イクスースとは何か?①古代ギリシア語におけるΙΧΘΥΣの意味とイエス・キリストとの関係
キリスト教においては、古くは2~3世紀ごろの初期キリスト教の時代から、
古代ギリシア語においてイクスースあるいはイクトゥスと発音されることになるΙΧΘΥΣという言葉によって指し示されることになる魚の形をしたシンボルが、
キリスト教またはその始祖であるイエス・キリスト自身の象徴として用いられていたと考えられることになるですが、
こうしたイクスースと呼ばれる魚の形をしたシンボルがイエス・キリストの象徴として用いられるようになった具体的な理由については、語源学的な観点からは以下のような形で説明していくことができると考えられることになります。
古代ギリシア語におけるイクスースの意味とイエス・キリストとの関係
そうすると、まず、
こうしたギリシア語においてイクスースあるいはイクトゥスと発音されることになるΙΧΘΥΣ、小文字で書くとἰχθῦςという言葉は、もともと、
古代ギリシア語において「魚」や「うお座」のことを意味する単語であったと考えられることになるのですが、
この言葉がイエス・キリストの象徴として用いられる場合には、そうした単語全体の意味よりも、単語を構成している個々のアルファベットの組み合わせがより重要な意味を持っていくことになると考えられることになります。
イエスに対しては、キリスト教の聖典にあたる新約聖書のなかでも、しばしば、「油を注がれた者」としての神聖なる王の姿のことを意味する「キリスト」、そして、「神の子」や「救い主」といった呼び名が冠せられていくことになるのですが、
こうした「イエス」「キリスト」「神の」「息子」「救い主」という五つの単語は、古代ギリシア語においては、それぞれ、
Ἰησοῦς(イエスース)、Χριστός(クリストス)、Θεοῦ(セウー)、Yἱός(フイオス)、Σωτήρ(ソーテル)という言葉として呼び表されていくことになります。
そして、
こうしたイエス・キリストの呼び名のことを意味する古代ギリシア語における五つの単語の頭文字を順番に並べていくと、
ΙΧΘΥΣ(イクスース)という前述した「魚」や「うお座」のことを意味する古代ギリシア語の単語が現れることになると考えられることになるのです。
「神の子にして救い主なるイエス・キリスト」のことを意味する宗教的な暗号としてのイクスースの意味
以上のように、
こうした古代ギリシア語においてイクスースあるいはイクトゥスと発音されることになる本来は「魚」や「うお座」のことを意味するΙΧΘΥΣという言葉は、
「神の子にして救い主なるイエス・キリスト」
といった意味を表すことになる
Ἰησοῦς Χριστός Θεοῦ Yἱός Σωτήρ
(イエスース・クリストス・セウー・フイオス・ソーテル)
というイエス・キリストの尊称にあたる呼び名を構成している五つの単語の頭文字をつなげていくことによって形づくられることになる単語として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、そういった意味では、
こうした古代ギリシア語におけるΙΧΘΥΣ(イクスース)という言葉によって指し示されることになる魚の形をしたシンボルは、
ローマ帝国からの迫害を受けていた初期のキリスト教の信徒たちの間において、彼らが信仰するキリスト教やイエス・キリストのことを象徴する一種の宗教的な暗号のようなものとして用いられていたシンボルでもあったと捉えていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:イクスースとは何か?②新約聖書の「人間をとる漁師」の記述とイエスの最初の弟子にして初代教皇となった使徒ペトロとの関係
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