フェルミのパラドックスにおける矛盾を解消する三通りの解釈とは?
前回の記事で書いたように、フェルミ推定と呼ばれる統計学的な推論のあり方が、地球外知的生命体の存在可能性といった宇宙論的な問いへと適用された一連の議論からは、
そうした科学的な推論においては古い歴史を持つ広大な銀河系の内部には人類の文明に先行する数多くの地球外先進文明が存在し、その一部はすでに地球に到達しているはずなのにもかかわらず、
実際には地球上においてそうした地球外先進文明との接触の痕跡は発見することができないという根本的な矛盾が生じてしまうことになるというフェルミのパラドックスと呼ばれる問題が提示されていくことになります。
そして、こうしたフェルミのパラドックスにおいて生じている矛盾からは、そうした矛盾を解消するための妥当な解釈として、以下で述べるような大きく分けて三通りの帰結が生じていくことになると考えられることになります。
地球外知的生命体の存在自体を否定する第一の解釈
まず、こうしたフェルミのパラドックスにおいて生じる矛盾を解消するためのもっとも明解で直接的な第一の解釈としては、
そもそもこの宇宙には人類以外の知的生命体はどこにも存在しないと考える解釈が挙げられることになると考えられることになります。
フェルミの推定などの統計学的な推論においては、その推論の前提となっている「銀河系内の恒星の総数」やそうした恒星系のそれぞれが「惑星を持つ確率」といった一部の基礎的なデータを除くと、
その推論の過程おいて用いられている確率計算のほとんどは、具体的な実験データなどによって裏付けられることのないある種の直感的な推論によって行われていくことになるので、
そうした物理学的な思考に基づくある種の直感的な推論の結果に反して、宇宙全体において人類のような知的生命体の存在は極めて稀であり、
現実においては、人類はそうした広大な宇宙の中で唯一無二の存在として孤立していると解釈することも十分に可能であると考えられることになるのです。
地球外文明の人類との接触可能性を否定する第二の解釈
それに対して、もう一つの第二の解釈としては、
フェルミ推定に基づく科学的な推論は正しく、広大な銀河系の内部には実際に一定数の地球外文明が存在しているものの、
そうした地球外文明の担い手である地球外生命体は、何らかの理由によって太陽系を訪れることが妨げられていているという解釈が考えられることになります。
こうした解釈に基づく場合、地球外生命体すなわち宇宙人は、実際に存在してはいるものの、
恒星間旅行や遠隔通信を可能とするような科学技術の発達の制約、あるいは、自分たち以外の恒星系に存在する知的生命体と接触することに対するある種の社会的制約や倫理的制約などが存在することによって、
互いに接触することはできないままでいると考えられることになるのです。
地球外生命体の来訪の事実が一般の人々に秘密にされているとする第三の解釈
そして、最後に挙げる第三の解釈としては、
この宇宙には実際に一定数の地球外文明が存在し、さらに、そうした地球外文明の一部は実際に太陽系まで到達して地球にまで訪れているものの、そうした地球外知的生命体の存在と地球への来訪という事実は現在の人類あるいは一般の人々には隠されているとする解釈が考えられることになります。
こうした考え方に基づく場合、少し陰謀論的な意味合いにはなりますが、かつてあるいは現在においてもそうした地球外知的生命体は地球へと実際に来訪してはいるものの、
地球外知的生命体の側の都合によって現在の人類に対してはそうした来訪の事実が直接知られないように覆い隠されているか、
または、そうした地球外知的生命体の来訪の事実は、世界の主導的な立場にある国家の中枢にいる人々や、一部の特権階級に属する人々には知らされているものの、
社会的な混乱を防ぐためといった理由などから、一般の人々には秘密にされているとするような解釈が成り立つことになると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
こうしたフェルミのパラドックスと呼ばれる地球外生命体の存在と人類との接触の可能性についての科学的な推論によって生じる矛盾を解消するために必要な論理的な妥当性を持った解釈のあり方は、
①そもそもこの宇宙には人類以外の知的生命体はどこにも存在しない
②宇宙には一定数の地球外文明が存在しているものの彼らは何らかの理由によって太陽系や地球を訪れることを妨げられていている
③宇宙には一定数の地球外文明が存在していて、彼らは実際にこの地球を訪れてもいるが、そうした地球外知的生命体の存在と来訪の事実がこの星の一般の人々には秘密にされている
という大きく分けて三つの解釈へと分類していくことができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:フェルミのパラドックスとインテリジェントデザイン説の関係とは?レアアース仮説の宇宙論的議論から生命論的議論への展開
前回記事:フェルミ推定とドレイクの方程式の関係とは?論理展開の構造の共通点と統計学的な推論の宇宙論的な問題への適用
「宇宙論」のカテゴリーへ