ユングの心理学と超心理学の関係とは?シンクロニシティとテレパシーとの関連性と深層心理学の学問探究のあり方との共通点
前回の記事で書いたように、認知心理学や臨床心理学といった一般的な意味における心理学と、テレパシーや念力、予知や透視といった人間の精神における超常的な能力をその学問的な探究の対象とする超心理学との間には、
その探究の対象の選ばれ方や、実証的で科学的な条件を満たす探究の方法といった点において、大きな違いがあると考えられることになるのですが、
こうした超心理学と呼ばれる学問的探究の分野についても、そこに「心理学」という名が付されている以上、
そこには、通常の意味における心理学と超心理学の境界領域にあたるような一定の領域の存在や、両者の間における一定の関連性を見いだすことができると考えられることになります。
深層心理学と超心理学における学問探究のあり方の共通点
一般的な意味における心理学のうちに含まれることになる学問分野のなかで、冒頭で述べたような超心理学と呼ばれる学問探究のあり方に比較的近い研究のあり方が含まれる学問分野の種類としては、まず第一に、
フロイトやユングに代表されるような人間の心の奥底に存在する潜在意識の領域の存在を解き明かそうとする深層心理学と呼ばれる心理学の分野の名を挙げることができると考えられることになります。
超心理学においては、通常の場合、その探究の対象となるテレパシーや予知といった人間の精神において発現する超常的な能力は、特定の選ばれた人間のみに備わっている特殊な能力として捉えられているわけではなく、
それは、むしろ、すべての人間の心の奥底に存在する共通の潜在的な能力であり、程度の差こそあれ、誰でも適切な条件下において、適切な訓練などを積み重ねていくことによって、そうした自らの心の奥底に眠る潜在的な能力を開花させていくことができると考えられていくことになるのですが、
こうした超心理学におけるテレパシーや予知といった超常的な潜在能力が眠っていると考えられる潜在意識や無意識といった人間の心の深層の領域について探究を進めていく心理学の分野が深層心理学と呼ばれる学問分野であるという点において、
超心理学と深層心理学における学問探求のあり方の間には一定の共通部分と関連性を見いだすことができると考えられることになるのです。
ユングの心理学におけるシンクロニシティとテレパシーとの関連性
そして、
こうした深層心理学と呼ばれる学問分野のなかでも、特に、超心理学における学問探究のあり方と関連性の高い心理学の分野としては、
哲学や神話、文学や芸術さらには東洋思想といった多彩な学問分野における知見や思想を幅広く取り入れていく形で心理学理論が構築されている分析心理学と呼ばれるユングの心理学における学問探求のあり方をその代表例として挙げることができると考えられることになります。
ユングの心理学においては、人間の心の深層の領域である無意識の領域には、一人一人の人間の個人的無意識よりもさらに深い階層において、人類全体に共通する普遍的な無意識の層である集合的無意識と呼ばれる心の領域が存在すると考えられていて、
一人一人の人間の心は、そうした集合的無意識と呼ばれる人間の心における最も深い階層を通じてすべての人々の心が一つにつながっていると捉えられていくことになります。
そして、
こうした集合的無意識と呼ばれるユングの心理学における概念からは、そのほかにも、シンクロニシティ(synchronicity、共時性)と呼ばれる概念なども導き出されていくことになり、
それは一言いうと、物理的な空間を介した因果関係を超えて働く複数の出来事の意味のある偶然の一致といった複数の出来事や複数の人間の心同士において成立する非因果的連関のあり方のことを意味する心理学的な概念であると考えられることになるのですが、
ユングの心理学において、こうしたシンクロニシティや共時性と呼ばれる現象は、究極的には、人間の心の奥底に存在する集合的無意識と呼ばれる心の領域を通じてすべての人間の心や出来事が一つにつながっていることによって生じる現象として説明されていくことになります。
そして、その一方で、
超心理学においては、物理的に離れた場所に位置する二人の人間の心同士が互いにつながり合うことによって、相手の心の内容が自分自身の心の内にイメージとして流れ込んでくる現象のことを指して、テレパシーや精神感応といった概念が用いられることになりますが、
そういった意味では、
こうしたユングの心理学におけるシンクロニシティや共時性と呼ばれる心理学的概は、テレパシーや予知といった超心理学が扱う人間の心に潜在する超常的な能力のあり方とも非常に近い特徴を持つ概念として捉えることもできると考えられることになるのです。
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以上のように、
一般的な意味における心理学のなかでも、人間の心の奥底に存在する潜在意識や無意識といった心の領域についての探究を行う深層心理学と呼ばれる学問分野は、それが直接的な探究の対象とする分野の性質上、
人間の心の奥底に眠っているとされるテレパシーや予知、透視や念力といった潜在的な能力の存在を解き明かそうとする超心理学ともある程度近い関係にある学問分野としても位置づけることができると考えられることになります。
そして、
シンクロニシティや共時性と呼ばれる心理学的概念と、超心理学におけるテレパシーといった概念との間に一定の共通点の存在を見いだすことができることからも分かるように、
こうした深層心理学と呼ばれる学問分野のなかでも、特に、そうした心理学の分野を代表する心理学者の一人であるユングの心理学と超心理学の間には、比較的強い関連性を見いだすことができると考えられることになるのです。
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