は、11.86年というそうした天球上における十二の領域の数と非常に近い公転周期で天球を一周していくことになるため、
一言でいうと、
そうした天球上において一年に一辰ずつ移動していくことになる十二辰における木星の位置に基づいて年の記録を行うようになっていったのが、
こうした十二辰や十二支における十二の動物たちが12年で一周する年まわりのことを意味するようになっていった大本の起源として位置づけられることになると考えられることになるのです。
木星の鏡像となる太歳の位置に基づく太歳紀年法から現代の十二支に基づく年の記述のあり方への変遷
ただし、より正確に言えば、
こうした十二辰と呼ばれる天球上の十二の領域の区分のあり方においては、前述したように、東から西へと一周していく形で天球上における十二辰の領域が順番に割り当てられていくことになるのに対して、
天球上における木星の公転軌道においては、そうした十二辰における十二の領域の順番とは逆回りに天球上を西から東へと11.86年の周期で移動していくことになるため、
古代中国においては、実際には、
そうした天球上における木星の位置を鏡へと映したような対称的な位置関係にある太歳(たいさい)と呼ばれるのちに木星の異称としても用いられることになる仮想の惑星が想定されたうえで、
そうした木星の鏡像となる太歳の十二辰における位置のあり方に基づいて年の記録が行われていくことになる太歳紀年法と呼ばれる年代の記録法が用いられていたと考えられることになります。
そして、
こうした太歳紀年法と呼ばれる年代の記録法においては、木星の公転周期がぴったり12年ではなく11.86年であることから、86年ほどの期間が経過するごとに木星の鏡像にあたる太歳の位置も一辰ずつずれていってしまうことになる超辰(ちょうしん)と呼ばれる現象が起きてしまうことになると考えられるため、
そうした超辰と呼ばれる太歳紀年法における暦のずれを修正するためにしばしば改暦が行われていたと考えられることになるのですが、
次第に、
そうした太歳紀年法における超辰に基づく暦のずれの修正が行われなくなっていき、実際の天球上における木星の位置とは無関係に、機械的に十二辰における干支が進められていくようになっていったのが、
現在における十二年を一つの周期とする十二支に基づく年の記述のあり方の直接的な起源として位置づけられることになると考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
天文学的な意味における十二支の起源としては、より正確に言えば、
こうした古代中国の時代において用いられていた木星の鏡像となる太歳と呼ばれる仮想の惑星と、天球上における十二辰における十二の領域との位置関係に基づく太歳紀年法と呼ばれる年代の記録法のあり方が大本の起源となることによって、
現代の日本における十二支の位置づけのあり方へとつながっていく12年で一周する年まわりのことを意味する十二支のイメージが形づくられていくことになっていったと考えられることになるのです。
・・・
次回記事:十二支と二十四節気の対応関係とは?日本および中国古来の二つの暦の区分のあり方における具体的な対応関係
前回記事:十二辰とは何か?天球上における十二辰の具体的な配置と太陽や月や星など天体の総称としての「辰」という漢字の意味
「天文学」のカテゴリーへ
「中国思想」のカテゴリーへ
「語源・言葉の意味」のカテゴリーへ