ドイツ語の早口言葉④ ドイツ版「東京特許許可局」と複合名詞
日本にも、「東京特許許可局、許可局長さん」
という早口言葉がありますが、
それをどこか思い起こさせるような雰囲気のある
Zungenbrecher(早口言葉)があるので、ちょっと紹介してみたいと思います。
それはこれです。
Eine Diplombibliothekarin ist Bibliothekarin mit Diplom,
eine Bibliothekarin mit Diplom ist eine Diplombibliothekarin.
ドイツ語の下に、発音・アクセントをつけると以下のようになります。
Eine Diplombibliothekarin ist
アイネ ディプロム ビブリオテカーリン / イストゥ /
Bibliothekarin mit Diplom,
ビブリオテカーリン / ミットゥ ディプロム /
eine Bibliothekarin mit Diplom ist
アイネ ビブリオテカーリン / ミットゥ ディプロム / イストゥ /
eine Diplombibliothekarin.
アイネ ディプロム ビブリオテカーリン
次に文節ごとの和訳をドイツ語の下に入れます。
Eine Diplombibliothekarin ist
1人の 資格+女性図書館員 は
Bibliothekarin mit Diplom,
女性図書館員 資格証をもった
eine Bibliothekarin mit Diplom ist
1人の 女性図書館員 資格証をもった は
eine Diplombibliothekarin.
1人の 資格+女性図書館員
そして、文全体を直訳すると、
「1人の有資格女性図書館員は、資格証をもった女性図書館員で、
資格証をもった1人の女性図書館員は、1人の有資格女性図書館員だ」
となります。
ドイツ語の複合名詞と「東京特許許可局」
この早口言葉のなかでは、
“Diplombibliothekarin”
というアルファベット20文字からなる長い単語が出てきますが、
この単語は、
“Diplom(卒業証書、学位、免許状)”+“bibliothekarin(女性図書館員、女性司書)”の複合名詞です
ドイツ語では、2つの名詞をそのまま、または、間に-s-や-es-などをはさんで
連結して、1つの名詞に合成してしまう複合動詞という用法があります。
例えば、
“Geburt(ゲブーァトゥ、誕生)”と“Tag(ターク、日)”を合成したい場合は、
間に-s-を入れて連結して、
→“Geburtstag(ゲブーァツターク、誕生日)”になる。
といった具合です。
連結して複合名詞にできる単語は、何も2単語だけには限らないので、
1度連結してつくった複合名詞の後ろに、さらに別の単語を連結していく形で、
次々に新たな単語を連結させて、ほぼ無際限に長い単語をつくっていくことができます。
例えば、先ほどの、“Geburt(誕生)”と“Tag(日)”を合成してできた単語の
“Geburtstag(誕生日)”の後ろに、
さらに、“Feier(ファイアー、記念祭)”という名詞を連結すると、
→“Geburtstagsfeier(ゲブーァツタークスファイアー、誕生日会)”
という新たな1つの単語ができ上ります。
なんだか、単語でレゴブロックやダイヤブロックのような、組み立てブロック遊びをやっているようで、少し面白いですね。
1つの名詞ブロックに、別の名詞ブロックをつなぎ合わせて、自由にどんどん新しい複合名詞の形をつくっていくことができるわけです。
そういえば、
日本語の早口言葉の「東京特許許可局」の方も、
「東京」+「特許」+「許可局」という3つの単語(または、「許可+「局」で計4つ)を組み合わせてつくった複合名詞と考えることができますね。
名詞をどんどん後ろに連結していって、自由に新しい単語をつくり上げてしまう、
そんなところにも、日本語とドイツ語のちょっとした共通点があるように思います。
司書資格証をもった女性司書資格司書
次に、この早口言葉の文法的構造を見ていきましょう。
※ただし、主格=主語という意味で、
丸カッコ()は、()内の品詞が全体として1つの形容詞句セットを形成していることを示しています。
Eine Diplombibliothekarin ist Bibliothekarin mit Diplom,
冠詞 主格 be動詞 名詞 ←(前置詞+名詞)
1人の 資格+女性図書館員 は 女性図書館員 資格証をもった
eine Bibliothekarin mit Diplom ist eine Diplombibliothekarin.
冠詞 主格 ←(前置詞+名詞)be動詞 冠詞 名詞
1人の 女性図書館員 資格証をもった は 1人の 資格+女性図書館員
となります。
最後に、このZungenbrecher(早口言葉)を少し意訳してみると、こんな感じになるでしょうか。
「司書資格証をもった女性司書資格司書は、司書資格証をもった女性司書で、
司書資格証をもった女性司書が、女性司書資格司書なのだ。」
あれ?なんだか、このまま、
日本語の早口言葉としても通用してしまいそうですね。
次回は、いかにもドイツ語らしい、
ちょっと哲学的な雰囲気さえ感じる早口言葉を紹介してみたいと思います。
・典拠
http://www.uebersetzung.at/twister/de.htm(リンク切れ)
(ドイツ語原文のZungenbrecher(早口言葉)の参照元)
・・・
このシリーズの前回記事:
「ドイツ語の早口言葉③ ドイツ語はZではじまる単語の数が多い?」
このシリーズの次回記事:
「ドイツ語の早口言葉⑤ちょっと哲学的な早口言葉、スピノザの真理論」
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