ゼウスの三人の正妻たちの素性と具体的な特徴とは?ヘラとテミスとメティスというギリシア神話の三人の女神たちの性格の違い
ギリシア神話における主神ゼウスの妻としては、ゼウスと共にオリュンポス十二神のうちの一柱として位置づけられていている女神ヘラの存在が有名ですが、
こうしたギリシア神話における主神であるゼウスが女神ヘラと結ばれる前に出会い、相手との間に子供を残していくことにもなったゼウスの正妻とも呼ぶことができる女神の存在としては、そのほかにも、
知恵に優れた泉の女神であったメティスと、法を司る女神であるテミスという二人の女神たちの名が挙げられることになります。
それでは、
こうしたメティスとテミスとヘラというゼウスの正妻となった三人の女神たちは、それぞれ、ギリシア神話の物語のなかでは具体的にどのような特徴をもった女神として位置づけられていて、
こうした三人の女神たちは、具体的にどのような経緯から順番にゼウスと結ばれていくことになっていったと考えられることになるのでしょうか?
ゼウスの最初の妻となったメティスとの出会いと知恵の女神アテナの誕生
ギリシア神話の物語においては、
まだ天界の王の座にはついておらず、地上の世界をさまよい歩いていた若き日のゼウスが、はじめて恋に落ちた相手としては、
オケアノスと呼ばれる古代の海洋神の娘であったメティスという名の泉の女神が登場することになります。
そして、その後、
知恵に優れた女神でもあったメティスは、自分の夫となったゼウスのことを助けて、彼を天界の支配者の座へと導いていくことになり、やがて、メティスはゼウスとの間の子を身ごもることになるのですが、
その時、大地の女神ガイアから授けられた、メティスが生むことになっている娘の後に生まれることになっているゼウスの息子によってゼウスの天界の王の座が脅かされることになるという予言の言葉を聞いたゼウスは、
その予言が成就することを恐れて、妻であるメティスが自分の子供を生むことがないように、身ごもっていた子供ごとメティスを飲み込んでしまうことになります。
そして、結局、
ゼウスとメティスの間の生まれるはずであった息子の方はそのまま生まずじまいに終わってしまうことになるのですが、その一方で、先に生まれる予定であった娘の方は、やがて、女神アテナとして、メティスのお腹の中からではなく、ゼウスの頭の中から父親の額をかち割って生まれてくることになり、
こうしたゼウスとメティスの間に授かり、母親ではなく父親であるゼウスの頭の中から生まれることになった女神であるアテナは、
自分の本来の生みの母となるはずであった泉の女神メティスによく似て非常に賢く、学芸や工芸といった様々な技能にも秀でた知恵の女神として位置づけられていくことになっていきます。
そして、それに対して、
ゼウスに飲み込まれてしまったゼウスの最初の正妻であった女神メティスの方は、そのままゼウスの頭の中で彼と同化していってしまい、そのまま彼の頭の中でいつまでも賢明な助言を与え続けていくことによって、
ギリシア神話の主神であるゼウスを、その地位にふさわしい優れた知性をもつ全知全能の神となるように導いていくことになるのですが、それによって、二人の間の婚姻関係も終わりを迎えてしまうことになるのです。
ゼウスの二番目の妻となった法の女神テミスと二人の間に生まれた秩序と運命を司る六人の女神
そして、その次に、
こうした最初の妻であったメティスの助けを借りて天界の王の座へとのぼりつめたゼウスは、自分が統治する世界に正しい秩序をもたらし、安定した治世を営んでいくために、
オリュンポスの神々よりも先にこの世界を統治していた古代の神々であるティターンと呼ばれる巨神族の一柱でもあり、法と秩序を司る女神でもあったテミスに協力を仰ぎ、彼女を自分の正妻として迎え入れていくことになります。
そして、その後、
ゼウスとテミスの間には、
季節を司る女神にして、それぞれが、正義と秩序と平和という道徳的な秩序を司る女神としても位置づけられているディケーとエウノミアーとエイレーネーと呼ばれる三姉妹の女神たちと、
運命を司る女神として位置づけられているクロートーとラケシスとアトロポスと呼ばれる三姉妹の女神たちが生まれていくことになるのです。
ゼウスの三番目の妻となったヘラとの結婚とテミスとの別れ
しかし、その後、
移り気で好色なところがある恋多き神でもあったゼウスは、やがて、自分と同じオリュンポス十二神のうちの一柱としても位置づけられる女神にして、
のちに、パリスの審判において、美の女神であるアフロディテと、知恵の女神であるアテナと並んで、ギリシア神話の三美神の一人としても数え上げられることにもなる美しい女神であったヘラへと思いを寄せていくことになり、
ゼウスは、彼女と結ばれるために、自分の妻であったテミスに離婚を申し入れてしまうことになるのですが、
法と秩序を司る理性的な女神であったテミスは、男女の間の恋愛といったことには少し淡白なところがあることもあってか、二人の間にすでに愛がなくなってしまったのならば仕方ないと、取り立ててゼウスのことを引き止めようとすることもせず、そのまま離婚を許してしまうことになります。
そして、こうした法の女神であるテミスとの離婚の成立によって、
ギリシア神話の主神であるゼウスと、結婚と女性の守護神にしてのちに神々の女王とも称されることになる女神ヘラとの結婚が成立することになるのです。
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そして、その後、
ゼウスの三番目の妻となった女神ヘラは、二番目の妻であったテミスとは性格が大きく異なり、夫であるゼウスの浮気を決して許そうとせず、ほかの女のところにいるのを見つけると烈火のごとく怒りだすことはもちろん、
ゼウスの浮気相手となった女神や人間の女性たちのことはもちろん、ゼウスと彼女たちの間に生まれた子供たちにまでつきまとって、その命を奪ったり、人生を破滅させてしまおうと画策したりする非常に嫉妬深い情熱的な女神であったため、
その後のギリシア神話の物語においては、
ゼウスは、美しい女神や人間の女性たちに出会うと、自分の気持ちを抑えることができずに、浮気を繰り返してしまうことになるものの、だからと言って、
自分の正妻である美しいが非常に嫉妬深い女神であったヘラに対して離婚を申し込むことなどできるはずもなく、
こうしたギリシア神話の物語のなかでゼウスの三番目の妻となった女神ヘラは、そのまま、天界の支配者であるゼウスの最後の妻にして神々の女王にあたる存在として君臨し続けていくことになっていったと考えられることになるのです。
・・・
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