フグ毒に分類される代表的な四種類の毒素の種類とは?パリトキシンと呼ばれるテトロドトキシンをも超える猛毒の神経毒
フグ目のフグ科またはハコフグ科に属する代表的な魚類の種類としては、
トラフグ(虎河豚)やマフグ(真河豚)やクサフグ(草河豚)、
クロサバフグ(黒鯖河豚)やシロサバフグ(白鯖河豚)、さらには、
カワフグ(皮河豚)、ミズフグ(水河豚)、チョウチンフグ(提灯河豚)、ケショウフグ(化粧河豚)、ミドリフグ(緑河豚)、メフグ(目河豚)、
ハコフグ(箱河豚)やツノハコフグ(角箱河豚)、コンゴウフグ(金剛河豚)、ウミスズメ(海雀)、シマウミスズメ(縞海雀)、クロハコフグ(黒箱河豚)、テングハコフグ(天狗箱河豚)、ミナミハコフグ(南箱河豚)
といった数多くの魚の種類があげられることになるのですが、
こうしたフグ科やハコフグ科に属するそれぞれの魚の種類の違いなどに応じて、それぞれの魚に含まれる毒素の種類にも違いが見られることになると考えられることになります。
フグ科の魚の体内に蓄積されているテトロドトキシンとサキシトキシンと呼ばれる二種類の毒素
まず、
トラフグ(虎河豚)やマフグ(真河豚)やクサフグ(草河豚)などに代表されるようなフグ科に属する魚が自らの体内に蓄積している最も代表的な毒素の種類としては、テトロドトキシンと呼ばれる毒素の種類が挙げられることになりますが、
こうしたテトロドトキシン(Tetrodotoxin)と呼ばれる毒素は、経口摂取においては、毒物の代名詞的存在として有名な毒素の種類である青酸カリの850倍程度の毒性を持つ神経毒であると考えられていて、
こうしたフグの体内に蓄積されていたテトロドトキシンを原因とする食中毒を発症すると、
中枢神経を中心とする全身における神経伝達が遮断されることによって、摂食後から数十分から数時間で唇や舌先、あるいは、手足のしびれといった症状が現れることになり、
その後、意識は比較的明瞭なまま、全身の骨格筋の麻痺や、呼吸器系の麻痺が進行していくことによって、通常の場合は、24時間以内に呼吸停止から心停止へと至ってしまうことになると考えられることになります。
そして、その一方で、
こうしたフグ科に属する魚類の多くは、こうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素のほかに、貝毒の一種として分類されることが多いサキシトキシンと呼ばれる毒素も同時に体内に蓄積している場合が多く、
こうしたサキシトキシン(Saxitoxin)と呼ばれる毒素の場合にも、前述したテトロドトキシンの場合と同様に、人体における神経伝達の遮断が引き起こされることによって、麻痺や呼吸困難といった神経性の中毒症状が引き起こされることになると考えられることになるのです。
ハコフグ科の魚がもつパリトキシンと呼ばれるテトロドトキシンをも超える猛毒の神経毒
また、その一方で、
ハコフグ(箱河豚)やコンゴウフグ(金剛河豚)やシマウミスズメ(縞海雀)などに代表されるようなハコフグ科に属する魚は、主に、テトロドトキシンではなく、パリトキシン様毒と呼ばれる毒素を体内に蓄積していて、
こうしたパリトキシン(Palytoxin)と呼ばれる毒素は、前述した一般的なフグ毒として有名なテトロドトキシンよりも50倍くらい毒性が強い猛毒の神経毒の種類として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、
こうしたパリトキシンを原因とする食中毒においては、麻痺やけいれん、呼吸困難や不整脈といった神経性の中毒症状が引き起こされることになるほか、
この毒素が持つ強力な毒性によって体内の筋肉を構成している細胞が溶かされていく横紋筋融解症による激しい筋肉痛や腎障害といった症状なども引き起こされてしまう場合があると考えられることになります。
また、
こうしたハコフグ科に属する魚類の多くは、こうしたパリトキシン様毒と呼ばれる毒素のほかに、パフトキシンと呼ばれる特に魚類に対して溶血作用をもつ毒素も同時に体内に蓄積している場合が多く、
ハコフグは、外敵から襲われた際に、こうしたパフトキシン(Pahutoxin)と呼ばれる毒素を皮膚から粘液とともに体外へと放出することによって、捕食者から自らの身を守っていると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうしたフグ科やハコフグ科に属する魚の体内に蓄積されている代表的な毒素の種類、すなわち、フグ毒の代表的な種類としては、
テトロドトキシン、サキシトキシン、そして、パリトキシン、パフトキシンといった全部で四種類の毒素の種類が挙げられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:毒キノコに含まれる自然毒の代表的な種類とは?①比較的毒性の高い毒キノコに含まれる主要な毒成分の種類
前回記事:フグの漢字表記「河豚」や異名「てっぽう」の語源と古代ギリシア語に基づく学名の由来とは?「四本の大きな歯を持つ魚」
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